26. 20歳の自分に受けさせたい文章講義 古賀史健 <文章で人を動かす>

 何のために文章を書くのか。それは動いて欲しいから。相手の心を動かしたい。社内の人と合意したい。未来の自分を変えたい。だから。

 「いい文章」とは、「読者の心を動かし、その行動までも動かすような文章」のことである。

 日記やメモなら読者などいない、そう思うかもしれません。しかしながら、今ではない自分が読み返した時に、自分の心を動かしうる文章になっているか。そういう意味で、全ての文章には読者がいて、いい文章とは、読者を動かす文章だと言えるのです。

  本書では、読者の心を動かし、その行動までも動かすような文章を書くためのテクニックを4つ、教えてくれます。その前に前提として必要なものがあります。それは己の「主張」。自分が伝えたい主張がないということは、すなわち自分が何処に行きたい、人をどう動かしたい、それが自分でわかってないということ。これでは「いい文章」になりうるはずもありません。

  まず自分が伝えたい主張を明確にする。そして「主張、理由、事実」という3層構造で肉付けし、論理をまとめる事が大切だそうです。これは、2018年のベストセラーである「1分で話せ (伊藤羊一)」の、「結論、根拠、たとえば」で相手の右脳と左脳を動かせ、いうキーメッセージと同じ。ちなみにどちらの本も掲げるゴールが「相手を動かす」という点も同じ。思いを伝える、人を動かす文章を書く、コミュニケーションを行うために、本当に大切なポイントだと思います。

 

   そのポイントは常に押さえた上で、いい文章を書くために本書が教えてくれる4つのテクニックを、実践していくと良いでしょう。

 

第1講  文章は「リズム」で決まる

リズムの悪い文章とは、端的に言えば「読みにくい文章」のこと。

文と文の「つなげ方」や「展開の仕方」がおかしいとき、その主張は支離滅裂になり、リズムよく読めなくなるのだ。

文章のリズムは「論理展開」によって決まる。

心を動かす文章。そのために一番大事なのはレトリックではなく、読みやすいこと。文と文が正しくつながり、論理の展開がわかりやすいこと。

美文よりも正文を目指しましょう。なぜなら文章本来の目的が「伝える」ことだからです。佐藤多佳子さんの音楽小説に、「情感豊かに吹くことと、正しい技術で吹くことは、違う作業じゃない」というセリフがあるのですが、書くことも全く同じで、正しい論理展開で書く事で、スムーズに頭に入り、情感も流れ込んでくる文章になるのでしょう。

 

第2講 構成は「眼」で考える

 読ませる。そして伝える。そのための文章は、二つの三段構成に気をつけて。

まずは全体構成。文章には常に読者がいます。そしてブログでも書類でも、読者は常に「読まない」という選択肢を持っています。彼らに読んでもらうために、映画の全体構成を参考にしましょう。

導入、本編、結末。導入は「映画の予告編」のつもりで

文章を読んでもらうために、まず導入部分では映画の予告編のように、興味を持ってもらうことが大切。①インパクトのあるキーワードや結論を提示、②核心部分を気になるところで寸止め、③骨子・サマリーを最初に紹介、といった方法で、読み手の立場にたって、興味が持てるように客観的に伝えましょう。

そして本編で伝えるのは、自分の主張。ここは思い切りズームインして思いを伝える必要があります。

結末では、再び客観的な視点からまとめなおし、自説を「風景の一部=動かしがたい事実」として描くわけです。

 

次に、主張をしっかり伝えるための論理構成。論理とは、「論」が「理」にかなっていること。論=主張がなければ文章を書く意味がない。理=理由がなければ、立派な主張も中身が空っぽ。当然主観的である主張は、客観的な「事実」に裏打ちされることで、意見の正当性が増すわけです。

主張、理由、事実。マトリョーシカのような3層構造が守られているのが、論理的文章なのである。

 

第3講 読者の「椅子」に座る

  コミュニケーションを通じて相手に動いてもらう。そのためには相手の立場に立って考えること、とはよく言われることです。筆者は、読者の隣に「立つ」だけでなく、読者と同じ椅子に「座ること」、同じ目線で景色を見て、読者に伝わる言葉で書くことが必要だと言います。そのためのコツを教えてくれます。

 まず、全ての読者と同じ経験が出来るわけはなく、我々が本当の意味でその椅子に座れる読者は二人だけ。「あのときの自分」と「特定のあの人」。

 自分が伝えたい主張を、それを知らなかった昔の自分に伝えたい。あのときの自分が何に悩み、だからこそ今の自分が伝えたい情報がどう役に立つのか、どう伝えれば納得するのか、自分には手に取るようにわかるはず。その思いを乗せて書かれた文章は熱量が違う。言葉の強度が違うのです。

 10人読者がいれば10通りの読み方があります。だからといって、「多数派」を想定して、主張を抑えて、表現をぼやかしてしまっては、エッジのない面白くない文章になってしまう。「特定のあの人」を想定、設定する。その方が、言葉のベクトルがはっきりするため、「その他の人々」にも伝わりやすくなります。

 専門性に溺れた文章は、読者の予備知識に甘え、説明すべきところを説明しようとしていません。読者に甘え、本来やるべき説明を怠っているから、読みづらい。少しでも理解のパーセンテージをあげていくよう、ブラッシュアップする努力を怠ってはなりません。

 読者を「説得」ではなく「納得」させる。押し切るのではなく、読者に歩み寄ってもらう。人は他人事では動きません。こちらの主張を読者の関心と関連づけることが必要。実務の文章であっても、読者に一方的に「知識の球拾い」を強いるのではなく、読者に「仮説」を投げかけ、一緒に「検証」してもらうことでプレーヤーになってもらいましょう。

 自分が己の主張が正しいと思いいたるまでには試行錯誤があったはず。それをすっとばした「寄り道」のない一本道の主張は、読者には「納得」しがたいものがあります。文章の中で、自分にツッコミを入れる。流れとしては、主張、理由、反論、再反論、事実、結論、というように。読者の疑問にしっかり答え、キャッチボールを楽しみましょう。

 

第4講 原稿に「ハサミ」を入れる

 文章の入り口には、「元ネタの編集」という作業があります。

まずは頭の中の「ぐるぐる」を紙に書きだす。偏らないように、最初に出てきた傾向を持つキーワードと、それ以外のキーワードを出し尽くす。そこから、「何を書かないか」を決める。

 文章を書き終えてからは、「推敲」という編集作業になります。

推敲とは「過去の自分との対話」である。自分の文章にツッコミを入れ、時にほめながら読み進めていく。その際に「もったいない」は禁物。読者は書く時の悩んだ量ではなく、文章に評価を下す。各文が矢印でつながる図になりうるぐらい、論理的であるかをチェックする。

 

「いい文章」とは、「読者の心を動かし、その行動までも動かすような文章」のことであり、正しい技術で書けば、情感も含めて流れ込んでくる文章になる。伝わる文章を書く力を身につけて、自分の思いを実現していきましょう。

 

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

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