36. きみの友だち 重松清 中学生も大人も楽しい小説

  素敵な作品の多い重松清さんの小説の中でも、私と中学生の長女が特に好きな一冊です。正確に言うと、それぞれが買ってしまったので家に二冊ありますが。短編が連なってゆるやかな長編をかたちづくる、短編連作という形式がとられています。

わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる ― 。

足の不自由な恵美ちゃん病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない…。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作小説。

 学校生活。「みんな」と一緒であること。思春期の多くの子達にとって、いや大人になってからもそうかもしれませんが、みんなと一緒であることをすごく重視して気疲れしたり、そうでない子をいじめたり、一緒じゃないからとはじかれてしまって辛い思いをしたり。いじわるにあって傷つき、やさしさに触れて気づき、少しずつ変わったり、成長していく。いろんな個性のある登場人物の、経験や気持ちが、どこか一部で自分や娘と重なるところがあって、胸がしめつけられたり、温かい気持ちになったりします。 

 友だちとの関係のあり方は人それぞれ、千差万別だと思います。でも誰にとっても、友だち、友だちとのふれあい、過ごした思い出は宝ものですよね。

 文庫版のためのあとがきで重松さんが語っていますが、連載が終盤に差しかかった時にめぐりあった体験を踏まえて、最初に用意していた最終章の筋立てをやめて、「ある種のグランドフィナーレ的な閉じ方」に変えたそうです。重松さんが、『きみの友だち』は個人的にとても大切な存在になった作品であるといい、書き手が覚悟をもって選び取った場面や言葉で閉じられることは、お話しにとって何より幸せなことであるというエンディングは、それはそれは素敵なでした。是非、多くの大人と、若い人たちに、読んでほしいと思います。

きみの友だち (新潮文庫)

きみの友だち (新潮文庫)

 

 

35. テレンス・コンラン流 インテリアの基本 心地よい家を作る要素

   副題にある通り、「シンプルで美しい暮らしのための3つのエッセンス」を、素晴らしい写真集のような豊富な事例で紹介してくれます。

「無駄なく」 Plain  ありのままの素材、すっきりとしたフォルム、魅力を高めるどころか不鮮明にしてしまうような、過度な装飾が一切ないという特徴を表しています。

「シンプル 」Simple  使い勝手がよく、自然な喜びを感じさせる、という2つの特徴を表します。自然な喜びとは、休日や休暇に出かけたときに感じる喜びで、たとえば窓から降り注ぐ太陽の光、足で踏んだときのカーペットの感触、または安らぎや静けさの中などにも見出せるものです。

「実用的 」Useful  真の意味で「機能的である」ことです。それは機能過多で使いづらい電子機器や電化製品のことではなく、たとえばちょうどよい高さの椅子や、身体を最適に支えてくれるベッドなどを表します。

  テレンス・コンラン卿はインテリアデザイナー等として長年にわたり活躍してきたイギリス人。イギリスをはじめとするヨーロッパでは古い建物もモダンと融合させて長年使われています。本書で紹介されるエッセンスも、不変ではなくとも普遍的で、10年や20年の流行り廃りで左右されるものではないと感じます。じっくり時間をかけて心地よく暮らすための家を作り上げるための、座右の書になると思います。

 3つのエッセンスを全体を通した柱としながら、家を6つの空間に分けて、具体的なアドバイスを写真とともに説明してくれています。

  1. 料理のための空間
  2. 食事のための空間
  3. くつろぐための空間
  4. 仕事のための空間
  5. 眠るための空間
  6. 入浴するための空間

 

テレンス・コンラン流 インテリアの基本

テレンス・コンラン流 インテリアの基本

 

 

34. 風が強く吹いている 三浦しをん 中学生も大人も 楽しい小説

 娘たちが小学生のころに読破した、最初の大人向け小説だと思います。二人とも小学校6年生のだったでしょうか。単行本で500ページのボリュームですが、二人とも夢中で読んでました。大学のあばら家学生寮に住む10人が箱根駅伝を目指すことになる、三浦しをんさんの、笑いあり(すごく多め)、涙あり(意外と多め?)の青春小説です。文庫本にもなっていますが、単行本の表紙が素敵でオススメです。現代絵師として有名な山口晃さんによる大和絵風で、登場人物と決めゼリフ、物語の場面が細かく書き込まれており、読後に見返すと、楽しくなっちゃいますよ。

