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人生とテニスに役立つ本

『2030年の世界地図帳』に、仕事に役立つ未来年表リンクを追加

 国連が2030年までに達成する17の目標として定めたSDGs(持続可能な開発目標)。これを足掛かりに、落合陽一さんのナビゲートで地政学、テクノロジー、データを見据え、これからの社会をどう生き、どう関わるべきかを学ぶ本。中身は、SDGsがカバーする幅広い課題を、今を生きる日本人が自分ごととして考えるための資料、トピックが豊富に用意されています。

 その中でも、自分で考える「タネ」として冒頭に掲載されているテクノロジーの未来年表、人類規模の課題を自分ごととして考える「方法」として巻末に掲載されている7つの対立軸。この二つを深掘りしてみました。

2020ー2050年のテクノロジーの未来年表 

 本書には今後30年間で社会を変化させていくテクノロジーの実用化、節目となるイベントが40個掲載されています。それらのテクノロジーの中身の紹介だけでなく、どのように社会を変え得るのかが理解できるサイトを探してみました。39のリンクを貼っていますが、2030年の「SDGsの達成期限」は本書のメインテーマなので、リンク先で学ぶよりも本書を読みましょう。

 年代 事業 
 2020 東京オリンピック・パラリンピック開催[予定] 
  公道での地域限定型の無人自動運転移動サービス開始[目標] 
  5G(第5世代移動通信システム)運用開始[予定] 
 2022 トラック隊列走行(後続車無人)商用化[目標] 
 2023 準天頂衛星システム「みちびき」7機体制の確立と農業機械のロボット化[目標]
  iPS細胞 歯の再生医療 臨床応用開始[予想] 
 2024 この頃ムーアの法則が限界に[予想] 
  火星へ有人宇宙船を送る(スペースX)[目標] 
  この頃、同時通訳可能なAIの登場[予想] 
  家庭等の低圧電力部門で全数スマートメーター化[予想] 
  量子コンピュータの発展期が始まる[予想] 
 2025 大阪・関西万博開催[予定] 
  自動運転による運送業の代替(トラック・タクシーなど)[予想] 
  ロボット手術の普及[予想] 
   iPS細胞による腎臓の再生医療の臨床応用の開始[予想] 
  東京への一極集中化がピークに[予想] 
 2027 リニア中央新幹線開業(東京ー名古屋間)[予定] 
 2028 培養肉の商用化開始[予想] 
 2030 SDGsの達成期限[予定] 
  地域限定型の無人自動運転移動サービスが全国100か所以上で展開[目標] 
  新車販売に占める次世代型自動車の割合について5-7割を目指す[目標] 
  AIによる専門職の代替が始まる(医師、弁護士、裁判官、銀行員など)[予想] 
  スマート農業の普及[予想] 
  太陽光発電のコストが従来の火力発電並みに[予想] 
  日本の再生可能エネルギーの電源比率が22-24%に[目標] 
  初の月面基地が完成[予想] 
  飛行モビリティ(空飛ぶクルマ)の実用化[予想] 
  水素発電の商用化始まる[予想] 
 2033 団塊世代の死去による相続ラッシュ(地下暴落?)[予想] 
  日本の空き家率3割強に[予想] 
  iPS細胞等による認知症や神経障がいの克服[予想] 
 2035 AIによる知的職業の代替(研究者、コンサル、語学教師、クリエイター)[予想] 
  バイオプリンティングによる再生臓器の製造[予想] 
 2040 世界の再生可能エネルギーの発電量シェアが37%に[目標] 
 2042 第二次高齢化危機(団塊ジュニアの退職ピーク)[予想] 
 2045 シンギュラリティの到来(レイ・カーツワイル)[予想] 
  汎用型の人型ロボットの普及が始まる[予想] 
 

人間の平均寿命が100歳に[予想]

 2050 メタボローム解析による主要ながんの特定[予想] 
  宇宙エレベーター完成(大林組)[予想] 

予定:実現が確実視されている項目

目標:実現に向けプロジェクト進行中の項目

予想:実現の大まかな目途がついている項目

 

 コンピューターと通信技術の進歩がスマホを生み出して生活様式を変えたように、いくつかの大きなテクノロジーの実用化が組み合わさると、大きな社会的変化を促すことを再認識しました。また、予見される深刻な社会的問題も、同時に進んでいく社会構造の変化を見通すと、現在では出来ない解決策が考え得るんだ、という気づきが得られました

 例えば、新築をもてはやす国の政策や、中古物件の情報開示が不足気味の不動産業界の慣習上、日本の空き家比率が大幅に上がることはおそらく避けられない事態でしょう。さらに、我々団塊ジュニア世代が高齢化した時、収入不足によって現在の水準の家賃支出をまかえなくなる老人が多数発生するのも確実でしょう。でも、その時にはたくさんの空き家がある訳です。先々に起きる変化を、組み合わせて考えること、これはすごく大事ですね。

2030年デジタル発酵のための7つの対立軸

 伝統とテクノロジー、自然と人工物、それらを融合、調和させる。雑多にも思える多様性を内側に詰め込み、醸成させる。人とのつながりや生活環境との相互関係の中で、情報を交換し、新しい発想を生み出す。そういった日本の特徴や可能性を、落合陽一さんは「デジタル発酵」と名付けました。視野を固定せずに柔軟に考える方法として、7つの対立軸を提案しています。

1.デカルト(原子論)かつベイトソン(全体論)

  個々の要因を細かく理解することと、全体を見て相関関係を理解すること。AかBか、いやAでもありBでもある、両方の見方を容認しながら考える。

2.ソーシャルグッドかつディスラプター

  批判の余地のない「正義」は、時として硬直化しやすい。行き詰まった状況を打開するには、建設的な「破壊」、引っ掻き回してみる発想も重要だ。

3.集団かつ個人

  自分が所属する組織や集団に向き合って活動することは必須。一方で、私的な感性や興味を自分が再確認してこそ、自分以外の人たちに伝わることがある。

4.デジタルかつアナログ

  アナログな実体験から得られるインスピレーション、デジタルだから出来る幅広い表現や限界費用の低減、二つの間で常に行ったり来たりすることが大切だ。

5.短期かつ長期

  遠い未来を見ればこそ壮大な目標を描ける。今をいかに生きるかの先にこそ未来はある。今が未来に与える影響、未来から逆算した今、適切な中間を模索しよう。

6.理念と空気

  合理的なロジックと、あうんの呼吸。行きすぎた西洋化、悪い意味での日本人らしさ。どちらにもとらわれすぎず、それぞれの良いところを大切にする。

7.傍観者と主体者

  誰しも様々な社会的課題の全てに肩入れは出来ないが、自分ごととして取り組めない課題は、正しいと思う人を応援し、出来ることには責任をもって取り組む。

2030年の世界地図帳  あたらしい経済とSDGs、未来への展望

2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望

  • 作者:落合 陽一
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2019/11/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)