花も実もある楽しい読書

人生とテニスに役立つ本

『超訳 ニーチェの言葉 エッセンシャル版』機嫌よく人生を生きるための名言

 「ツァラトゥストラはかく語りき」など多くの著作を残した19世紀のドイツ人哲学者ニーチェ。本書をめくると、現代の私たちが楽しく生きるヒントがたくさんあるなと。訳もすごくいいのでしょう。全10章、190の言葉が1ページずつ掲載されています。特に響いた4つの章からいくつかの言葉をご紹介します。

己について

 自信の持ちすぎも、謙遜しすぎもダメ。前のめりも、後傾しすぎも、うまく立っていられない。身体も心も「重心真ん中」が一番自在に動けます。ニーチェは、自分を大切にする、尊敬する事が大事だと言います。

初めの一歩は自分への尊敬から
 自分はたいしたことがない人間だなんて思ってはならない。それは、自分の行動や考え方をがんじがらめに縛ってしまうようなことだからだ。そうではなく、最初に自分を尊敬することから始めよう。まだ何もしていない自分を、まだ実績のない自分を、人間として尊敬するんだ。自分を尊敬すれば、悪いことなんてできなくなる。人間として軽蔑されるような行為をしなくなるものだ。そういうふうに生き方が変わって、理想に近い自分、他の人も見習いたくなるような人間になっていくことができる。それは自分の可能性を大きく開拓し、それをなしとげるにふさわしい力を与えることになる。自分の人生をまっとうさせるために、まずは自分を尊敬しよう。
『力への意志』

 ストレスがたまった時はどうしていますか?私はよくお酒を飲みます。発散はできますが、太ったりお腹をこわしたり、体にはあまり良くないですね。ニーチェは「寝ろ!」と。最新科学から見ても、最強の解決法です。

疲れたらたっぷり眠れ
 自己嫌悪におちいったとき、何もかも面倒でいやになったとき、何をしてもくたびれて仕方ないとき、元気を取り戻すためには何をすべきだろう。ギャンブル?宗教? 流行のリラックス療法?ビタミン剤?旅行?飲酒?そんなことよりも、食事をして休んでからたっぷりと眠るのが一番だ。しかも、いつもよりずっと多くだ。目覚めたとき、新しい力が漲る別の自分になっているだろう。
『漂泊者とその影』

 いつも機嫌よく生きるコツ。切実に身につけたいし、自分の大切な人たちには知ってて欲しい。ニーチェの指摘は、実践も出来るし、まわりの人たちがそう思えるよう、自分に出来ることもあるはず。

いつも機嫌よく生きるコツ
 不機嫌になる大きな理由の一つは、自分のなしたこと、自分の産んだことが人の役に立っていないと感じることだ。だから、不機嫌な老人がいる。一方で輝く青春の真っ只中にいる若い人たちが不機嫌なのは、自分が社会の中で生産的な存在になることがまだなかなか難しいからでもある。
 したがって、いつも機嫌よく生きていくコツは、人の助けになるか、誰かの役に立つことだ。そのことで自分という存在の意味が実感されこれが純粋な喜びになる。
『人間的な、あまりに人間的な』

 自分がどういう人間か理解するためには、自分が何に夢中になり、大事に思ってきたかをよく考えること。『ソース』という本の主題は、ニーチェが元になっているのかもしれません。

自分自身を見つけたい人に
 自分がどういう者であるか理解したい人は、次のような問いを自分に向け、真摯に答えてみればいい。これまで自分が真実に愛したものは何であったか?自分の魂を高みに上げたものが何であったか? 何が自分の心を満たし喜ばせたか?これまでにどういうものに自分は夢中になったか?これらの問いに答えたとき、自分の本質が明らかになるだろう。それがあなた自身だ。
『ショーペンハウアー』

喜について

 うんと喜ぶ。うんと笑う。こうやって生きていくことが、よりよい人生を送る秘訣だ。

喜び方がまだ足りない
 もっと喜ぼう。ちょっといいことがあっただけでも、うんと喜ぼう。喜ぶことは気持ちいいし、体の免疫力だって上がる。恥ずかしがらず、我慢せず、遠慮せず、喜ぼう。笑おう。にこにこしよう。素直な気持ちになって、子供のように喜ぼう。喜べば、くだらないことを忘れることができる。他人への嫌悪や憎しみも薄くなっていく。周囲の人々も嬉しくなるほどに喜ぼう。
 喜ぼう。この人生、もっと喜ぼう。喜び、嬉しがって生きよう。
『ツァラトゥストラはかく語りき』