 登場する10人のメンバーが、一人ひとり個性的で、彼らの会話、気持ちがすごく楽しく、心を打たれます。テンポが良く何度もクスリとしてしまう会話、ハラハラドキドキする練習や試合の展開。大人も子供も、映像を見ているようにポンポン読めてしまいます。

風が強く吹いている

風が強く吹いている

 

 

風が強く吹いている (新潮文庫)

風が強く吹いている (新潮文庫)

 

 

33. Baby Step 勝木光 親子で楽しめるマンガ テニス上達にも

 主人公が高校からテニスを始めてプロを目指す、成長物語。テニスの戦術やトレーニング方法などはとことんリアル。主人公は、身体能力は普通ながらも、ラリーやポイント全てをノートに記入し、学びを蓄積して着実に成長していくユニークなキャラ。今はやりのSHOWROOM社長、前田裕二さんの「メモの魔力」みたいですね。

 ヒロインや登場人物も魅力的で、親子、性別を問わず楽しめるマンガです。

「学校の成績はガキの頃からオールA、献身的な委員会活動に先生のお気に入りでクソ真面目、まさにレールの上の人生だ」と親友から揶揄された主人公。さらに重ねて言われます。

お前それで楽しいの?

お前の人生それで満足なわけ!?

    いま頑張っていることが楽しいのかどうか。シンプルなこの質問を、真剣にに考える機会を得ます。そして始めたテニスが、彼にとって心から楽しく、夢中になって努力できるものとなり、物語が進んでいきます。

 スポーツマンガとしてすごく面白いですが、テニス上達のレッスン書として読むことも可能です。ジュニア選手時代の前半は、上級者以外にも参考になります。ジュニアトップ、プロとして上を目指す後半も、メンタル、気持ちの持ち方などでテニス以外にも通じる素晴らしさがあります。そのような箇所をまとめてみました。

 

<フォアハンドストローク

ボールを追い返さないで迎えに行く。

逃げ腰でラケットだけを振り回してもダメで、自分から球に近づくことで体重を乗せて球を打つこと。

①グッと構えて、②サッと引いて、③「スパーン」のリズムで打つ。

打点は左足よりちょっと前、腰の回転と体重移動の力で、ボールの後ろをこすり上げるようにスイング。力んで腕で振らない。ラケットから手首、腕までをムチのように使う。

キミがこの4ヶ月で体得したストロークの基本

その打点を変えるだけで、キミはもう全ての場所にコントロールして打つことができるはずなんだ

ニュートラルな打点がコートの中心を狙うためのものだとすると、打点を変えることで、飛ぶ場所が変わる。左前に打つには、体に近い前寄りの打点で。右奥に打つには、体から遠い後ろ寄りの打点で。つまりこういうこと。

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1/100にラケットを合わせるには、とにかく追いついて止まってタイミングよく打たなきゃ…まずは一歩でも早く打点に!

とにかく追いつく!! 打点がブレないように止まる!! タイミングよく打つ!!

正確に打点を捕らえるには、やみくもにダッシュすればいいってわけじゃない。重要なのは最後の右足。球に近づけたら、小さいステップで歩幅を調整、右足がタイミングよく正確な場所に入れば、自然に打点が決まる!!

    フォアハンドストロークは一番多く打つショットですが、テニス歴が長くても、我流になっていて最適な打点で捉えられていないこともあるかと思います。主人公は初心者の頃ひたすら壁打ちをしていますが、壁打ちは自分で一番力が伝わる打点を見つけるのにいいです。その打点を、自分のニュートラルな打点として見極めると、9箇所の打ち分けがしやすくなるかもしれません。壁打ちと違って生きた球を打つ時はリズムが変わることは気をつけて。

ジャプショット

ジャンプショットは空中でスイングするわけだから、腰の回転、つまり体幹が重要になるからな。コツは、身体をコンパクトに捻って、その力を空中の一番高いところで一気に解放させる。スイングは小さく強くだ。

あとは意外に気持ちが大事。とにかく思い切って行け!

