我が家をより心地よく。副題の通り「シンプルで美しい暮らしのための3つのエッセンス」を、素晴らしい写真集のような豊富な事例で紹介してくれます。
「無駄なく」 Plain ありのままの素材、すっきりとしたフォルム、魅力を高めるどころか不鮮明にしてしまうような、過度な装飾が一切ないという特徴を表しています。
「シンプル 」Simple 使い勝手がよく、自然な喜びを感じさせる、という2つの特徴を表します。自然な喜びとは、休日や休暇に出かけたときに感じる喜びで、たとえば窓から降り注ぐ太陽の光、足で踏んだときのカーペットの感触、または安らぎや静けさの中などにも見出せるものです。
「実用的 」Useful 真の意味で「機能的である」ことです。それは機能過多で使いづらい電子機器や電化製品のことではなく、たとえばちょうどよい高さの椅子や、身体を最適に支えてくれるベッドなどを表します。
テレンス・コンラン卿はインテリアデザイナー等として長年にわたり活躍してきたイギリス人。イギリスをはじめとするヨーロッパでは古い建物もモダンと融合させて長年使われています。本書で紹介されるエッセンスも、不変ではなくとも普遍的で、10年や20年の流行り廃りで左右されるものではないと感じます。じっくり時間をかけて心地よく暮らすための家を作り上げるための、座右の書になると思います。
3つのエッセンスを全体を通した柱としながら、家を6つの空間に分けて、具体的なアドバイスを写真とともに説明してくれています。
- 料理のための空間
- 食事のための空間
- くつろぐための空間
- 仕事のための空間
- 眠るための空間
- 入浴するための空間
1.料理のための空間
I型、L型、II型、U型、アイランド型、それぞれのキッチンレイアウトの特徴、ファミリーにとってのキッチンのじょうずな使い方などを指南していますが、特に日本人宅には、「小さなキッチンのじょうずな使い方」が参考になりそうです。
小さなキッチンのじょうずな使い方
プロ料理人の多くが認めるように、コンパクトなキッチンは非常に効率的であると同時に、創造力をかきたてられる空間でもあります。一般家庭の場合、小さなキッチンでは1人で料理を作ることがほとんどでしょうから、自分にとって、もしくはそこで料理する誰にとっても、自然に感じられるレイアウトを心がけなければなりません。
肝心なのは、限りあるスペースを最大限活用するために、ぴったりのレイアウトを選び、計画段階でじっくりと時間をかけて最適の配置を考え出すこと、食器棚や引き出しも同様に、必要があれば、仕切り板やバスケットを利用してカスタマイズしたり、高さや幅の調節が可能な棚を用いて、空間を無駄にしない工夫が大切です。引き出し型、または折りたたみ式のフラップデスクを使えば、調理台を広くしたり、朝食用カウンターになったりします。
調理器具は、よく使う最小限のものを選ぶこと。日常的に使わないなら、プロ向けの電化製品や調理器具を置く必要はありません。
軽やかで明るい反射タイプの表面や仕上げにすれば、自然に広々とした空間になりますし、フラッシュパネル(木で枠を組み両側に板を張った合板)や引き出しの前面を活用すれば、ごちゃごちゃした見た目も最小限に抑えられます。