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人生とテニスに役立つ本

『人生計画の立て方』+『私の財産告白』古き紳士から企業人の人生に効くアドバイス

著者の本多静六氏は、戦前戦後に活躍した東大農学部の先生で、日比谷公園設計、明治神宮造林、ベストセラー作家、さらには投資で大成功。そう説明すると縁遠い偉人に聞こえますが、本業のサラリーマン生活をまっとうしながら、仕事の知識、興味関心を少しスライドさせて存分に活かし、簡素生活を続けた紳士。私のようなサラリーマンに大いに参考になることを書かれています。二つの著作から、氏の9つのモットーをまとめてみます。

第一 常に心を快活に持する

第二 専心その業に励む

人が職業を選ぶには、よく自分の性質を考え、師父先輩の意見を斟酌して選ぶべきだが、一度決心した以上は、もはや迷わず、疑わず。たとえ初めは、自分の性格才能に合わないと思えるような仕事でも、専心打ち込むことによって、いつしか上手にでき、面白く働けるようになってくる。その結果、誰しもついに、その職業を道楽化し、容易に成功が得られるようになるものだ。

仕事を先取りし、用事をあとに残さない習慣を身につけておくことは、仕事を面白く支配し、職業を自分自身のものにしてしまうゆえんで、仕事に追われ、仕事に支配されるのとは大きなちがいである。

いつしかその仕事に慣れ、能率も上がり、成績もよくなり、自然とその仕事に趣味も生じてくる。そうして、ついにはそれが面白くてたまらなくなるところまでいきつく。そこまでくればもう立派な「職業の道楽化」が達せられたわけで、あとは全く人と職業とが一体化して、大成功は求めずとも必ず向こうからやってくるのである。 

平凡人はいついかなる場合も本業第一たるべきこと。本業専一たるべきこと。一つのことに全力を集中して押しすすむべきこと。これが平凡人にして、非凡人にも負けず、天才にも負けず、それらに伍してよく成功をかち得る唯一の道だ。

私のアルバイトは、「一日に一頁」の文章執筆の「行」として始った。それは満二十五歳の九月から始まり、一日一頁分(三十二字詰十四行)以上の文章、それも著述原稿として印刷価値のあるものを毎日必ず書きつづけ、第一期目標として五十歳まで、とした。これには、貯金と同じようにあくまでも忍耐と継続とが大切で、最初はずいぶん苦しかったが、断然やり抜いた。一週間旅行すると七頁分も溜まる。あとの一週間は一日二頁分宛にして取りかえさなければならぬ。年末俗事に煩わされて時間を食ってしまうと、翌年からは元旦早朝に学校へ出掛けていって、十枚、二十枚の書き溜めさえやった。次第になれ、だんだん面白く、仕舞いには、長期旅行をするのに、いつも繰り上げ執筆ですまされるようになった。

人生の最大幸福は職業の道楽化にある。富も、名誉も、美衣美食も、職業道楽の愉快さには比すべくもない。道楽化をいい換えて、芸術化、趣味化、スポーツ化等々、なんと呼んでもよろしい。すべての人が、おのおのその職業、その仕事に、全身全力を打ち込んでかかり、日々のつとめが面白くてたまらぬというところまでくれば、それが立派な職業の道楽化である。

第三 功は人に譲り、責は自ら負う

これは人の長となる者の心得だ。実際に、仕事で、自らの功と思えるものでも、よく考えてみると、決して自分一人の力でできたものはほとんどないといってよい。

第四 善を称し悪を問わない

これは社交上最も大切な秘訣である。いかなる悪人でも、その人の何から何まで全部が悪いこともない。それと同時に、いかなる善人でも、その人の何から何まで全部善いこともない。人それぞれに、長所もあれば短所もある。不評判な人にも必ずどこかに良いところ、長じたところがあるにきまっている。その悪いところには相手にせず、その美点長所だけとつき合えば、何人とも友人になれる。「あいつはいかん」ということはない。まことに「長所と交われば悪友なし」である。

必要なときに、必要な「知らぬ顔」ができれば、人使いも一人前といえる。これがわれわれ凡人にはなかなか難しい。つい何事も顔色に出てしまう。言葉に出てしまう。いわなくてものことをいって、取り返しがつかなくなる。世の中には、即時即決を要する問題も多いが、また往々にして、この「知らぬ顔」が一番いい解決法になる問題も少なくない。人を使う立場にある人はこのことを知らなくてはならない。

第五 本業に妨げなき好機は逸しない

これは積極的活動の方針だ。一度定めた職業は、一生それを貫き通す覚悟で突きすすまなければならぬ。しかし、本業一つに沈潜し過ぎていると、自然専門外のこと、本業以外の分野には全く盲目になってしまうおそれがある。それではどうも面白くない。そこで、専門以外、本業以外のことについて知る適当な機会があったら、この場合好機を逸せず、できるだけ見聞し、調査し、その要点をしっかり把握しておくのがよろしい。そんなことをやっていては本業がお留守になるという危険があれば、本業を妨げないという限度に立ち返って、すっぱりやめる必要があるのはもちろんである。

自分の専門分野を極めていけば、その周辺に必ずキャッシュポイントは見つかるもの。大切なのは、時間を味方にすること。五年、十年という短期ではない。少なくとも三十年という長い時間の流れで、価値が上がっていくものに投資することで、莫大な利益を上げることは可能なのである。自分のライフワークの周辺に将来大きく育っていくような投資案件があるか、いつもなんとなく意識の片隅においておくことである。