 自分を喜ばせること。そしてひとを喜ばせること。それが、よりよい一日、よりよい人生につながります。

朝起きたら考えること
 一日をよいスタートで始めたいと思うなら、目覚めたときに、この一日のあいだに少なくとも一人の人に、少なくとも一つの喜びを与えてあげられないだろうかと思案することだ。その喜びは、ささやかなものでもかまわない。そうして、なんとかこの考えが実現するように努めて一日を送ることだ。この習慣を多くの人が身につければ、自分だけが得をしたいという祈りよりも、ずっと早く世の中を変えていくことだろう。
『人間的な、あまりに人間的な』

 自分の大事な人たちと、よい人生を送れる。

人を喜ばせると自分も喜べる
 誰かを喜ばせることは、自分をも喜びでいっぱいにする。どんなに小さな事柄でも人を喜ばせることができると、わたしたちの両手も心も喜びでいっぱいになるのだ。
『曙光』

 もう一回繰り返し。

心にはいつも喜びを
 利口であれ。そして、心に喜びを抱け。
 できるならば、賢明でもあれ。
 そして心には、いつも喜びを抱いているように。
 これが人生で最もたいせつなことなのだから。
『漂泊者とその影』

 イヤなことはもちろんあります。でも自分のために、周りのみんなのためにも、この瞬間に楽しいことがあったら、ちゃんと楽しみましょう。

この瞬間を楽しもう
 楽しまないというのはよくないことだ。つらいことからいったん目をそむけてでも、今をちゃんと楽しむべきだ。たとえば、家庭の中に楽しまない人がたった一人いるだけで、誰かが鬱々としているだけで、家庭はどんよりと暗く不快な場所になってしまう。もちろん、グループや組織においても同じようになるものだ。できるだけ幸福に生きよう。そのためにも、とりあえず今は楽しもう。素直に笑い、この瞬間を全身で楽しんでおこう。
『悦ばしき知識』

生について

 ひとつひとつの経験を、漫然としたインプットに終わらせずに、自分の中で咀嚼して、アウトプットに変える。濃い経験をしていこう。

人生を最高に旅せよ
 知らない土地で漫然と行程を消化することだけが旅行だと考える人がいる。買い物だけをして帰ってくるのが旅行だと思っている人もいる。旅行先のエキゾチックさを眺めるのをおもしろがる旅行者もいる。旅行先での出会いや体験を楽しみにする旅行者もいる。一方、旅行先での観察や体験をそのままにせず、これからの自分の仕事や生活の中に生かして豊かになっていく人もいる。
 人生という旅路においてもそれは同じだ。そのつどそのつどの体験や見聞をそのとき限りの記念品にしてしまえば、実人生は決まりきった事柄のくり返しになってしまう。そうではなく、何事も明日からの毎日に活用し、自分を常に切り開いていく姿勢を持つことが、この人生を最高に旅することになるのだ。
『漂泊者とその影』

 言い訳するより、断言する。

断言すると賛同してくれる
 多くの人々を納得させたり、彼らになんらかの効果を及ぼしたいのなら、物事を断言すればいい。自分の意見の正当性を、あれやこれや論じてもだめだ。そういうことをすると、かえって多くの人々は不信を抱くようになるのだ。自分の意見を通したいなら、まずは断言することだ。
『さまざまな意見と箴言』

 イヤなことがあったら、目の前の仕事、作業に没頭しましょう。いつのまにか頭が冷えているだけでなく、いつのまにか仕事、作業が進んでる、っていうボーナスまであります。

職業がくれる一つの恵み
 自分の職業に専念することは、よけいな事柄を考えないようにさせてくれるものだ。その意味で、職業を持っていることは、一つの大きな恵みとなる。人生や生活上の憂いに襲われたとき、慣れた職業に没頭することによって、現実問題がもたらす圧迫や心配事からそっぽを向いて引きこもることができる。苦しいなら、逃げてもかまわないのだ。戦い続けて苦しんだからといって、それに見合うように事情が好転するとは限らない。自分の心をいじめすぎてはいけない。自分に与えられた職業に没頭することで心配事から逃げているうちに、きっと何かが変わってくる。
『人間的な、あまりに人間的な』

