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人生とテニスに役立つ本

NVC (Nonviolent Communication) を身につけて、自分と他人を大切にできるようになる

自分と、自分の大切な人とのコミュニケーションをよりよくするためのスキルとして、非常に有効だと思う。ガンジーの提唱した原則が「非暴力」だけでなく「不服従」とセットであったように、Nonviolent Comumunicationの原則も、言葉の非暴力を謳うだけでなく、自分の怒りをどのように扱うことが双方にとって有意義になるかもしっかりと教えてくれる。非常に素晴らしい本でありスキルなので、備忘録としてハイライトした箇所をまとめておく。

Nonviolent Communicationとは

具体的には、自分を表現し、他人の言葉に耳を傾ける方法を組み立て直す。型通りに反射的に反応するのではなく、自分がいま何を観察しているのか、どう感じているのか、何を必要としているのかを把握したうえで、意識的な反応として言葉を発するようにする。人に対する尊敬と共感を保ちながら、自分自身を素直に明快に表現する。どんなやり取りにおいても、自分が、そして人が必要としていることに耳を傾ける。

人から一方的に決めつけられ批判されるような局面では、どうしても自分を擁護したり、身を引こうとしたり、反撃したりしがちだ。しかし、NVCに切り替えることで、自分と相手について、自分の意図したことについて、相手との関係について新しい視点からの理解が可能になる。

NVCの4つの要素

  1. 自分の人生の質を左右する具体的な行動の「観察」
  2. 観察したことについて抱いている「感情」
  3. そうした感情を生み出している、価値、願望、「必要としていること」
  4. 人生を豊かにするための具体的な行動の「要求」

一例をあげよう。例えば母親がティーンネイジャーの息子に対し、3つの要素を次のようなことばで表現する。「フェリックス、丸めた靴下がコーヒーテーブルの下に2つ、テレビの脇に3つもあると、お母さんはイライラしてしまうの。みんなで使う部屋はもっと片付いた状態にしておきたいわ」

そして、すかさず4つ目の要素を加えるーー非常に具体的な要求を。「脱いだ靴下は、あなたの部屋か洗濯機に入れておいてくれないかしら?」。

わたしが観察し、抱いている感情に気づき、何を必要としているのかを明確にし、人生を豊かにするための要求をする。

思いやる気持ちを妨げるコミュニケーション

  • 道徳を持ち出す。こういう形で自分が必要としていることや価値観を訴えると、ただでさえ相手の行動に引っかかりを感じているのに、より一層防御的になり、抵抗感を強めてしまう。
  • 比較をする。自分の人生を惨めなものにしたいと心底願うのであれば、是非とも他人と自分を比べればいい。
  • 責任を回避する。あたかも選択肢がないかのような言い方をするのはやめて、選択肢があることを認める言葉遣いをする。

評価を交えずに観察する

NVCでは、自分がどのような状態にあるかを明確に率直に人に伝えることが大切であり、観察は重要な要素だ。しかし、評価と観察を一緒にしてしまうと、こちらが伝えたいメッセージを相手が聞き取ってくれる可能性が減ってしまう。相手はむしろ批判として受け取り、反発する可能性が高い。

NVCはプロセスランゲージ(過程を大切にする言葉づかい)であり、物事を限定的に捉えたり、一般化して捉えたりすることを避ける。その代わりに、「ある特定の時間と状況」での観察に基づいて評価を行うようにする。例えば、「スミスは20試合に出場してゴールを一度も決めていない」と表現するが、「スミスはヘボなサッカー選手だ」という言い方はしない。

感情を見極め、表現する

自分の感情を表現する語彙力の向上に努めれば、親密な人間関係はもちろん、職業を通じた人間関係にもプラスの効果がある。自分の弱さを打ち明けることで、対立を解決できる可能性がある。

「〜と感じる」という表現は、実際には感情を表現していない。「私にはギター奏者の才能がないと感じる」。これはギター奏者としての自分の能力を評価する言い方。実際の感情は「ギター奏者としての自分にがっかりだ」。