 ちょっとでも浅くなったら迷わず、など打つべき時を定めて思い切って打とう。

フォアのスライス

 攻め込まれてギリギリでしのぐ時に使われることが多いですが、主人公は、打つタイミングやコントロール次第では相手を崩す武器になるかもと思って、磨きをかけます。

その球威ならもっと正確にコントロールしないと使えないな。もっと球を一度キャッチしてから目指す方向へリリースするイメージだよ。

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ストローク強化のための体力トレーニング>

ストローク力をアップするとその分コントロールはブレる。コントロールを安定させるためには何より下半身の強化が必要。そのために朝のランニングを30分延長して、ストップ&ダッシュを多めに入れるようにした。

ストロークは主に腰の回転運動で打つんだよ。だから根本的なストローク力を上げたいなら、腰、つまり身体の中心にあるインナーマッスルとかコアマッスルって言われる筋肉を鍛えなきゃならない。

<ラリーの組み立て>

 押されて気味のラリー、もしくは攻撃まではできなくても、ただつなぐだけではなく、しっかりと攻めの意識を持ってしっかり打つことが大切。

ほんの少しだけサイドスピンをかけてみた… 

岡田くんのショットは打点がピンポイントだから、少しの変化でも影響が大きいはず…でも、少しの変化だから影響したかどうかはわからないけど…いや、多分影響した…いや、したはず‼︎

…だとしたら相手のミスでもこっちが積極的にとったポイント。どんな小さなことでも…できることがあれば全部やる!

余裕がある時は、選択肢をもって組み立てる。

  1. ストレートに速いスピン
  2. オープンコートに直球強打
  3. 鋭角クロスでエース狙い

 

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そして甘い球が返ってくれば、また選択肢が増える。

  1.  ゆるい鋭角クロスで決める。
  2. クロスへ速い直球で決める。
  3. ドロップで決める。
  4. 戻る相手の逆をつく。

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 相手があまり攻めてこない場合は、こちらもそれほど無理する必要はなくなります。全力で球に追いつきながら即座に勝負を決めにいくより…

一歩後ろに下がって余裕を持ったフットワークで、ミスをしない程度で狙いをつけたコースに、攻め込まれない程度の球威で…

焦らずに勝負を決めにいくタイミングを待つ。例えば相手から仕掛けてきた時に、全力で決めにいく。無理に攻めてきた場合は同時にスキが出来ることも多いので。

<サーブ>

力は方から鞭のようにしなる肘、手首、ラケットを加速させながらさらに上へ、そして一番加速する最高点でインパクト‼

身体は本当の鞭と違って関節しか曲がらないから、その肩に力が入って固くなっちゃダメ。

下半身にたまった力は、間接に力を入れずにできるだけ柔らかくしならせて、鞭みたいにインパクトまで。

セカンドもそのままのイメージで、強めにスピン‼

リターン

まずはどこに来ても反応できるように両手両足は柔らかく構える…抜けた手足の力は身体の中心に溜めておくイメージ…

その力を助走しながらコンパクトなスイングの過程でラケットに移動させて球にぶつける!

 

とにかく気合いで取ろうとしたら重心が沈んで足が細かく動いた

考えてみりゃ、その方が重心を下げる時間と行く方向を判断してから身体が動くまでの時間を短縮できる

 サーブアンドボレーに対して、高速ショットで正面(ボディ)に打ち、ボレーヤーが反応できる限界を超えることでポイント、優位を奪う方法があります。これはシングルスでもダブルスでも有効かもしれません。

<主人公が目指す練習の心構えと究極のテニス>

大事なのは打った時の感覚と落下地点の認識!!

