花も実もある楽しい読書

人生とテニスに役立つ本

『日本沈没』重い問いにしびれたのち、一周まわって楽観的になった原作

タイトルはみんな知っている1973年発刊の古典的なパニック小説。平成の震災を経験し、気候変動が大きな社会問題となっている今、2021年のドラマの原作にもなりました。ストーリーの枝葉は大きく変わっていますが幹は同じかな。原作を読んでみると、半世紀前に描かれたにもかかわらず全く色褪せずに胸に迫ります。

手に取るまでは、昔見た映画ポスターのイメージか、天変地異や都市の崩壊などのリアルな描写が中心の小説かと勝手に思い込んでいました。実際に描かれていたのは、国土が失われんといった緊急時に組織や人はどう動くのか、よって立つ土地を失った民族はどうやって生存していくのか。非常にシリアスな問いを投げかける本です。

出来る最大限のことをしたとしても、全国民を救うことはかなわない。それでも何をすべきか。そんな重すぎる問いに立ち向かう人々の物語は胸を打ちました。

すごく逆説的なのですが、衝撃を受けた読後から一週間すると、思わぬ楽観的な感想も湧いてきました。本書では日本人が想像できる最悪の自然災害、破局に向かう過程が描かれていきます。つまりは鏡合わせで、最悪のフェーズに至るまでの各段階で粘り強く生活を送る日本人が描かれています。

小説を読むことの素晴らしさのひとつは、『ドラえもん』のもしもボックスのように、もしもの世界を疑似体験できること。向こう何十年かの間に南海トラフ地震や富士山噴火の発生は避けがたく、その惨状は計り知れないと言われます。

でも「日本沈没」で描かれた日本人は、想像を超える災害の中でも生き抜こうとしていた。私たちは、きっと乗り越える道を見つけられるんだろう。そういう希望を与えてくれます。

だから出来るだけ準備はしておこう。そう思って、Amazonでタンスの固定具をポチりました。

日本沈没 決定版【文春e-Books】

日本沈没 決定版【文春e-Books】

  • 作者:小松 左京
  • 発売日: 2017/07/26
  • メディア: Kindle版