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具体的な行動の指針になる『LIFE SHIFT 2 - 100年時代の行動戦略』

LIFE SHIFT 第2巻を読んでいる自分ももうすぐ50歳。企業人としてはベテランとなりつつ、60歳以降も働くつもりであり、先々の身の振り方を当然考えます。親としても、100年時代を生きる子どもの教育は自分たちの頃とは違うだろうと思いつつ、答えはありませんでした。

第6章「企業の課題」と第7章「教育機関の課題」は、企業人かつ親である自分の行動戦略としたいものでした。

まず戦略の前提となる「年齢のインフレ」考え方が非常にわかりやすいです。

  • 物価のインフレ:1952 年のアメリカでは0.65ドルだった500mLビールは、2016 年には3.99ドルに。でも実は物価上昇率を踏まえると1952 年の 0.65ドルは 2016 年の 5.93ドルに相当。実質は1952 年より値下がりしている。
  • 年齢のインフレ:イギリスでは 1925年、 公的年金の受給年齢は65 歳以上。しかし、年齢ごとの死亡率では、今日の 78 歳と 1922 年の 65 歳が同水準だ。老化の度合い、年齢のインフレを計算に入れるなら78 歳以上を「高齢者」の基準にすべきかもしれない。

「高齢化社会」に警鐘を鳴らす主張は、暦年齢上の高齢者数の増加を強調しますが、年齢のインフレを考慮していません。老い方も変化し、長寿化が個人と社会に機会と問題解決策をも生み出しもするということを、100年時代は各自が理解して行動を変える必要があります。

100年時代に私が変えるべき行動戦略2点。

企業人として、学び続けつつ、年長者ならではの価値を発揮する

大前提として、LIFE SHIFTが訴え続ける、生涯学び続ける姿勢は必須。変化や新しいテクノロジーが好きな自分はその点はあっているでしょう。その上で、100年時代には年長者の活用が必要だ、という本書の提言は合点がいき自信を持たせてくれます。

すなわち、AI時代に人間ならではの役割として重要性が増す「人間的スキル」を年長者ならではの強みとして発揮すること、消費者としてボリュームゾーンとなる同世代に新たな価値を提供すること。

  • 長期雇用の割合が減り、転職も盛んになっている時代に、企業は働き手の学習を奨励することに強いインセンティブをいだきにくい。それでも、社員の学習を促す環境の整備には様々なメリットがあり、テクノロジーの導入でコスト効率を高めることも可能になってきている。
  • 中核事業の転換を余儀なくされた業界でも、例えば旧来の通信事業からビッグデータとクラウドコンピューティングへ転換したAT&Tも、新しい人物を採用するより、既存の社員のスキルを高めるために積極的な投資をしている。
  • ホテルチェーン経営者であったコンリー氏は、50 代半ばでエアビーアンドビーの幹部チームに加わったとき、平均年齢 26 歳の会社で自分の経験を生かして、チームの能力を最大限引き出し、会社が落とし穴にはまり込むのを防ぐことに心を砕いた。このような役割は、これから重要性を増すだろう。やがて、職場における「現代の長老」が新しい職種として確立されるかもしれない。
  • 注目すべきなのは、概して年長の働き手のほうが、テクノロジーの変化により労働市場で重要性を増す人間的スキルを備えているという点だ。高齢の人たちに担わせる役割を見直して、そのような働き手が強みを生かせるようにすることは、人々が長く働き続けることを可能にするだけでなく、企業の業績を高めるうえでも大きな意味をもつのだ。
  • 高齢の消費者も年齢による差別を受けている。企業がマーケティングデータを整理するとき、21-25 歳、26-30 歳という具合に 5 歳単位で市場を区切るケースが多いが、概して 65 歳超はすべて一緒くたにして扱われる。 その結果、急成長している「シルバー・エコノミー」を正しく理解できなくなっている。
  • 65 歳超の多くは、露骨に「高齢者向け」と位置づけられた製品には見向きもしない。雑に「 65 歳超」という層に押し込まれたくないのだ。それよりも、利便性や健康や衛生といった具体的な要素に魅力を感じる。 企業は高齢者の「楽しさ(=fun)」という要素を見落としている場合が多い。
  • 企業は、自社の人事で年齢差別を避けられれば、高齢の消費者のニーズを理解できる人材を確保できる可能性が高まる。
  • これから労働市場に加わる人よりも、労働市場から出て行く人のほうが多い。豊富な経験と結晶性知能をもつ働き手がごっそりいなくなるのだ。日本では 2012 年以降、生産年齢人口が 500 万人以上減っているが、就労者数は 450 万人近く増えた。これは、女性と 65 歳超の雇用が増えた結果だ。これらの働き手を採用し、つなぎとめられる企業は、高齢化社会でライバルと競争していくうえで大きな強みを手にできるだろう。

子供の教育は「ずっと学び続ける」チカラに重点を置く

50年以上に渡って働き続ける世代にとって大切な教育は、特定のスキルや知識を身につけることよりも、ずっと学び続けるチカラをつけること。生涯教育の重要性、若者教育からのマーケットシフトもきっと間違いないことなので、ビジネス機会でもあります。

  • 煎じ詰めれば、教育の目的は、人々に人生の準備をさせることにある。とりわけ、職に就く準備を整えることが重視されつつある。これは、労働市場でテクノロジーと教育が競争関係にあるためだ。ある人の教育レベルがテクノロジーとの競争に勝てていれば、その人の雇用と所得は安泰と言える 。
  • 既存の教育システムのままでは、人生と仕事への準備が十分とは言えない。平均寿命が延び、職業人生も長くなれば、人生で必要とされる教育の量は多くなる。しかも、人生の序盤にすべての教育を済ませるのではなく、人生のさまざまな段階で学ぶことが望ましい。生涯にわたって学び続けることを考えると、人生の序盤で受ける教育では、特定のスキルや知識を身につけることよりも、ずっと学び続けるための土台づくりに重点を置いた方がいい。
  • 私たちは、知識の獲得を目指す「生徒」から、スキルとそれを実地に適用する能力の獲得を目指す「学習者」へと転換しなくてはならない。マイクロソフトのサティア・ナデラ CEO も、「長い目で見ればつねに、すべてを学ぶことは、すべてを知っていることに勝る」と喝破している。これからの教育に求められるのは、子どものうちから、必要な情報を見つけ、曖昧で不確実な状況に対処し、発見したことを分析・評価して問題を解決する力をはぐくむことだ。これらは、人間的スキル、すなわち機械に代替される可能性が最も小さいスキルだ。
  • ニーズの変化は、教育機関が何に力を入れるべきかにも大きな影響を及ぼす。ジョージア工科大学は、 18-24 歳の層ではなく、生涯学習に取り組む人たちが学生の過半数を占める時代に備えようとしており、実際、同大学の生涯学習講座には、すでに 3 万 3000 人の「非従来型」の学生が在籍している。生涯学習の潜在的市場規模の大きさを考えれば、この分野に莫大な投資が流入しているのは意外ではない。