心に巻き起こる、怒りやいらだち。負の感情をコントロールできたら、人生がどんなに楽になるだろう。そう思って検索して出会ったのが本書。
副題は『「心の知能指数」を高める66のテクニック』。
感情は自然に湧き上がるもので、コントロールするのは難しい。そう思いがち。でも、体をどれだけコントロールできるかは、センスに個人差はあれど、訓練がものをいって激しくレベルが変わるのは誰でも認めるところ。
であれば、正しくテクニックを学び、必死になって訓練すれば、如実にレベルアップしうるのではないか。幸せとは、心の持ちようだとすれば、人生100年時代の折り返し地点を前に、必死に取り組むのも悪くはないですよね。
本書はダニエル・ゴールドマン著「EQ こころの知能指数」の現代版、実践篇です。
自分の心の動きを理解する、自分の心をコントロールする、他者の心の動きを理解する、他者の心をコントロールする。本書では違う言い方をしていますが、端的に表すとこの4つのスキルの紹介と練習方法を教える本です。
ちなみに本書では4つのスキルを「自己認識力」「自己管理力」「社会的認識力」「人間関係管理力」と表しており、道徳的にはこの表現の方が正しいと思います。ただ個人的に、これからの1年間で、残りの人生のコントロール力を高めたい気持ちが強いので、あえて道徳的、観念的なものとしてとらえず、体のトレーニング同様、訓練を徹底して、スキルとして本気で身に付けたいと考えています。
自己認識スキル
その瞬間の自分の心の動きを正しく把握し、各種状況での自分の傾向を理解する力。ネガティブも、ポジティブも、感情が生まれて自分がそう感じるのには必ず理由がある。感情の出どころを探り、その強い感情を引き出させたのは何か、時間をかけて自省する。そうすると「あ、今そういう感情が湧いてるな」と気づきやすくなります。気づくことは、囚われから放たれて、客観的に考える第一歩です。
自分への意見や出来事に対する捉え方も変わります。いわれのない「非難」と感じていたことも、「フィードバック」として一理あると気付いたり。全ての出会いには学ぶ機会があると思えば、落ち着くことができたり。以前は「ありえない」とムカッ腹を立てていたことも、そのような考え方を知って練習すると、受け入れられる部分があることに気づくことができました。
<自己認識スキル練習法の例>
5. あなたの感情ボタンを押す人やものを知る
誰にでも感情のボタンがある。そこに触れられると「ムカつく」「引き金」とも言える。自分の感情ボタンを押すのは誰か、そしてどのように押すのかを知ることは、状況をコントロールし、落ち着きを保ち、冷静さを取り戻すのに欠かせない。どんな人やものが自分の感情ボタンを押すかがはっきりとわかれば、その人やものへの対応が少し楽になる。不意を突かれることも少なくなる。
自分の場合「謂れのない非難」と感じること。それが一つの感情ボタン。本当に謂れのないことか否か、そういう事実確認の前に、自分がそう感じることが感情のボタンだ。だから、「謂れのない非難」に遭遇したら、まずは客観的に観察してみよう。
7. 感情を日誌につける
激しく感情的にならざるを得ない出来事があり、日誌をつけてみた。
自分は、謂れもない非難を浴びた、と感じると非常に腹が立つようだ。アドラー心理学的に考えると、こちらが腹を立てることを知っているから、相手はそれを狙って言う。謂れのない話だと思うなら、感情的に受け止める必要がそもそもない。
感情を日誌につけてみると、そういう気づきに至りました。
11. 自分の価値観に立ち返る
忙しい時間を少し割いて自分を顧みて、信条と価値観を書き出してほしい。自分の人生の道しるべになる価値観は何か、自問してみよう。紙の真ん中に線を引いて、左側に自分の価値観と信条を、右側に最近の言動で後悔していることを書き入れよう。自分の言動と価値観は一致しているか。一致していないなら、どんな言動なら誇りに思えるか、後悔しないか、考えてみよう。
14. フィードバックを求める
