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『10年後の仕事図鑑』3つのことを突き詰めること、自力x他力で問題を楽しく解決することの大切さ

2018年に出た落合陽一氏と堀江貴文氏による対談形式の本書。さらっと読んだ2年後に読み返すと、時代に私の理解が追いついたのと、私自身の変化で、メッセージがより胸に響きました。

自分のように四半世紀ほど働いてきた人間に、下記の2点は今後の働き方を見つめなおすにあたり参考になります。

3つのことを突き詰めて、AI社会も外資系生活も楽しく生き抜く

自分が強い関心があって好きだと思えることを突き詰めたり、巡りあった職を長期にわたって継続していくと、それなりに余人に代えがたいスキルになります。

それを3つ掛け合わせれば、将来にわたってもAIに代替されることはないし、いまいる会社で代替が効きにくい人材になる。いますごく納得します。

自分は25年間セリングを仕事にして、半分は市場戦略企画部=プランニングをしてきました。これらを強みとして活かしつつ、いま熱中してとりくんでいる、プロモーションのDXを突き詰めていくと、セールスxプランニングxデジタルをいう複雑性を持つことになります。

サラリーマンとしての業務はそれこそ無限にあるのですが、周囲から頼まれる順番に引き受けて処理し続けても、自分の価値を高めることにならない業務も多いし、そもそも楽しくありません。

うちの会社では年間の活動目標を5つ、上司と合意しているので、それをポストカードにして目の前に置いています。

業務に忙殺されている時に目をやると、そこそこに流しておいても目標達成にさほど影響がないことに気づいて、気分が楽になることがあります。むしろ、延長線上で目標とつながるような、楽しい仕事に熱中して時間をかけた方が、会社にとっても価値が出てくるでしょう。

子どもにも、これからの時代、自分の好きなことを複数突き詰めることで、楽しみながら食っていけるはず、そういう選択の仕方があると、どこかで伝えたいと思います。

複雑性の高い職業を掛け持ちしている人材は、機械に代えるのが非常に面倒だ。コストを割いて機械に代替するほど、経済的なベネフィットが働かないからだ。つまり、時代の進み方とともに、あらゆるものがコモディティ化していくことに対して、学び続けていく価値が一番高くなる。手前味噌だが、僕(落合陽一)の職は非常にわかりやすい例だ。僕は教育者と研究者と経営者とメディアアーティストという、ニッチな4つの職業を掛け持ちしている。この4つの職業を成立させるのには、それなりの労力がかかる。教育と工学研究とベンチャー経営とメディア技術を用いた芸術という異なる軸を並行して行なえる機械なんて、開発すること自体がそもそもコストだ。すると、「それなら落合にやらせておけ。体力がもつかわからないけど」といった具合になる。その上、仕事をするたび学ぶことも増えるから、より学ばないといけない。勉強しながら走り続けるには向いている組み合わせである。つまり職業・職能を考える上で、最終的に「ある市場や経済圏の中で、その人しかできない状況をつくる」ことが重要なのだ。

教育改革実践家で元リクルート社フェローの藤原和博氏は、「100万分の1のレア人材になろう」というお話をよくされる。レアな人材には価値があるから、AIに代替されることもない。とはいえ、一般的に考えて、100万分の1なんてオリンピックの金メダリスト級の確率だ。普通に暮らしていても到達できっこない。だが、「100分の1」だったらどうだろう?学校のクラスで考えると、2~3クラスくらいだろう。好きなことに夢中になっているうちに、100人の中で1番になるのはできる気がする。あとは、まったく違う2つの分野でそれぞれ「100分の1」を目指せばいい。そうすれば、合計3分野を掛け合わせて「100分の1×100分の1×100分の1」で、「100万分の1」の人材になれるというわけだ。そうすれば、「ある経済圏の中で、その人しかできない状況」になっている。君と同じ価値を持っている人間はどこにもいない。こうした考えのもと、僕(堀江貴文)はよく、「遊びのプロになれ」と言っている。単純労働はおろか、経営者の仕事ですらAIに代替されるかもしれない時代において、もはや「本気で遊ぶように働く人」だけが生き残っていけるからだ。

マイケル・A・オズボーン准教授が発表した論文『雇用の未来─コンピューター化によって仕事は失われるのか』を参照し、「今後なくなる仕事」に触れたが、実際のところ、そういった一般論は気にしなくていい。仕事は1つだけではないし、これからはどんな働き方をしてもいい。さらにいえば、堀江さんが言うように働かなくたっていいかもしれない。好きなことをやって、その体験を価値に変えていこう。この考え方はアーティスト的だ。実際、僕もたくさんの仕事をしているが、そのどれもが趣味みたいなものだ。そうやって気になること、好きなことに手を出している間に自分の中に価値資本が貯まっていく。技量不足はテクノロジーが補ってくれるから、すべてにプロレベルのスキルを持つ必要もない。