自分の感情に責任をもつ

人の言動は、自分の感情を「刺激」することはあっても「原因」になることはない。NVCの実践はその自覚を強める。人の言動をどう受け止めるのかを「選択」した結果や、その時必要としていることや期待していることが感情を引き起こすと捉えるからだ。

相手が「みたいに自己中心的な人間は初めてだ」と言ったとする。人から否定的なメッセージが送られてきたら、4通りの受け止め方がある。

  1. 自分自身を責める:「気配りが足りなかった」
  2. 相手を責める:「あなたにはそんなことを言う権利はない。私はいつも、あなたが何を必要としているのかを考えている。本当に自己中心的なのはあなたの方だ」
  3. 自分の感情と、自分が必要としていることを感じ取る:「私ほど自己中心的な人間はいないというあなたの言葉を聞くと、あなたの好みを尊重するためにしている努力を少しでも認めてもらいたいので傷つきます」
  4. 相手の感情と、相手が必要としていることを感じ取る:「あなたは、自分の好みにもっと配慮するよう求めていたから傷ついたのですか」

相手の悪いところをあげつらうのではなく、自分が必要としていることが何であるかを話すようになれば、全員の望みが叶えられる方法が見つかる可能性はぐんと高まる。

感情の奴隷ではなく、感情から解放された自由へ

第一段階:感情面での奴隷状態。自分は人の感情に責任があると考える。

第二段階:反抗期。人の感情に責任を負うのはごめんだと考える。

第三段階:感情面の解放。自分の考えと行動に責任を負う。

感情面の解放では、相手の必要としていることを満たすことにも同じくらい関心があるのだと相手に伝わるようなやり方で、自分が必要としていることを明確に述べることが大切である。

人生を豊かにするための要求

肯定的な行動を促す言葉を使うのに加え、曖昧で抽象的でどうにも取れるような言い方を避けて、相手が具体的に行動を起こせる言い方で要求する方がいい。

曖昧で抽象的な言葉を使うとき、人は不条理な目論見を隠している。もしくは、人に対して何を望んでいるのかを自覚できていない。

共感を持って受け取る

NVCは次の二つの部分からなる。

  1. 率直に表現する
  2. 共感を持って受け止める

共感とは、心を空にして全身で聞くことである。

アドバイスや励ましを提供する前に、相手がそれを求めているかどうかを確認する。

知的な理解は、共感を阻む。

例えどんな発言であっても相手の言葉を聞き、彼らが

  1. 観察していること、
  2. 感じていること、
  3. 必要としていること、
  4. 要求していること、を聞き取る。

相手のメッセージを受け止めていれば、それを言い換えて相手に返すことで、相手も自分が受け止められたことがわかる。性格に伝わっていないと分かれば、話しては間違いを正す機会に恵まれる。

情報を得るために問いかけをするとき、まずは、こちらの感情と必要としていることを相手に伝える。

どの時点で相手の言葉をこちらの言葉に置き換えればいいのか、絶対に失敗しないルールはない。しかし、相手が強い感情とともに言葉をぶつけてくる場合、自分なりの言葉に置き換えて返すことは役に立つだろう。

相手の発言を自分の言葉に置き換えて返す際、とても重要なのは声の調子だ。ほんのかすかにでも批判や皮肉がこもっていれば、相手は敏感に感じ取る。さらに、相手の心の中で起きていることをさもわかったような調子で述べることも、否定的な影響を及ぼす。それよりも相手の感情と必要としていることに意識的に耳を傾けていれば、こういう理解で正しいのだろうかと確認しているということがーー主張ではないということがーー声の調子できちんと伝わる。

