花も実もある楽しい読書

人生とテニスに役立つ本

『超AI時代の生存戦略』落合陽一 コロナ後の人生をいかに生きるか

    「AIは職を奪うのではなく、テクノロジーの普及によって、人間が活躍すべき分野が変化するだけ」。100年前は日本人の5割以上が農業、林業、水産業に従事。今は5パーセント。大きな時代の変わり目である現代、100年たたずとも労働分布が変わるのは当然のこと。コロナ禍を経てさらに急速に変化する今、何を意識して行動すべきか。科学、ビジネス、アートと幅広く活躍する筆者の提言は示唆に富みます。

2016年にイ・セドルを囲碁で打ち破ったのは、実は機械ではない。囲碁の専門家ではないが、コンピュータ親和性の高いエンジニアリングの専門家と、人類がインターネット上に蓄積した集合知によるコンピュータプログラムが打ち破ったのだ。

 「人間対機械」ではなく、「人間対機械を操る人間」の争いに。化粧品部門の企画担当だった頃、AIを使ったサービス導入を発表すると美容部員から「自分達はいらないのか」と心配する声が出ました。人間によるサービスは必要、ただし、機械を操る人間の方が圧倒的に効果的なサービスが出来る。「コンピュータ親和性の高い」人間でないと、淘汰されてしまう。そうならないように、理解を深めてもらう必要がありました。

これからは、「ワーク“アズ”ライフ」を見つけられたものが生き残る時代だ

 ワークライフバランスという言葉は、ワークとライフを別のものとしてバランスをとろうというもの。いつでもどこでもスマホやPCで繋がり、いつでも仕事とプライベートが混在するようになった今、ワークがライフでない時点で、「ワークライフバランス」という言葉は実生活と矛盾する。過去のサラリーマンワークを突き詰めると、他の生活とアンバランスになりました。「自分」のスキルアップにはつながっても「父親」、「夫」など、他にも果たしたい役割や使いたい時間があるのが普通ですから。その時点でベストなワークではなかったのでしょう。いま、オリンピックやサステナビリティの企画担当になって、ワークとライフの興味が連動しているし、ワークスタイルも家で家族と過ごす時間が長くなって、ワークアズライフが身近になりつつある。

 ワークアズライフでバランスを求めるものは、「ワークとライフ」ではなく「報酬とストレス」だという。仕事のストレスは仕事内で解消する。休日の趣味が仕事にもつながる。働く時間と休む時間ではなく、ワークの中で、ストレスのかかることとかからないことのバランスをとる、ということ。実際、楽しい仕事はストレスではないですからね。

ギャンブル・コレクション・心地よさ

 遊びの中で、自分が何をすれば喜ぶか。人間にとっての「報酬」には3つあって、射幸心としての「ギャンブル的な報酬」、収集欲としての「コレクション的な報酬」、より体感的な「心地よさの報酬」。これら3つの報酬が仕事の中ににあれば、継続性を生む、と。

 「ギャンブル的な報酬」は、うまくいくかどうか、ドキドキしてテンションがあがること。営業で商談が成功するかどうか、はわかりやすい例。ワークプランの中に、常に5分の1、新しい試みを入れてみる。スロバキア人の上司が、同じことを続けているとラーニングカーブが下がってくるから、必ず毎年のコア業務に一つ組み込んで上司と合意していると教えてくれました。今年は自分達で考えたサステナビリティのテストプロジェクトを、定番企画までに拡大、定着させることに、大きく賭けてみようと思います。

 「コレクション的な報酬」は、積み上がっていることを「見える化」することが大事。成果や進捗を可視化させたり、わかりやすくすることが必要になる。そうするとゲーム的に続けやすくなるし、他人にアピールすることができるようにもなると。データが膨大になりスマホのインターフェースも進化した今、直感的にわかりやすいトラッキングツールは、人のアクションを促す有効な武器になるはずです。身近なところでは、自重トレーニングの進捗をスマホ内にグラフ化したところ、モチベーションになってます。