どこで打てばどこに行くのかをきちんと結びつけ、「確かな1球」として身体に覚えさせるんだ。そうすればキミは、1球1球上達できる。

全ての球に追いつき、それをコントロールできれば

理論的には負けない!!

球を打った時の感覚と、その球がどこに落ちたかという認識

このふたつが備わった確かな1球を打って初めて上達する

この1球の蓄積こそが上達なんだ

ただやみくもに打ってるだけじゃ上達しないんだよ

その点、君は少なくともこのノートを書いている時は1球たりともムダにせず上達に結びつけている

 そのための練習方法としては、下記の2つ。

  1. イメージ練習:前・中・後、右・中・左で分けた9分割の的をイメージし、打ち分けることから始める練習。
  2. 確認練習:打った球の感覚、軌道、落下点を必ず確認するように心がける練習。

<チェンジオブペース>

 アニキは緩急をうまく使えてますね。

 ああ…速い球は打てなくても、早く感じさせることは出来るからな。

 それにスピードとパワーで勝負してくる相手に「チェンジオブペース」は効果的な場合は多い。

 人は一般的に同じペースが続いた方がリズムが取りやすいから、試合もある一定のペースに落ち着きやすい。そこに変化をつけてリズムを奪うんだ。あらゆる休息や球種でいろんなコースにコントロールすることでね。

 丸尾のショットはパワーは並みだがコントロールがよく不得意がない。そういうタイプは「チェンジオブペース」を仕掛けるのに向いてると言っていい。もし丸尾の「チェンジオブペース」がもっとよくなれば、全国の上位でだって十分に戦えるはずだ。

 それは「全ての球に追いつき、それをコントロールできれば負けない」っていう、丸尾が掲げるテニス理論の神髄だからな。

 チェンジオブペースの基本は、あらゆるショットを打つことで、いかに相手にとっていいタイミングで打つ機会を与えず、こっちのペースで攻め続けられるか。臨機応変にショットを選択しながら最終的にはそのすべてが決め球の伏線になるように組み立てる。

お前、チェンジオブペースの時、もう少しコートを広く使ってみたらどうだ?お前はどこにでも打てるコントロールが強みなんだから、深くて強いストロークにこだわりすぎないで、もっと広範囲を狙った方がいいってことだよ。

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<試合中の心構え、相手との向かい方>

緊張してるのは勝ちたいって強く思ってる証拠。

試合にとっていいことだよ!

だから自分のことより相手のことをよく見よう!

全神経を集中して相手の動きと球の軌道を見る。どんな些細なことも見逃さないように。視点が完全に変わる。

 例えばチャンスボールを相手のバックに打って前に出る。相手のスキルによって打たれるコースは限られてくるので、そこで余裕を持って待つ。

 相手の強打がすごくても、オープンコートに深くコントロールする。深ければ、どんなパワフルなショットでもなかなか決定打にはなりにくい。

 前に出たときの相手のパターンはきっといくつかに絞られる。①スピンで沈めて次を待つ、②高速フラットで決めてくる、③ロブで頭の上を抜く。パターンが認識できれば対応しやすくなる。

打点への意識を半分、もう半分は相手と打つべき方向を意識して…

徹底的に守ったうえで…

攻める時は一撃で…!

 試合では必ず緊張しますし、負けるのは嫌、ミスするのは嫌で、ついつい無難につなぐだけになってしまうことがあります。しかし、置きに行くだけの返球はかえって相手の逆襲にあうだけでなく、そこから流れも作れないし、何より成長しません。攻めて失敗したとしても、修正が出来るし、気づきが得られます。

(攻め続けた結果負けたが)

 今の自分のストロークの限界がわかりました…だから…それは超えなきゃと…

 それでいい。だがそのまま攻め続けると、いつか必ずお前の弱気が顔を出す。守ったほうが楽に勝てると言い訳しながらな…その時は、とにかく自分が超える壁だけをみて何とか弱気を振り払え…苦戦や続くかも知れんが、一度その壁を登るんだ。今までの失点が加点になった時、世界は一変する。攻めた上でのミスこそが上達の種だと…挑戦の証だと誇りに思える時が必ず来る。