 暮らしの様々な部分に気を遣い、自分で丁寧にデザインする。大いなる権利であり楽しみであり大事なこと。

生活をデザインする
 快適に美しく生きたいと願うのなら、そのコツは芸術家の技術が教えてくれる。たとえば画家は物の配置に気を遣う。わざと遠くに置いたり、斜めからのみ見えるようにしたり、夕焼けが反射するようにしたり、影が効果的になったりするようにする。これと似たことを生活の中でわたしたちはしている。インテリアの配置だ。使い勝手だけを考えて家具を置くわけではない。美しく生活できるように工夫をこらす。そうでないと、雑多でめちゃくちゃな空間の中で暮らさなければならなくなるからだ。同じようにわたしたちは、生活の諸々の事柄や人間関係を自分の好きなようにデザインしてよいのだ。
『悦ばしき知識』

 仕事は稼ぐためであり、ビジネスは持続的に利益を生み出すこと。でもそれだけではないですよね。過程を無視するなら、それは人生の無駄遣いかもしれません。

目標にとらわれすぎて人生を失うな
 山登りをする。たゆまず、獣のように。汗にまみれ、一心不乱に頂上を目指す。途中にいくつもの美しい眺望があるのに、ただ次の高みへと登っていくことしか知らない。あるいはまた、旅行であってもいつもの仕事であっても、一つの事柄だけに耽って他はすっかり忘れてしまう。そういう愚かなことが、しばしばなされている。たとえば仕事の場合では、売り上げを伸ばすことだけがたった一つのなすべき目的のように錯覚してしまったりする。しかしそうすることで、仕事をすることの意味は失われてしまう。けれども、このような愚かな行為はいつもくり返されている。心の余裕をなくし、合理的に行動することを重要とみなし、その観点からのみ人間的な事柄までをも無駄とみなして、結局は自分の人生そのものを失ってしまうようなことが頻繁に起きているのだ。
『漂泊者とその影』

心について

 クリエイティビティが大事、とよく言われる時代です。昔からそうなんですね。誰でも持ち得ると言ってくれます。

軽やかな心を持つ
 何か創造的な事柄にあたるときにはもちろん、いつもの仕事をする場合でも、軽やかな心を持っているとうまくいく。それはのびのびと飛翔する心、つまらない制限などかえりみない自由な心だ。生まれつきのこの心を萎縮させずに保っているのが望ましい。そうすれば、さまざまなことが軽々とできる人になれるだろう。しかし、そんな軽やかな心を持っていないと自覚しているなら、多くの知識に触れたり、多くの芸術に触れるようにしよう。すると、わたしたちの心は徐々に軽やかさを持つようになっていくからだ。
『人間的な、あまりに人間的な』

 『EQ2.0』にも通じますが、多くの人を味方にできるコミュニケーションのあり方というのは、確かに存在します。

反対する人の心理
 提示されたある案に対して反対するとき、よく考え抜いたうえで確固とした根拠があって反対する人はごく少ない。多くの人は、その案や意見が述べられたときの調子とか言い方、言った人の性格や雰囲気に対して反発の気分があるから、反対するのだ。このことがわかれば、多くの人を味方にできる方法が何かがおのずと知れてくる。表現の方法、説得の仕方、物言いの工夫という技術的なものも確かにあるだろうけれども、それらの上には、技術では及ばないもの、つまり、意見を述べる人の性格や容姿、人柄、生活態度などがあるということだ。
『人間的な、あまりに人間的な』

 疲れたら、食って寝る。再び。

疲れたと感じたら、考えない、思わない
 いつものように毅然としていられなくなったら、疲れている証拠だ。疲れていると、わたしたちは溜め息をつき、愚痴を口にし、後悔を口にし、ぐるぐると似たようなことを考え、そのうち憂鬱なことや暗いことが頭の中を勝手に動き回るようになる。それは毒を吸うようなことだから、疲れたと感じたら、考えることをやめ、休んだり寝たりするに限る。そして、また毅然として活動できるように明日に向かって備えよう。
『悦ばしき知識』

 感情をコントロール出来れば、人は自由になれる。

精神の自由をつかむためには
 本当に自由になりたければ、自分の感情をなんとか縛りつけて勝手に動かないようにしておく必要がある。感情を野放しにしておくと、そのつどの感情が自分を振り回し、あるいは感情的な一方向にのみ顔と頭を向けさせ、結局は自分を不自由にしてしまうからだ。精神的に自由であり、自在に考えることができる人はみな、このことをよく知って実践している。
『善悪の彼岸』

超訳 ニーチェの言葉 エッセンシャル版

超訳 ニーチェの言葉 エッセンシャル版

  • 作者: 白取春彦
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