花も実もある楽しい読書

人生とテニスに役立つ本

『これも修行のうち』と人生の悩みを受け流せるようになる方法

 毎日が、今より少し楽しく、心軽く、快適にすごせたらいいな。そう思いつつも心を煩わせている毎日を、「まあ、これも修行のうち」と気楽に受け流せるようになれたら、どんなにラクになるでしょう。そうなるための方法を「実践!」していこうというのが、この本のテーマ。日頃の悩みを増やさないポイントは「ムダな反応をしない」こと。「一切の悩みは、心の〝反応〟が作り出している。だからムダに反応しなければ、多くの悩みを解消できる」というのが本書の基本メッセージ。そのように著者の草薙龍瞬さんは語ります。

何が起きても「方法はある(なんとかできる)」、そう考えられる(発想できる)ようになること。それを最初の目標にすえましょう。ここで「発想する」とは〝他の余計な思いが湧くことなく、その考え方が最初から自然に湧いてくること〟をいいます。宗教が「信じる」ことを大事にするなら、この本で紹介する「合理的なブッダの考え方」においては「発想する」(自然にそう考えられる)ことを大事にします。最初の発想(思いつき)が、考え方を決めます。考え方が人生を作ります。となると、最初に何を思いつくか、は決定的に大事になります。そこで、発想を変える練習をするのです。それが、「方法はある(なんとかできる)」という言葉を繰り返すこと。つらくなったら「方法はある」。不安や迷いを感じたときも「方法はある」と、自分に言い聞かせるのです。 ひとは不本意な出来事に直面したとき、「やっぱりダメか」とか、「しょせん自分なんて」と、ネガティブに発想しがちです。その発想に従って動くと、必ず苦い思いを味わいます。そこで「最初の発想を切り替える練習」を始めるのです。その方法は、意外とシンプルで「使う言葉を変えればいい」のです。というのも、思考は言葉で作られるからです。つい否定的な思いが出てきたら、「方法はある」と繰り返してください。つらくなったら「方法はある」。憤慨したときも「方法はある」。不安や迷いを感じたときも「方法はある」。

 そのようにまずは言葉で繰り返すこと。そうして徐々に「考え方」を作りかえていくのだと言います。

 そのようなオープンな出発点に立ったら、今度は人生の「目的」、行き先をすえることで、人生に「見通し」をつけて、人生をラクにしよう、と進めます。人それぞれに自分の人生のゴールはあるでしょうが、仏教がお勧めする「外れのない方向性」が、次の3つ。

  1. クリーンな心を保つ。怒り・妄想・過剰な欲求やうぬぼれ等、不快な(なんだか気持ち悪いと感じる)精神状態を、早めにリセット(解消)して、心をすっきりとクリーンな状態に保つこと。
  2. 正しい「心の使い方」を知る。不幸・マイナスを作り出さず、「この状況・課題・相手には、どう向きあえばいいのか(どうアタマを使えばいいのか)」を、的確に考えられるよう、「心の使い方」を知っておくこと。
  3. 自分に「納得」できる。今日一日、選んだ職業、付き合っている恋人・伴侶、今の暮らし、過去の出来事、やがてたどり着く未来の自分、これらを「これでよし」と思える(肯定できる)心をもつこと。

 このような境地はそれ自体が「人生究極のゴール」といえるぐらい価値があるでしょう。

 本書で紹介される修行は、意識を向ける先(対象)を、感覚・感情・思考・意欲のいずれかに〝切り替える〟ことで、不快な反応をリセット(解消)するという方法です。たとえば、ストレスという、不快な〝感情〟で反応している状態を、カラダの〝感覚〟に意識を向けかえることで、リセットしてしまうというものです。

イライラ(感情)したときは、運動したり食べたりと、体の感覚を使うことで気分をスッキリさせますね。あれは〝意識〟を〝感情〟から〝感覚〟に切り替えることで、感情をリセットしているのです。先ほど紹介した「シャワー禅(シャワーを浴びながら水流、水滴を触覚や聴覚で感じ取る)」は、まさに「意識を感覚に向ける」練習です。意識を感覚に向けることで、イライラ(感情)やモヤモヤ(思考)をリセットする方法だったのです。ブッダの教えが、究極のメンタルヘルスであり、心のトレーニングになるというのは、こうした「心の使い方」を明快に教えてくれるからです。」

「心の使い方」がわかると、日頃のいろいろな悩みに応用が効きます。たとえば、次のような状況なら、こんな考え方をしてみます。 

  • 最近、ストレスが溜まっている 〈考え方〉これは不快な〝感情〟が続いている状態だ。とすれば意識を〝感覚〟に向けかえて、感情をリセットしよう。食べようか、音楽を聴こうか、週末に旅に出ようか。
  • アタマがモヤモヤする。考えがまとまらない 〈考え方〉これはムダな〝思考〟が溜まった状態だ。となると、意識の先を〝感覚〟に切り替えて、思考を解消しよう。ひと休みして、散歩にでも出るか。
  • 近ごろ元気が出ない。ヤル気が湧かない 〈考え方〉これは〝意欲〟が減退している状態だから、喜びの〝感情〟を上げるようにしよう。好きなことをやれという合図だな。 

こうした発想ができるようになると、「心が(特定の反応に)引っかかる」ことが少なくなります。たとえば、車ならギアを入れ替えることで、滑らかに走り続けようとしますね。心も同じように、感覚・感情・思考・意欲をうまく使いながら、不快を溜め込まないようにするのです。

 感覚にいつも鋭敏であることで心を健康にする【感覚のプチ修行】、感情に押されることなく後押ししてもらう【感情のプチ修行】、人生を正しく方向づける【考え方のプチ修行】、そして、疲れ知らずのメンタルを育む【意欲のプチ修行】。計50のいつでもどこでも出来るプチ修行の中から気に入ったものをみつけて、元気な心を鍛えていきましょう。

これも修行のうち。 実践!あらゆる悩みに「反応しない」生活

これも修行のうち。 実践!あらゆる悩みに「反応しない」生活

  • 作者:草薙龍瞬
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/04/14
  • メディア: 単行本