 最近の練習では動画の活用も有効。主人公は一流プロと自分を並べて動きを比較し、自分の方が準備が遅くて打った後の反応も鈍いこと、一流プロは打った後がやたらと速いこと、そうしなきゃならない環境で戦ってるを、まざまざと気づかされます。

 打つ前の準備、打った後の動きを早くする。ウィークエンドプレーヤーは、これを意識するだけで試合で大きく違いが出てくるかもしれません。また、ストロークの再確認などに、フェデラーなどのフォームを動画で紹介しているサイトは大いに参考になると思います。

<メンタルのトレーニング、気持ちの持ち方>

 テニスのポイント間は20秒しかない。何を思い出すかは考えてる時間はないよ!あらかじめ思い出す場面を決めておくんだ。

 テニスは精神面が大きく左右するスポーツ。どんな時でも20秒でいい時を鮮明に「思い出す」ことで、ベストの精神状態を作り出せるようになったら試合で有利だとは思わないかい?

  「ソース~あなたの人生の源は、ワクワクすることにある」という本でも語られることですが、大好きではないことを、様々に理由付けしてヤル気を振り絞るのは、責任ある態度ではないのです。まわりの人の願望を満たすことに一生懸命で、自分自身の夢や願望を忘れてしまう、本当の自分を置き去りにしてしまうことは、人生の途中で自分の魂を見捨ててしまったということですから、もっとも無責任な行為といえます。自分自身に無責任な人は、家族や友人知人、仕事に責任を持つことができません。その人からは、憂うつ、空しさなどが漂い、まわりの人間たちにも伝わってしまうから。

 真剣に目指したプロへの夢を諦めるべく、様々な理由をシミュレーションをし、「これも最善の選択の一つだろ?」と無理に笑顔を浮かべる主人公は、友人から再度問いかけられます。

お前は…それで楽しいの?

 主人公に相談されたコーチは、プロテニス選手として上り調子の時に怪我をした後、それとの付き合い方で失敗した経験から、自分にウソをつくと、自分が自分を信用できなくなってしまう怖さを教えてくれます。少し長いですが、名セリフです。

お前は約束を破ったりウソをつくのが嫌いなタイプだよな?それは何でだよ?

(それは…相手の信用をなくすからですよ)

そうだよな…だとしたら…それは自分に対しても当てはまるんだよ。俺も当時はそれに気付けなかった。今だからわかるんだ。このときの俺は全力で自分にウソをついてた。本当は怪我も怖かったし、リハビリも試合に出られないのも辛かった。そんな弱気なことを考えるのも嫌ですべてを投げ出したくなっていた…だから俺は…そんなこと考えてないことにしたんだ。

「全然平気!むしろこれで精神的に強くなれる」「怪我と付き合っていくのはプロとして当たり前のこと」

 心の底からそう思ってることにしたんだ。そうでもしないとやっていけなかったんだろうな…実際当時はそう思い込んでたんだと思う。

 でもそのうち、本心に嘘をつき続けた影響が出始めた…自分の本心を裏切り続けてると自分の本心がわからなくなってくるんだ。どこまで弱気なのが本心でどこまで強くいうのが本心じゃないのか?感じてることも考えてる事はどれが本当なのか疑わしくなってくるんだ…

 そんな状態が続くと自分では何も判断できなくなってきて、心はいつも不安定になるから他人に流されるようになる。そんな状態でテニスが上手くいくはずがない。

 この後、俺は引退して三浦コーチに拾ってもらうまで、何がしたいのかわからないまま日々を過ごした。それから勉強して資格とってコーチになったわけで…今となってはそれもいい経験だったのかもしれんがな。

 コーチが主人公にこのアドバイスをしたのは、目先の成功のためではなく、この先も主人公が自信をもって生きてほしいからでした。

 あきらめるななんて言わねえよ。プロの厳しさ俺の方が知ってる。ただどんなに辛くても自分の気持ちにウソつくなって言ってんだ。じゃなきゃこの2年半必死にやってきたことも、それを支え続けた熱い思いも、全部がウソに霞んじまう。それだけはしてほしくないんだ。お前がこの先、自信を持って生きていくためにな…