第六 月収の四分の一と臨時収入全部を貯える

月収は、それが入ったとき、天引きで四分の一を貯金してしまう。さらに臨時収入は全部貯金に組み込む。これを方程式にすると、

貯金=通常収入×1/4+臨時収入×10/10

となる。つまり月給その他月々決まった収入は四分の一を、著作収入、賞与、旅費残額などの臨時分は全部を貯金に繰り込む。こうして、また次年度に新しく入ってくる貯金利子は、通常収入とみなしてさらにその四分の一だけをあとに残しておく。

もとより吝嗇と節倹とは全く別物だ。吝嗇は当然出すべきものを出さず、義理人情を欠いてまでも欲張ることで、節倹とは似て非なるもはなはだしい。節倹は出すべきものをチャンと出し、義理人情も立派に尽くすが、ただ自分に対してだけは、足るを知り、分に安んじ、一切の無駄を排して自己を抑制する生活を指すのである。

子や孫は、おのれの欲するまま、自由に奔放に活動、努力せしめるほうが、財産を遺すことよりもどれだけいいかわからぬ。そうであるから、子孫を本当に幸福ならしめるには、その子孫を努力しやすいように教育し、早くから努力の習慣を与え、かつできるだけ努力の必要な境遇に立たしめることである。遺産として遺すよりはるかに良い。

第七 人から受けた恩は必ず返す

恩は恩で返せ、断じて仇で返すようなことがあってはならぬ。しかも、その恩に恩をもって報ゆる謝恩は、できる限り早く行うようにつとめるがよい。たとえそのかたちが軽微なものであっても、その誠意は可及的速やかに表明することにしたい。それで誠意が先方へ通じるのだったら、僅かハガキ一枚でも、電話一本でも、また対手方の玄関に立って謝辞を述べるだけのことでも結構であると思う。

第八 人事を尽くして時節を待つ

前述の七条項をいかによく実行しても、何事も時節というものが熟してこなければ、決して予定通りの成功を収めることはできない。すべての事業は、順境に乗ずるときは労少なくして功多く、逆境においてはいかに焦慮するともその効果はなく、かえって苦痛と失敗を増すぐらいが落ちとなるものである。したがって、むしろ順境のときは積極的に働き、逆境のときは退いてよくこれを忍び、実力を貯えつつ、おもむろに悠々時を待つに限ると思われる。

投資戦に必ず勝利を収めようと思う人は、何時も、静かに景気の循環を洞察して、好景気時代には勤倹貯蓄を、不景気時代には思い切った投資を、時機を逸せず巧みに繰り返すよう私はおすすめする。

失敗は社会大学における必須課目である。私は、この大切な課程を経たものでなければ本当に成功(卒業)ということはないと考えている。失敗の経験がないと誇ることは、すなわち、必須課目を修めていないと威張るようなもので、全く意味をなさないのである。

第九 原則として個人間に金銭貸借を行わぬ

その他

青少年は一生のうち最も適応力が強いが、幾多の苦難に耐えれば耐えるほど、その強靱性は増すものである。したがって、この時代の困苦欠乏は意とするに足りない。むしろ、それにブツかればブツかるだけ、それに打ち克つ力が強められてくるのである。ゆえに、だれしも若い頃にはなるべく多くの苦難にあい、なるべく大きな潜在力を養っておくことが大切で、昔から「若い頃の苦労は買ってでもせよ」といわれているのは、全くこの間の消息をつたえたものだといえよう。

教育錬成期にある青少年諸君は、いかなる些少事にもせよ、根気よくその一つ一つを完成させていかねばならない。一つの完成は一つの自信を生じ、さらに高次的な完成を生むものであって、この完成の道程には、限りなき自己練磨の進境が開かれてくるのである。

<自分のの学び>

  • 人生設計は、自由になるためのもの。計画して、着実に自分の打ち立てた目標を達成することで、自由を得ることができる。また、その過程で臨機応変に対処することが、まさしく自由だと。がちがちにはめるのではなく、自由を得るため、流れにのまれず、計画をたてよう。
  • 経験にあてはめてみると、若い時に貯金をしておくと、後からまとまったお金を投資に回しやすいのは事実。吝嗇と節倹は別、その通りで、ケチケチして自分の大事な人につらい思いをさせてはダメ、という反省もある。
  • 「本業の周辺に投資案件があるかアンテナを張っておこう。」本業周りであればこそ、付け焼刃な知識と違って自信をもって判断できる。人生初投資は、読みかじった本の影響で買った投資信託。リーマンショックで値下がりし、知識が浅いので先行きに自信も持てず、損をしました。SNSやECが来る、と言われていた数年前。SNSは大した知識しかなく手が出ませんでしたが、EC担当の仕事をしていたので大手EC株を購入。これは吉でした。コロナ不況の中、本書や『ホモ・デウス』、『シンニホン』の学びからすると、バイオテクノロジーやICTは有力なはず。バイオは全く知見がないので手が出せませんが、アルゴリズムに強いITソリューション企業の株を購入。著者の教えがいい結果となるか、10-20年後のお楽しみ。
人生計画の立て方 (実業之日本社文庫)

人生計画の立て方 (実業之日本社文庫)

  • 作者:本多 静六
  • 発売日: 2013/05/16
  • メディア: 文庫
 
私の財産告白 (実業之日本社文庫)

私の財産告白 (実業之日本社文庫)

  • 作者:本多 静六
  • 発売日: 2013/05/15
  • メディア: 文庫