威嚇するような発言の裏には、自分が必要としていることを満たしてくれと強く望んでいる人がただいるだけである。

言い換えによる確認作業は時間を無駄にするどころか、時間を倹約することにつながる場合が多いのだ。労使交渉について調査した結果、老師双方が、相手の言ったことにすぐ反応するより、まずは相手の発言を正確に繰り返した場合のほうが、問題解決にかかる時間は半分で済むとわかった。

共感を持続させる

相手を救うための解決方法や申し出に注意を向ける前に、まずは相手に十分に気持ちを表現してもらう。相手が要求していることを察して迅速に動くと、相手の感情と必要としていることに純粋に関心を払っているということがかえって伝わりにくい。

共感を継続することによって、話し手がより深く自分の内面を探る機会を与える。

話し手が十分な共感を受け取ったと判断できるのは、

  1. 緊張がほぐれた、あるいは、
  2. 言葉の流れがやんだときだ。

つらくて共感できないとき

共感するためには、わたしたち自身が共感を得ている必要がある。身構えたり共感できないと感じたりしたとき、わたしたちは①いったんストップし、深呼吸し、自分自身に共感を与える、②非暴力的に悲鳴をあげる、③いったん休息をとる、などの必要がある。

共感の力

共感は、「私たちの世界を新しい方法で捉え直し、先に進む」ことを可能にしてくれる。腹を立てている人間には、面と向かって「でも」をぶつけるのではなく、共感する。相手の感情と、必要としていることに耳を傾けると、その人物は怪物には見えなくなる。自分に身近な者たち共感的になることは難しいかもしれないが。

停滞した会話を共感で蘇らせる

停滞した会話をいつどのようにして中断し、生き生きとしたものによみがえらせるのか?自分が聞きたいと思うよりも一言を多く相手の話を聞いてしまった時点で、会話を中断することを進める。

仮におばが、20年前に幼子2人と共に夫にされた件を未だに持ち出しているとしたら、次のような言葉でそれにストップをかけることができるだろう。「まあ。そのことで今でも傷ついていて、と大事に扱って欲しかったと望んでいるようね」。多くの場合、人は自分が共感を求めていることに気づいていない。不当な目にあった経験や辛い目にあった話を繰り返すよりも、いまだに感じている感情と必要としていることを表現した方が共感を得られやすいということに気づいていない。

聞き手が退屈していれば、話し手も退屈している。話し手は、聞いているふりをされるよりも、中断してもらうことを望む。

重要なのは、その時相手の内部で本当に起きていること、つまり、その人が今その瞬間に体験している感情と必要としていることと、ともにいるという能力なのである。

怒りをじゅうぶんに表現する

ここで説明するプロセスは、怒りを無視したり、押し込んだり、飲み込んだりすることを奨励しない。それよりも、怒りの核心を心の底からじゅうぶんに表現するように勧める。

人の言動は、私たちの感情を刺激することはあっても、感情の原因とはならない。人が取った行動が理由となって怒ることは、決してないのだ。人のどんな振る舞いが刺激になっているのかを特定するだけでなく、刺激と原因をはっきり区別することが重要である。

相手の罪悪感を煽ってこちらの意のままにしようとする戦術を成功させるには、刺激と理由を混同させてしまえばいい。すでに述べたように、「あなたの成績が悪いと、ママとパパは悲しい」という表現は、自分の行動が両親の苦痛の原因となるのだと子供が信じるように誘導する。

怒りをじゅうぶんに表現するプロセスの第一のステップは、人の言動が自分の感情の原因には絶対にならないということを理解することである。

たとえば、彼女が約束に遅れて到着したとする。彼女は自分を大切に思っていると確認したかったなら、傷ついた気分になるかもしれない。時間を有意義に使いたいと考えていたなら、苛立ちを感じるだろう。また、30分間ひとりで静かに過ごしたいと思っていたなら、彼女の遅刻がありがたく感じられるだろう。このように、私たちの感情は、他人の言動ではなく、自分が必要としていることが理由となって生じている。