 テニスではないですが、打ち込んできた仕事、会社で限界を感じて転職を考えた時期がありました。ビジネスマンとして尊敬する父親からのアドバイスは、自分がやりつくしたと思って転職するなら全く問題ない。評価とか出世とかを気にして、やけになっているなら踏みとどまった方がいい、というものでした。自分で自分にウソをつくことはできる。ただしその結果は、自分で自分がわからなくなる。そうなったら、人生頑張れないですからね。自分のワクワクを、大切に生きましょう。

 進学するかプロになるか迷う主人公に、同じくプロを目指す彼女が語ります。

そっか…てことはまだ考える時間はあるんだね。じゃあ、今いくら考えても決まらないのは、まだそういう時期じゃないのかもよ?

なんかない?そーゆーこと。ずっと必死に悩んでた事が、ある時ストーンって決まること。

エーちゃんはここまでやることやって来たもん。焦らないで思いっきり悩んだら、きっと自然に…一番ぴったりな選択ができる気がするよ。

ベイビーステップ コミック 全47巻セット

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32. 精霊の守り人 中学生も大人も 楽しい小説

 中1の娘と二人でほぼ同じに読み始め、二人して大いに楽しんだファンタジー小説。18世紀ごろの東南アジア、中央アジアを想起させる架空の世界が舞台。中年に差し掛かる超一流の女性用心棒と、政争と精霊に翻弄される王子を主人公とした物語。

    上質なファンタジー小説は、全く架空の世界を舞台としつつ、精緻かつ現実社会を反映したリアルな設定、奥行きがあり魅力的な複数の登場人物、世の人に訴えかける骨太なテーマ、この3つに支えられていると思います。

    精霊なども出でくるファンタジーですが、文化人類学を専攻する筆者が描く世界はリアリティがあり、伝承に部族の想いや知恵を乗せて紡いできた古き時代を思わせます。民族の混血化を通じて文化が変容したり、統一を果たした勝者側に都合よく歴史が改変されたり、産業の進んだ帝国が国家経営の一手段として膨張を図ったり、全10巻で描かれる社会背景は現実の社会の縮図でもあったりします。攻める側と守る側、敵味方の攻防という構図は、子供も大人もシンプルにハラハラドキドキできます。同時に敵味方が情勢によって入れ替わるあたりもリアルです。

    主人公が30代の中年独身女性、その職業は用心棒と言う設定は非常にユニークです。超一流の戦闘能力の持ち主ですが、そこまでに至る過酷な身の上を思えば納得させられ、決してスーパーマンではありません。彼女が時に見せる母性や愛情が、物語にステキな温かみももたらしています。もう一人の主人公である王子は、精霊との厳しい絡みに加えて、多国間のシビアな政争に大いに巻き込まれ、翻弄されていきます。民族性の違いが反映された各国王家の考え方、王族たちのキャラクターの違いは、物語に面白さと奥行きを与えています。

    第1巻の解説で、作家が異世界ファンタジーを書きたくなる理由を、恩田陸さんが綴っています。「自分の存在する世界を、異世界という縮図で理解したい、描きたい、自分のものにしたい、という意識があるような気がする。」文化人類学者として、世界の秩序を俯瞰したい、理解したい、自分なりの言葉で解明したかったのではないかと。本書ではマクロ、世界の成り立ち、社会の趨勢から、ミクロ、運命に翻弄されながらも意思を持って生きる個人達まで、生き生きと描かれています。まさに異世界を舞台としながら、読み手にどう生きるかのリアルなメッセージを届ける、素晴らしい物語だと思います。

    子供と親、どちらも夢中になれますので、一緒に、存分に楽しんでください。

  

 

 