これから「なくなる仕事」と「生まれる仕事」をいくつか提示したが、あくまで参考程度にしてもらって構わない。堀江さんが言う通り、「なくなる可能性」なんてものは血液型占い程度の信憑性しかないと考えている。本質的に重要なのは、「価値ある仕事に就く」のではなく、「価値ある仕事を創出する」主体性だ。

重要なのは「楽しさ」だ。僕は、これからの幸福の指標は「感情のシェア」だと考えている。「楽しい」「うれしい」「気持ちいい」といった感情をシェアすると、そこにたくさんの賛同者が集まる。賛同者との間に信頼関係を築くことが出来れば、お金はいつでも生み出せるようになる。むしろ、お金なんかなくたって、仲間が君を助けてくれるようになる。 

テクノロジーx人、自力x他力で問題を楽しく、速く解決する 

2050年の日本の人口予測は約1億人。国内市場は顧客数が2割減少します。さらに65歳以上の高齢者比率も現在の30%弱から38%近くまで上がる一方、介護に携わる人は減少し続けます。

それだけ考えると不安が先行しますが、テクノロジーを活用して、供給者側が毎年1%生産性を高めるだけで、20年後には3割以上高くなっているので、対応できる可能性は十分にあります。

さらにはテクノロジーを使って、受益者側が生活力を高めていければさらに豊かな暮らしが出来る。高齢者自身が介護を必要とせずに自活することも、生産者として現役期間を長くすることもできる。介護される人生より間違いなく楽しい。

特にこのテクノロジーを使って受益者側を楽しくする、というビジョンは今後のあらゆるビジネスですごく大切になってくると思います。

また、インターネット時代のオープンイノベーションは、自力に加えて膨大な他力が加わることで、よりよくなる速度が加速していきます。Wikipediaが世界中の人によってそのコンテンツを充実させていくように。

私が勤めるようなメーカーと小売といった企業間の関係でも、2社間でデータや仕組みを囲い込んでいても出来ることには限界があり、例えばDX実装のために専門性を持ったベンダーやプラットフォーマーと協働することでイノベーションが実現しやすくなります。

会社の中でもマーケティング、ファイナンス、IT、リーガルといった様々なスキルを持った他部署と効果的に、速く連携する。大なり小なりのイノベーションを生み出すことが大事になる世の中において、他者に傾聴して自力を高めたり、自力の足りない部分をさらして他力に助けてもらう、そういったスキルは今後ますます重要になるでしょう。

超高齢化社会に移行しつつある日本で懸念されるのが労働力の不足だ。その解決策に、テクノロジーによる労働力自体の増加がある。まずはそういった業界に対して無人化による進化圧を一気にかけ、効率化、機械化を図る方法があるだろう。

もう一つは、そもそも受益者側の性質と技術を用いて改善することだ。「人とコンピュータを融合させる」考え方が、それにあたる。たとえば、歳をとって足が悪くなったとしても、自動運転の車椅子があれば、スムーズに移動ができるし、視力が弱くなったとしても、自動補正する高性能のメガネがあればいい、という視座だ。最終的には、パワードスーツのようなイメージで、しかも、体と同程度のサイズ感で、足や手と同じような機械を身につけて、生活することも可能になるはずだ。最初は高価格だとしても、富裕層から普及して、やがては一般の人の手にも届くようになるだろう。もちろん医療もさらなる発展を遂げるであろうが、そこに情報科学を用いた「技術によって元に戻す」といったアプローチも加わるようになるのではないか。そうなれば、工学的なアプローチで要介護者の数も減り、若い人と同じような仕事をすることも可能になる。つまり、高齢化問題の一番大きな部分が解決され、さらには人材の確保にもつながる。

インターネットがたった20年で世界を変えることができた理由には、1つに、オープンイノベーションがある。これは、シンプルに説明すれば、誰かが書いたプログラムを、会社や国の枠組みを超えて、誰でもが使えるようにするライセンスや権利の考え方だ。おかげで、皆が過去に書いたプログラムを再利用することができるようになり、それを使って技術者たちは指数関数的にインターネット上のアプリケーションを進化させることができた。オープンイノベーションの世界では、1度ノウハウが体系化されれば、そのノウハウは失われにくい。常に過去のノウハウを下敷きに、よりよいプログラムに上書きされる。現在よりも、レベルの低い開発環境に向かうことは少ない。つまり、人がプログラムを書けば書くほど、デジタル空間は便利になっていくだろう。その世界観がその都度、更新されていくのだ。

10年後の仕事図鑑

10年後の仕事図鑑