睡眠ハウツー本は世の中に多いし、説得力のあるデータを揃えている本も複数あると思いますが、その中でもこの本はピカ一です。筆者のマシュー・ウォーカー博士は現カルフォルニア大学バークレー校の睡眠・神経イメージ研究室所長。世界をまたにかけ、睡眠、夢、脳神経の専門家たちと共同研究を続けています。そして睡眠が、記憶、身体、創造、作業、そして健康と、あらゆるパフォーマンスに短期・長期的に多大な影響を与えることを、科学的に実証しています。それでいて博士の人柄か主張が押しつけがましくなく、興味を引く事例も多いため、内容がとても入ってきやすいです。原題の『WHY SLEEP』、なぜ人は眠るのかという問いへの答えは、記憶力、身体能力、創造力、作業の正確さ、そして元気に長く生きること、これらすべてのもとになるから。そして、これらすべてのパフォーマンスを上げたいと思ったら、『睡眠こそ最強の解決策である』という邦題になる訳です。
巻末には、付録として「健やかな眠りのための12のアドバイス」がまとめられています。どれか1つだけ守るなら、①とのこと。
①いつも同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
②夜寝る前に運動してはいけない
③カフェインとニコチンを午後に摂取しない
④寝る前にアルコールを摂取しない
⑤夜の遅い時間に大量の飲食をしない
⑥可能なら、睡眠を妨げるような薬を飲まない
⑦午後3時を過ぎたら昼寝をしない
⑧寝る前にリラックスする
⑨寝る前にお風呂につかる
⑩寝室を暗く、涼しく、デジタル機器を持ち込まない
⑪日中に太陽の光を浴びる
⑫眠れないままずっと布団の中にいない
これら12のアドバイスに似たものは類書でも見られますが、これらが「付録」であるところが本書の凄みです。テクニックを知るだけで習慣は変わらない。思いがあってはじめて人間は行動を変えるもの。膨大な研究成果を一般人に伝わるようにまとめたストーリーは、我々の深いところに届きます。ぜひご一読を。
最後に、12のアドバイスを自分なりにやり抜くための備忘録。
①iPhoneのベッドタイム機能で、月〜土の起床時間を固定。子供を通学のために起こす係に。朝が固定されると夜も徐々に固定されてくる。
②筋トレはなるべく夕食前に済ませる。
③コーヒーは基本的に午前中に一杯。
④⑤ダラダラと酒量とつまみが増えてしまう、テレビ、読書とセットの「ながら」飲みをしない。おいしい酒を量を決めて飲む。