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『ドラえもん ひみつ道具大辞典』あの道具の精神は2020年時点でここまで実現しています

40年前、私が子供のころから版を重ね続ける『ドラえもんのひみつ道具大辞典』。

成毛眞氏が『アフターコロナの生存戦略』で、成長事業を見定めた投資判断をしたかったらSFを読め、『ドラえもん』の世界も実現しつつあるものは少なくない、と書かれていて思い出したのですが、私のデジタルツール好きはドラえもんにルーツがあるのかもしれません。藤子・F・不二雄先生は、本書でこうおっしゃっています。

ドラえもんのひみつ道具にはレンタルとセルの二種類があります。

あまり高価な道具は買えないので、安い使用料で貸してもらいます。ドラえもんは三分の二ぐらいをこのレンタルで間に合わせているのです。

それにしても、20世紀のぼくらから見たら、夢みたいに便利な道具をいくつも持ち歩くなんて、よっぽどドラえもんは金持ちなのかと思うのですが、そうでもないのです。

例えば今はどこの家庭にもある車とかテレビとか電卓とか、あれだって昔、売り出されたばかりの頃は、普通の人にはとても手が届かないほど高価な品だったんですよ。それがどんどん安く売れるようになって、将来はもっと安くなるでしょう。

ドラえもんのひみつ道具にはレンタルとセルがあり、テクノロジーの進歩とともにより手に取りやすくなる。『インターネットの次に来るもの』の中でケヴィン・ケリー氏はこのように語ります。

利用するものを所有する、ということが年々少なくなっていく。所有することは昔ほど重要ではなくなり、一方でアクセスすることは、かつてないほど重要になってきている。

四次元ポケットを持つドラえもんが、所有よりもアクセスを重視するのは非常に合理的で、藤子・F・不二雄先生は、21世紀のサブスクリプションや限界費用が低減する社会を見越していたように感じます。さすがです。

我々があこがれたひみつ道具はどこまで実現しているのか。8つのひみつ道具について、2020年12月時点のテクノロジーで、物理的、概念的な面から考えてみました。

タケコプター

  • 気軽に空を飛ぶことができる道具。体のどこにでもとりつけることができる。連続八時間以上使うと、電池切れを起こしてしまう。

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タケコプターって、多分ヘリコプターじゃなくてドローンに近いんですね。

ヘリコプターとドローンの違いがわかりますか?答えは「自律性の有無」です。

ヘリコプターは操縦者がコントロールします。機体の安定を含めて操縦者にすべてかかっています。一方ドローンは、GPS、電子コンパス、加速度センサーなど、電子制御技術により、ドローンだけでの自律飛行が可能です。

4つの回転羽で飛ぶラジコンが「ドローン」だと思っていましたが、あれはヘリコプターなんですね。で、結構操縦が難しい。落っこちたり、ぶつかったりはあたりまえ。あれが生身の人間だったら、一巻の終わりです。

下の写真は、中国の自律型航空機技術企業であるEHangが、2020年7月に行ったドローンの観光試験飛行の模様です。

事前インプットされたルートに沿った電子制御での飛行なのでパイロット不要。観光客が一人で遊覧飛行を楽しめます。

一人で空の旅を楽しむ、という観点では実用化が近づいています。タケコプターも、自分で操縦するというより、思った地点に連れて行ってもらう、という仕組みなら、安全に飛べるんでしょうね。

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タイムマシン

  • 過去と未来へ自由にいくことができる乗り物。

 13.タイムマシン - ドラえもん ひみつ道具完全大図鑑

 一般相対性理論によると、速く動くものは時間の進み方が遅くなるそうです。光の99%の速さで1年間移動して帰ってくると、7年後に到着。つまり6年後の未来に着くらしい。速さにマイナスはないので、過去には行けないらしい。

でも「過去を見に行く」ことならGoogleで出来ます。Googleマップのストリートビューは定期的に画像が更新されているのですが、「タイムマシン」という機能があり、その地点で撮影された過去の画像も参照できるのです。

私も、昔住んでいた家がいつなくなったのかを見ることができて面白かったです。日本国内だと過去10年ぐらいまでのものが主かもしれませんが、数十年後になると、世界中のいろんな場所を遡って見に行くことができるんでしょうね。

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どこでもドア

  • ドアを開くだけで、どこへでも行くことができる。

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新型コロナ感染症に世界が覆われた2020年、ビジネスの世界ではオンラインで会うことが当たり前になりました。

朝の身支度を済ませて、パソコンがある部屋のドアを開ければ、そこが仕事場。「どこでもドア」が出来たかのような変化です。

技術とメンタルの面で障壁がありましたが、TEAMSやZOOMが多くの企業で使われるようになり、対面を避けるニーズが高まりと共に、一気に浸透しました。

ビジネスの場合、会社に行くこと、商談で会うことは必ずしも目的ではありません。そこで業務を進めること、話し合って決めることが目的なので、コロナ禍が過ぎ去ったとしても、通勤や出張に対する考え方は変わると思います。

一方、個人の世界では、科学の進歩がもう少し必要でしょうね。

家族や友人に会うこと、旅行に行くことは、会うこと、行くこと自体が目的。今のパソコンやスマホのスクリーン越しでは物足りないし、VRゴーグルをつけた体感はナチュラルさに欠けます。

