花も実もある楽しい読書

人生とテニスに役立つ本

『未来の年表』『未来の年表2』はこれから日本に起きる課題リスト。需要と供給のマッチングが解決策

著者でジャーナリストの河合雅司氏が書かれている通り、向こう50年の人口動態は大きくぶれることはありえません。2021年に50歳の人は約190万人。50年前は第二次ベビーブームで出生数は約200万人でした。2071年の50歳は絶対に81万人より少ないです。なぜなら2021年の出生数が約81万人だから。

なので、著者の語る将来の日本の人口予測は、基本的に非常に正しいはずです。その結果として何が起きるかについては、少々テクノロジーの進歩に対する期待が小さすぎる気がしますし、外国人労働者問題を、外国人参政権付与と一足飛びに結びつけたりするのは飛躍がすぎると思いますが、最終章で提示する処方箋は、ジャーナリストらしい、とても合理的な提案です。

本書、および続編であるパート2に目を通すだけでも知識として有用なんですが、著者が提示する「人口減少カレンダー(これから日本で起こるトピック)」や「人口減少カタログ(これから個人としてのあなたに起きること)」を、想定される課題リストと捉えて、自分なりの解決策を考えるのは、とてもいい思考の練習になります。

未来に向かうためにまずすべきこと

著者は「若者が減ると、民主主義が崩壊する」と説きます。その理由が、過疎地の高齢化や人口減少が進むと、投票所も減り、送迎してくれる若者もいないから、取り残された高齢者は「投票の機会」を奪われる、と。間違ってないのですが、優先順位が少しおかしいですね。日本の将来のための対策を打つ、民主主義を適切に機能させる、そう思ったら、若者のための政策を強化すべきだし、若者が投票するよう仕向けるべきかと。

日本の政治が、絶対数が多くて投票率も高く、当落を左右する高齢者に向きがちなのは変えがたい。しかし、投票率を高めることに「反対」する人はいないでしょう。足腰が弱いから、投票所が遠いからに投票に行きにくい人たちと、動機が弱いから、関心ごとから遠いから投票に行きにくい人たち。世代で分断する必要はなく、どっちもすくい上げるべきだし、デジタル投票の実現が、多くを解決するはず。

高齢者には難しい?いえいえ。10年後の60代は、スマホを使うことなど訳もないし、一生懸命投票所に足を運ぶ100歳は、きっと勉強してポチッとしてくれます。そういう候補者を応援したいし、教育をサポートしたいです。

「高齢者」を削減する

著者のこの表現はすごく上手いなと思います。まさに「ゲームのルールを変える」という話ですが、高齢者区分を変える、ということです。

9月の第3月曜日は「敬老の日」です。始まりは、1947年に兵庫県多可町で敬老会を開催したことだそうです。この時に招待されたのは55歳以上の村人でした。日本の国民年金制度が導入された1961年当時、平均寿命は男性65歳、女性70歳で、想定受給期間も5−10年だったようです。

今はサッカーの三浦知良選手が50代半ばでJリーグに所属する時代です。年金受給期間を何年と想定するかは、様々なオプションがあり得ますが、今の65歳はまだまだ社会で活躍できる年代ですし、活躍せねば社会も自分も回らない時代です。

65歳までは完全に現役で稼ぐ、社会に貢献する。そこから75歳までは自分の食い扶持を稼ぐ、現役世代の応援をする。その後は、年金や貯蓄も活用しながら、働くもよし、別のことを楽しむもよし、という心構えでいたいと思います。

教育は都心と地方で役割分担

18歳人口の激減は、特に地方の私立大学経営にとって死活問題だとありました。これはしょうがないですね。今やトップクラスの学力を持つ人材が国を越えて世界の大学で学ぶこともある時代。超高等教育を受けたい学生は、都心部にある希望大学を受験するのが理にかなっていると思います。

一方で、地場産業で即戦力として活躍できる高専や地方大学の学部は、非常に重要だと思います。私の元同僚は地方で家業の食器メーカーを継ぎましたが、彼の会社では、製造工程効率化のためにロボットシステムを積極的に導入しており、その開発や運用には、地元の工業大学や高専出身者が活躍しているようです。

地方ではインフラの老朽化も問題になっていますが、役所の土木課で高専出身者がメンテナンスに欠かせない役割を果たしているという記事もありました。

自分の子供たちが、何かの分野に深い興味を持つように、日々色々な問題を投げかけてみたり、体験をさせてみたいと思います。それから、自分が持つ知識を、会社の若手だけでなく、社会に還元する、役立たせるお手伝いも、できたらいいな。

人手と仕事、需要と供給のマッチング

人口減少で労働力不足が懸念されています。2021年7月の全国求人倍率は倍率は1.15倍。求職者1人に対して求人は1.15件。東北、北陸、山陰の各県では1.5倍前後あり、既に人手が足りていません。

一方で、コロナ禍、リモートワークの増加などによって地方で働きたい人が増えつつあります。情報ソースの多様化によって、東京で尖ることだけが若者のあこがれじゃないし、地方出身アーティストがストリーミングから有名になるケースも増えてる。

地方であっても、仕事にまつわる楽しさをストーリーで伝える。テクノロジーで単純作業は自動化し付加価値サービスに時間をかける。SNSを活用して細かなニーズ、遠方のニーズとマッチングして売上と給料を上げる。地方ならではの衣食住を生かしたインセンティブを用意する。ハード(建物、インフラ)は既存のものを活用して、ソフト(人、デジタル)に金をかける。

これからの時代にあったマッチングで、地方で大切な仕事に人手を連れてくる、地方で供給可能な特産品を需要と結びつける。こういった仕事はすごく楽しそうです。