31. 図書館戦争 中学生も大人も 楽しい小説

  本好きの中二の長女と一緒に、イッキ読みしたシリーズ。「図書館の自由が侵される時、われわれは団結して、あくまで自由を守る。」このクールな宣言は現実の図書館法内の条文ですが、これにインスパイアされた物語で、本の検閲を巡って図書館で戦闘が繰り広げられる小説。その点ではあり得ない世界だからジャンルとしてはSF、しかしそれ以外はすこぶるリアルな社会派風の設定と展開、同時に進むベタベタなラブコメ、という独特なストーリー。痛快な展開とは裏腹に難解な言葉も多用されるので、一緒に楽しむなら、読書が得意な中学生、もしくは高校生ぐらいからでしょうか。長女曰く、法律用語が溢れる一巻の始めはキツかったと。

  上質なファンタジー小説は、全く架空の世界を舞台としつつ、精緻かつ現実社会を反映したリアルな設定、奥行きがあり魅力的な複数の登場人物、世の人に訴えかける骨太なテーマ、この3つに支えられていると思います。

  まず本書の設定ですが、本の検閲を巡って図書館内外で銃器を使った戦闘が頻繁に発生するという「ありえない」世界において、それが必要とされるに至った政治的、社会的背景や、図書隊と呼ばれる武装機関の組織形体、階級制度などは非常にリアル。有川浩さんは自衛隊を舞台とする小説を多数書かれているので、深い知見がリアリティ大いに活きています。

  主人公の女性隊員と相手方の教員はThe デコボココンビで、全巻を通じて掛け合いで楽しませます。途中からちょいちょい放り込まれるベタベタなラブコメも、登場人物に十分に思い入れができた後なので、先を楽しみに見守りたくなってしまいました。全体的に敵役はあまり登場してこないのですが、登場するキャラクターはみな丁寧に描写され、どこかしら理解できてしまう深みがあります。

  著者自身が本書をライトノベルと評しているように、非常にテンポがよくマンガ的、若者向けな感もあるストーリーである一方、「表現の自由」へのプライド、日本の出版界に横行する自主規制への異議といった、著者の思いが本書にしっかりとした背骨をもたらしています。

  中高生から大人まで楽しめるエンターテイメントです。

 

 

 

0. 仕事、夫婦、暮らしを楽しくする本 サラリーマンN太郎のおすすめ

 このブログを読みに来てくださりありがとうございます。米系消費財メーカーで働くサラリーマンのN太郎です。仕事や伴侶に恵まれてきたはずが、「不惑」を迎える頃から、惑うことが増えました。10代は目の前のことにしゃにむに取り組み、20代は自由を謳歌し、30代で子供もできて責任ある仕事に挑ませてもらいました。会社でも、家庭でも、一所懸命、色々考えやってきたつもりでしたが。。

 会社では、課された仕事はやり切ってきました。しかし、圧倒的努力にもとづく飛び抜けた成果とか、引っ張り上げてくれる上役との密な関係とか、そういったものはあまり好きではなかったし、築いてこなかった。その一方で漠然と出世はしたいと思っていて。そうはいかないことに、40を過ぎてから気づきました。

 家庭では、二人娘を6年間育てた兵庫から、東京、名古屋、また兵庫と転勤。そしてまた東京に今度は単身赴任。嫁さんのことは大事に思っていたし、娘たちはホント可愛いのですが、ずっと私のペースで進めてきて、嫁さんには我慢させて。あげくの怒涛の転勤は、辛抱たまらなくなったのもしょうがないなと。

    40過ぎて、キャリアに限界を感じ、嫁さんもハッピーにしてやれてない。悩む中で、読書が支えてくれました。仕事、夫婦関係に光明を与えてくれた、そして自分の日々の暮らしを楽しくしてくれた本をご紹介させて頂きます。同じように、仕事やキャリアで悩むサラリーマン、夫婦関係で困難に直面した夫、読書を通じて暮らしのヒントや楽しさを探している本好きの方に、お役に立てばこんなにうれしいことはありません。

 

<仕事にも、夫婦にも。人生に効く本>

<仕事やキャリアに効く本>

<夫婦関係に効く本>

<日々の暮らしに効く本>