怒りを目覚まし時計として利用する。それには練習も必要だろう。何度も繰り返し、「彼らが……したから私は怒っている」の代わりに、「わたしは……を必要としているから怒っている」と意識的に言い換えることで慣れていくのだ。

自分が何を必要としているかに気づくと、怒りは、人生を豊かにするための気持ちに置き換わる。自分が苦痛を感じるのは人のせいだ、だから彼らは罰を受けるに値する、という信念が暴力を生み出す。

NVCによる紛争解決のステップ

  1. 自分が何を必要としているのかを述べる。
  2. 相手が何を必要としているのかをさぐる。彼らがどのように表現していたとしても、その奥に隠れている真のニーズを理解する。相手の言葉が欲求ではなく意見や評価、分析であれば、そうと認識した上で、本当は何を必要としているのかを模索する。
  3. 相手のニーズを正確に認識しているかどうかを双方が確かめ、認識していないとわかれば、相手の言葉の奥にあるニーズをさらに模索する。
  4. お互いが必要としていることを正確に聞き取るために要する、じゅうぶんな共感を寄せる。
  5. 紛争の当事者が今この状況でどんなニーズを満たしたいのかが明らかになったところで、解決するための手段を、行動を促す肯定的な言葉で提案する。

相手に非があると案に示唆する言葉を避けながら、終始、お互いに最大限の注意を払って相手の話に耳を傾ける。

非公式な調停を成功させるには、お互いに自分自身と相手のニーズを意識していると確認することが重要だ。でなければ、欠乏感からくる思いにとらわれてしまい、自分のニーズを満たすことだけを重視してしまいがちだ。それに善悪の考えが加わると、人は誰でもたちまち好戦的に、そして共謀になり、簡単な解決策すら見えなくなる。もはや、紛争は解決できないものと思えてしまうだろう。

力を防御的に使う

防御的な力の行使の背景にあるのは、守ることであり、罰を与える、避難する、責めることではない。

罰としての力の行使は、肉体的なものだけとは限らない。例えば、非難という形で相手の人格を貶める。子供が言うことを聞かない時、「悪い」「わがまま」「未熟」とレッテルを貼ったりする親もいる。好きなものを取り上げるのも懲罰的な力の行使の一つだ。例えば、子供のお小遣いを減らす、車の運転を制限するなど。子供の面倒を見るのをやめる、相手に敬意を払わないといったかたちの懲罰は、相手にとって何よりも強力な脅威となる。

私たちが懲罰を恐れる時には、自分の価値観ではなく、行動の結果に意識を集中している。懲罰への恐れは、自尊心と善意を減少させる。

懲罰の限界を明らかにするふたつの問いかけ

懲罰を利用して人々の振る舞いを変えようとしても、望む成果が得られる可能性は低い。それがよくわかる、2つの問いかけをご紹介しよう。第一の問いかけは、「今やっていること以外に、自分はこの人物に何をして欲しいと望んでいるのか」。この問いかけだけであれば、懲罰は効果があるように感じられるだろう。懲罰で脅したり実際に懲罰を与えたりすれば、相手の振る舞いにかなり影響を与えられ海mるかもしれない。そこで第二の問いかけだ。これで懲罰は効きそうにないことが明らかになる。「この人物に私の望み通りの行動をしてもらう時には、どのような理由でそうしてもらいたいのか」

NVCは、自立性と他者とのつながりを基盤にしてモラルを高めることを促す。

内的な葛藤を解決する

うつ状態は「認知的に選択肢が阻まれた状態」がもたらす。

自分の感情と、必要としていることに耳を傾け、共感することができれば、自分をうつ状態から解放することができる。

何がいけなかったのか、ではなく、自分は何をしたいのかに集中する。自分の感情と、必要としていることに耳を傾けることで、ストレスを鎮める。

心の中のネガティブのメッセージを感情とニーズに置き換えることで、NVCは自分自身との内なるコミュニケーションを深める。自分の感情と自分が何を必要としているのかを見極め、それに共感することで、うつ状態から抜け出せる。