とはいえ、「VRゴーグル的」な体験が、もっと気軽に、もっと自然にできるようになると、それはどこでもドアを通じた世界に近づくのかもしれません。

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ほん訳こんにゃく

  • これを食べれば、日本語が外国語に、外国語が日本語に聞こえる。

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スマホの翻訳ツールの性能も上がり、片言の意思疎通でよければ、十分実用化つつあります。ほん訳こんにゃくのように、同時通訳をこなれたレベルで実現するにはもう一息でしょうか。

一方、文字変換であればビジネスでも使い勝手のいいレベルまで来ています。

DeepL翻訳は、深層学習を軸に、ドイツのケルンで言語向けの人工知能システムを開発している企業が提供するWEBサービス。無料版でも、日本語の文章をコピー&ペーストで貼り付けると、かなり自然な英語に変換されます。

外国人社員にそのままでも通じるレベル、少し手直しすれば外資系の社内資料にも使えるレベル。自分で訳すよりだいぶ楽で、Google翻訳よりだいぶこなれています。

スモールライト

  • このライトの光を浴びせると、どんなものでも小さくなる。

スモールライト | ドラニュー

 既にある物質を小型化する。この観点では実現が難しいスモールライトですが、身近でどんどん小さくなったのがデジタルを使った機器ですね。

手元にあるiPhone 12 mini。13.2 x 6.4 x 0.7cm、133gというサイズの中に、2020年段階では最新のスペックが詰まっています。『ドラえもん』が世に出た1969年の機器と比べてみましょう。

当時世界最高のスーパーコンピューター「CDC7600」。オフィスの一部屋ぐらいのサイズですね。処理速度を表すクロック周波数は36.4MHz。iPhone 12 シリーズが搭載しているA14 Bionic チップは、3.0GHz。およそ82倍の速さです。

手のひらに収まる躯体の中に、のび太の家にもあったブラウン管テレビ、オーディオセット、カメラ、黒電話も収まってしまいました。藤子・F・不二雄先生がおっしゃったように、科学が進歩して、機器はどんどん小さく、安く、高機能になり、省エネルギーにもなってきているのは、すごいことですね。

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ムードもりあげ楽団

  • この楽団が演奏する曲によって、人間の感情がもり上がったり、沈んだりする。

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ネットやスマホの普及によって、何かをしながら音楽を聴くことが容易になりました。2020年は自宅内勤が増えたので、アレクサに、「仕事がはかどるJazzかけて」と声をかけて、音楽を聴きながら仕事をすることがあります。

音楽は、勉強や仕事の効率に影響を与えるのか?和歌山大学教育学部の「計算課題の遂行に及ぼすBGMの影響について」という研究結果があります。

BGM は計算課題の作業量や疲労感、作業に対するやる気などには影響を与えないが、作業に対しての印象には影響を与えている。

BGM がない場合と比べて、高揚的音楽を用いた場合は作業が「集中してできた」「リラックスしてできた」と感じ、抑鬱的音楽を用いた場合は作業が「つらく」感じ、高揚的音楽と比べて「長い」と感じる。

音楽による気分誘導の結果と考えられる。 

 おそらく個人差があるでしょうが、ながら勉強も人によってはもありかも。


自動買い取り機

  • 品物を入れると、それを買い取ってくれる。でも、品物が古いと、安くしか買い取ってくれないぞ。

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質屋、古本屋、ヤフオクからメルカリと、不用となった所有物を換金するサービスも進化しました。時代は徐々に「所有」自体を不要にしつつあって、ひみつ道具の先を行き始めているのかも?

のび太のパパはレコードを聴くのが趣味で、立派なオーディオセットとレコードを購入していました。2019年の世界の音楽市場は2兆1530億円。そのうちの56.1%が定額配信サービスだそうです。

面白いのは、2020年上半期、アメリカではCDの売上をレコードが再逆転したこと。デジタルの音なら配信でよく、アナログな音が好き、レコード盤が好き、というニーズが高まったのでしょう。

これからの所有はフィジカルである必要性のあるもの、個人的に愛着があるアナログなものに絞られるかもしれません。

もしもボックス

  • 「もしもこんな世界だったら」と、電話で話すと、本当にその通りの世界になる。

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私にとってのもしもボックスは「読書」。

ドラえもんが「一種の実験室」、と言っているように、もしもボックスは、現実世界を変えるのではなく、もしもの世界を体験させてくれる道具。

魔法の世界や、過去、未来。自分と違う職業、年代、性別。新たな経験、行ったことのない場所。より深い思索、日常とは違う感動。探せば無限のバリエーションがあり、自分一人では到底味わえない体験、得られない知識を与えてくれます。

年の瀬にドラえもんのひみつ道具について考えていたら、改めて読書の楽しさ、大切さを思い出させてくれました。

 

ドラえもん最新ひみつ道具大事典 (ビッグ・コロタン)

ドラえもん最新ひみつ道具大事典 (ビッグ・コロタン)

  • 発売日: 2008/08/29
  • メディア: 単行本