この長い物語を何度読み返したか分かりませんが、いくつになっても面白い。そしてこの年になったからこそ、胸に響く一節と思うことも。３巻からはこちら。
歴史家を志していたヤンの信念。ペンは剣より強し。
剣よりペンが絶対に強い、と信じるヤンであった。真理などめったに存在しない人間社会で、これだけは数少ない例外だと思っているのだ。
ルドルフ大帝を剣によって倒すことはできなかった。だが、我々は彼の人類社会に対する罪業を知っている。それはペンの力だ。ペンは何百年も前の独裁者や何千年も昔の暴君を告発することができる。剣をたずさえて歴史の流れを遡行することはできないが、ペンならそれができるんだ
2022年はロシアのウクライナに対する侵略戦争が起きています。35年前はペンといえば歴史であり、報道でした。
今はそれに加えて、SNSという、報道とは別の情報伝達ツールも浸透しました。ロシア軍の行動が、SNSを通じて拡散されていきます。
人間社会は少しずつしか進歩していかない。剣で斬り合ったり、SNSで傷つけあったりもする。しかし、歴史を刻み後世に残す。報道を通じて訴えかける。SNSを通じて今を伝える。蓄えられた知識、知恵は、少しずつ人を、社会をよくしていく。
剣のように一撃で変えられはしないけれど、容易に斬れないものですら時間をかけて変える力は、ペンにこそあるのだなと思いました。