 「心地よさの報酬」は、「じゃあ、五感をしっかり使っていこう」となるわけで、「おいしいものが食べられる場所に出張に行こう」とか、「気持ちよく作業が出来るツールだけで仕事をしよう」などということを意識してやっていくべきだと。自分が喜び、社会を喜ばせる。「社会の喜び」といっても無理に喜ばせることはなくて、遊びにおいては、まずは「自分がよければいい」というところが重要。自分が何で喜ぶかだけを最初に押さえ、そこからの完成物を磨いていくこと。そこまで行けば社会も喜ぶ。

時代の速度より遅い進捗、いくらやってもゼロになる

 今、インターネットの普及で、他人がやったことはすぐに学習、コピー可能に。年功や資格の優位性はどんどんテクノロジーに置き換えられ、そういった機能は「リストラ」されてしまう。機械で代替できる「ムダな時間」はどんどん省かなければならない。そうして自分が一番精通しているニッチを淡々と深め、ブルーオーシャン(未開拓な市場)を拓いていく。人間は、時間や締め切りに追われる。これからは締め切りに終われる慣習の一つ一つに対して、「そんなことをやって何の意味があるんだ?」と敏感になって、ツール、機械のサポートをなるべく使って、自由な時間、遊びの時間を稼いで行くべきだと。機械によって置き換え可能ないろんな「中間工程」がどんどん不必要な作業になっていく。自分がこのまま同じことを繰り返しても意味がない。「ツールを使う」「中間の工程をあまり気にしない」「機械にできることを極力やらない」。そして好きでないことを極力やらない。その分、自分が個人的に好きな仕事、若い子達がもっと力を発揮出来るように導いたり、新しいツールや仕組みを定着させることに時間を使います。

ストレスフリーになろう

 仕事で溜まったストレスを違うことで発散していたとしたら、その仕事の選び方は間違っている。理想的なのは、仕事で溜まったストレスが仕事の中で報われて、仕事の中でストレスから開放される、仕事内で完結してしまえること。自分にとっての報酬が何かを踏まえて、「ストレスが解消できる場所」と「ストレスが溜まる場所」を明確にしておくと、意識的にバランスがとりやすくなる。

 また、「他人と比べない」ことも重要。奥さんが自分とよその夫を比べるのはコントロールできないが、自分で自分をよその夫と比べていいの悪いのと奥さんと言い合うのは無意味。自分が家庭内で、ストレスが解消できる時間と溜まる時間のバランスが取れているかどうかが大事。そうしてバランスをとっていると、ツノ付き合わせること自体が減ります。

    体を鍛える、体を動かすことは今後より意識が必要。なぜなら中間工程が省かれる中で、通勤や外回りなどの「肉体労働」も減り、意識しないと体を動かさなくなってしまうから。コロナ禍を経てみな納得のトピック。ストレス自体が適切な睡眠によって解消、減少するのも事実。自分の報酬系を大いに刺激する、テニスの試合、筋トレのスコア化、いい睡眠をとりたいと思います。

土地の価値は、人の移動が民主化したときに大きく変動する

 本書においては、自動運転がはじまると、会社までの出勤が楽になるから家の場所はどこでもよくなるとか、移動コストが安くなるので電車だと多少通勤に不便でも安くて広い家もあり、というトピックでした。コロナのいま、移動しない在宅勤務が当たり前になって、一足飛びに現実味を増しました。癒される自然環境など、自分の好きな環境に身を置くことを優先していきましょう。

変動しない財になっているものや浪費されていくものは、今後価値を持たない

 お金を使う時に「投資」という概念があったほうがいい。株式投資やFXなどではなく、広い意味での投資だ。人にご飯をおごることも広い意味での投資だ。だから、自己投資にどんどんお金を使っていいだろう。貯金という形でプールすれば、増えもしないし減りもしない。自分の能力やチームにお金を使えば、それは増えているようなものだ。自分の好きなこと、自分の大切な人、面白い体験には、丁寧かつ積極的にお金を使っていこう。

超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト

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