自分が思っている自分と、他人から見た自分はまったく違っていることも多い。自己イメージと、他人が考える自分のイメージの溝を理解することが、自己認識を深めるヒントになる。客観的に自分を知るには、心を開いて他者からフィードバックを受けるしかない。友達、同僚、家族など、他人が自分を本心でどう思っているかを知ると、目からウロコが落ちるかもしれない。勇気を振り絞って、他人から自分をどう見ているかを知ることで、ひと握りの人にしか到達できない高いレベルの自己認識に到達することができる。
自己管理スキル
自己管理スキルとは、自分の感情に気づき、その気づきを基にして言動を自分で選ぶ力。自分の感情を察知できれば、積極的に対応でき、それこそが最高の自己管理力になります。自己管理力が高まれば、さまざまな状況に対して臨機応変に、前向きに対応できるし、周囲の人をイライラさせて怒らせることもなくなります。
9. ひとりごとをコントロールする
普通の人は1日におよそ5万回考えるという研究がある。そのたびに化学物質が脳内で分泌され、身体に反応が走る。何を考えるかと何を感じるかは、肉体的にも心理的にも強く結びついている。
思考は感情の流れを制御する門番のようなもので、強い感情が湧き上がってきたときに、思考によって感情がさらに燃え上がることもあれば、和らぐこともある。
他人のせいにしないようにしよう。もし、「すべて自分が悪い」「すべて相手が悪い」と考えているなら、たいていの場合はそうでない。落ち着いて自分を振り返ろう。
社会的認識スキル
社会的認識とは、目線を外に向けて他者について学び理解すること。他者と接するときに相手の気持ちが理解できれば、人間関係から企業利益まで、すべてのことに影響します。相手の表情や、会話の間に、いつもより注意を払ってみる。すると「こっちの話についてこれてないな」と気付けて、話し方をスローダウンしてみたり、「相手は怒ってるんだな」という事実を冷静に認識すると、相手の言葉尻に反射してカッとなることも、少しは防げます。自分の感情のままに話すのではなく、相手の感情を意識して話すようにすると、当然ですが、より良く聞いてもらえます。
3. 正しいタイミングを見計らう
人の感情も「タイミングがすべて」。自分にとっては問題のないタイミング、会話の内容であっても、相手にとってそうだとは限らない。会話は相手があって成り立つもの。そして相手の感情は相手のもの。社会的認識力とは、自分よりも相手に目を向けること。そうすることで、自分もうまくいく。
8. 今に集中する
大人は過去を悔やみ、未来を憂う。過去や未来が心の中で多くを占めていると、今に集中できない。社会的認識力を高めるには、今を生きる必要がある。そうすれば、周囲で何が起きているかにその場で気づけるようになる。
在宅勤務をしていると、家と職場、勤務時間とプライベートの境目が溶ける。デスクを経ったら、書斎を出たら、ランチをとるなら、スイッチを切り替えて今に集中しよう。
人間関係管理スキル
どんな人間関係もうまく続けるには努力が必要。そして人間関係は人生の必要不可欠な要素であり、人生を豊かにするもの。人間関係の片側は自分なので、つながりを深める責任の半分は自分にあるのです。
8. 怒るときは意図的に
「誰でも怒ることはある。怒るのは簡単だ。だが、正しい人に、正しい程度で、正しいときに、正しい目的で、正しい方法で、怒るのは難しい。」アリストテレス。
怒りを感じるのには理由がある。押さえこんだり、無視したりしない方がいい。
サッカーの監督は、ハーフタイムに選手にガツンと厳しく言い切る。選手は集中力を取り戻し、改めて勝ちを目指す。この場合、監督は感情をコントロールして、選手を行動に導いている。
怒りを過剰に出しすぎたり、出すタイミングを間違えたりすると、人々の心は離れてしまい、言葉を真剣に受けとめられなくなる。
まずは自分の怒りに気づき、度合いを考え評価し、かきとめよう。どんなときに、どんなふうに怒りを表に出したら、人間関係がよくなるか判断しよう。
11. 相手の感情や状況を補う
相手が言うことがまったく理にかなっていないと感じたときに、論破するのではなく、聞き流す。それも一つの対応だろう。
より発展的な対応をとるとすれば、相手の言い分を、こちらが納得できる形で言い換えて確認するのがいいかもしれない。そうすれば、相互理解が生まれるし、建設的な解決策も出てくる気がする。