人の死を描いて、こんなにも生への希望を感じさせる小説はすごいです。
あなたの余命は半年です―ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。だが、副院長・福原は奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない。対立する二人が限られた時間の中で挑む戦いの結末とは? 究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか? それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ誕生!
生を全うする。本書の作品紹介や表紙のイラストにも描かれている二人の医者は、どちらもそのために心底から患者に向き合い、全力を尽くします。ただしアプローチが全く違うのです。
患者は自らの生を真剣に見つめて、限りある生をどのように生きるかを考えるべきだとして、自らも極限まで正直に患者と向かい合おうとする桐子医師。
人間は与えられた生を最大限燃やし尽くすべきだと考え、人並外れた外科手術の技量とエネルギーで病気に立ち向かい、克服に情熱を燃やす福原医師。
真摯で、全く違う二つのアプローチをめぐり、作中では医者が対立し、患者が迷い、読者は共感と反感を覚えます。そこに現れるもう、ささやかではあるけれども大切なもう一つのアプローチが、医者と、患者と、読者を結びつけます。
クライマックスを人前で読むと、涙を我慢するのに苦労すると思います。各章のタイトルも、「第1章 とある会社員の死」「第2章 とある大学生の死」「第3章 とある医者の死」と、死をテーマに、死に向かって進む物語ですが、生への希望にあふれ、意欲が湧いてくる素晴らしい小説です。
第1巻を気に入られた方は続編もぜひお読みください。