花も実もある楽しい読書

人生とテニスに役立つ本

『明るい夜に出かけて』若者の苦しさと素晴らしさがしみる小説

 マジョリティでない者の生きにくさ。好きなものを大切に追うことの力。コミュニケーションが得意でない苦しさ。好きな者同士がつながるネット時代の可能性。

 いつの時代にも、いまの時代だからこそ、若者たちが抱える苦しさと、若者らしい素晴らしさ。二人の我が子たちを見ているだけでも、それぞれの違いと良さを感じるのだから、人は本当に百人十色で、誰しも違うと同時に良さがあるはず。現代は、SNSですぐつながれるだけに、人との違いを痛感させられたり、違いをさらされたりして、よりしんどくなることも沢山あると思う。一方で、必ずしもマジョリティではなくても、自分なりの強みを見つけてもらえる、大切に思うもの同士がつながれるのも、ネット時代だ。

 いまを生きる我が子たち、若者たちに是非読んで欲しい。むかし若者だった私たちもすごく楽しめる、現代の青春小説です。

トミヤマは、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」カザワ、同じラジオ好きの風変わりな少女サコダ、ワケありの旧友ナガカワと交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在のラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。

明るい夜に出かけて (新潮文庫)

明るい夜に出かけて (新潮文庫)