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人生とテニスに役立つ本

『94%の顧客が「大満足」と言ってくれる私の究極のサービス』デジタルと戦略と温もりを掛け算できたら響くんじゃないか

いま仕事で販促のデジタル化をリードしています。どのような販促が問題解決につながるか。そういった戦略的な考え方には強い会社なので、1to1アプローチに強いパートナーと、効果的に一緒にソリューションを作っていこうとしています。

元CEOが「Consumer is boss」と語ったように、戦略的にお客様ニーズを第一に考えなくてはならない、と頭では分かっているつもりですが、自分の心の底から身についてないとも思います。

高級化粧品部門の営業支店長時代にこの本を買いました。日本では2004年出版で、アメリカのニューヨーク郊外に2店舗を構える衣料品店CEOのおじいちゃんが、顧客満足をもたらす秘訣を教えてくれます。

とても古式ゆかしき、ベタと言われる内容かもしれないのですが、デジタル時代だろうが、人が求めるサービスの本質ってきっと変わっていないので、このような温もりを伝えるデジタルサービスが出来たら、きっと多くの方に響くんじゃないかと。

ちなみに原題は「Hug Your Customers」。プロとしてのサービスをお客様に提供することをハグと呼んでいます。デジタル時代の1to1アプローチにも取り込んでいきたい考え方をメモしておきます。

お客様をよく知る

お客様から、今日は急いで買い物を済ませなければならないという連絡が前もって入っていれば、買い物が短時間で時間ですむようにとりはからいます。接客の担当者はお客様の過去のデータを参考に、好みに合いそうな商品をとりそろえておきます。お客様は店に来て、商品を見てイエスかノーをいうだけでよいのです。

こういう気づかいはどんな商売にでも応用できます。

たとえば好みをしっかり飲み込んでくれているレストランでの食事は快適でしょう。アルコールをいっさい口にしない人にワインリストがさしだされることはありません。アルコールは飲まないのだと説明するわずらわしさから解放されるのです。なにもいわなくてもソフトドリンクあるいはアイスティーが出てくればうれしくなるでしょう。

じつは私はオニオンリングに目がなくて、一日三回食べても飽きないくらいですが、たとえば過去に一度か二度しか行ったことがないレストランでウェイターから「今回もオニオンリングを召し上がりますか?」と声をかけられたらどうでしょう。感激ですね。

さらにウェイターが「前回リンダさまといらしたときに七番テーブルにご案内しましたが、今回は窓際の三番テーブルはいかがでしょう。きっとご満足いただけると思いますよ」などといってくれたら、もう大感激です。

私たちがお客様に関心を抱きお客様について深く知れば知るほど、お客様はくり返し店に足を運んでくれるようになります。

個人情報の利用に敏感になるべき時代ではありますが、会社で行ったショッパーインタビューでも、「私が買っている商品はしっているはずなんだから、クーポンを送ってくるならそれを活かしてほしい」とおっしゃられていました。

考えてみれば至極当然のこと。お客様の情報を、お客様に喜んでもらえるように使うこと。それは期待されている、もしくは期待を上回るサービスになりこそすれ、ご不満に思われることは少ないはずです。

お得意先さまに、さらに買っていただく

私たちがめざしているのは、すべてのクロゼットのすべてのハンガーを制覇することです。車のディーラーを営んでいたら、すべてのガレージを制覇することをめざすでしょう。食料品店なら、すべての冷蔵庫のすべての棚を。

子どもじみた夢、でしょうか?もちろんプロですから夢と現実を混同したりはしません。しかしどうせなら壮大なゴールをめざさなくては。

新規顧客の獲得はマーケットシェアの拡大を意味しますから、多くのビジネスが積極的になるのは当然でしょう。私たちもけっして消極的ではありません。

けれどそれ以上に大切なのは、現在のお客様とのビジネスを拡大させることです。

マーケットの領域を広げる、つまりクローゼットのなかの領土を大きくするのです。お客様はよその店でも買い物をします。お客様をいま以上にハグし、絆を強め、ゆくゆくはお客様のクロゼットを100%私たちの店の服で満たす、それが目標です。

お客様が過去にこの店で何を買い、何を買っていないのかを私たちは把握しています。

ここ5年間靴を購入していないお客様がいたとしたら、それは何を意味しているのでしょうか。裸足で歩きはじめたわけではないでしょう。どこかの店で買っているのです。それならばお客様の靴の好みを調べ、店に置いていなければ、さっそく取り寄せます。

クロゼットの半分を獲得したらつぎは4分の3、つぎは5分の4をめざしましょう。やがてクロゼットまるごと制覇する日が来るのです。

メーカーとして、デジタルメディア投資は新規獲得を目的に実施することが多いと思います。特定の小売で購入してもらうことを想定したデジタルプロモーションでも、当然新規獲得を目指すことはあります。

しかし、この話を読んで、デジタルプロモーションの場合、既存顧客の購買促進を、これまでにはない深さで試みることができることを再認識しました。ストックまるごと制覇する日を、目指してみます。

顧客を最優先にしたシステムにする

システムを導入する目的は、それまで以上にお客様をしっかりハグするためです。私たちにとって大切なのはお客様のニーズ、好み、購買パターンを理解することであり、システムはそのために利用するのです。企業にとってお客様一人ひとりとの信頼関係は事業の成功を左右するほど重要です。それなのに、なぜ多くの会社のシステムでは個人の情報が重視されないのでしょうか?

たとえばホテルでは、クイーンサイズのベッドをお好みのお客様、枕を余分に必要とされるお客様、という個々の情報を蓄えているでしょうか?航空会社はお客様一人ひとりについて通路側が好みなのか、窓側が好みなのか、なぜデータとして残そうとしないのでしょう。

ID-POSで、お客様一人ひとりの購買履歴をすべて把握できるようになりました。アプリを通じて、お客様一人ひとりにアプローチもできるようになりました。

次は、百万人、一千万人単位のお客様に、どのように顧客情報を活用して、より満足してもらえる買い物体験を提供するか。ゲームのやり方を変えるには、いかに顧客のニーズが見えるシステム、データベース設計をするか、ですね。腕がなります。