花も実もある楽しい読書

人生とテニスに役立つ本

『日本の医療の不都合な真実 コロナ禍で見えた「世界最高レベルの医療」の裏側』非常に深刻な医療費の使われ方と逆説的な希望

医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏は、現場とデータの両方を見て、コロナ禍にある日本医療の現状をこう例えます。 最強の戦力を保持しているにもかかわらず、それらを適正に配置する指揮命令系統を失ってしまったので誰も動けない。しかし敵はもう足…

『海の底』成人男性から女子中学生までハマる潜水艦?小説

読み始めて9ページで度肝を抜かれる…あまりに意表を突かれ、すごく先が気になってしまいます。まだ裏表紙の内容紹介にも目を通していない方は、ぜひそのまま読み始めてください。 その1点に限って突拍子もなく、それ以外のストーリーはリアルに展開します…

『日本沈没』重い問いにしびれたのち、一周まわって楽観的になった原作

タイトルはみんな知っている1973年発刊の古典的なパニック小説。平成の震災を経験し、気候変動が大きな社会問題となっている今、2021年のドラマの原作にもなりました。ストーリーの枝葉は大きく変わっていますが幹は同じかな。原作を読んでみると、半世紀前…

『すばらしい新世界』こんな未来もあり?考えさせられてしまうディストピア小説

こんな未来もありかもしれない… 副作用なく気分をあげる錠剤「ソーマ」や欲求を充足する「フリーセックス」。これは割り切ってしまえばユートピア? 生産性と安定をひたすら追求し、新常識に疑問を持たないよう、工業的にクローン生産され、機械的な刷り込み…

『すごい宇宙講義』物理が苦手でもブラックホールとビッグバンがわかる本

夜空の向こうに夢を馳せたこと、誰でもありますよね。ブラックホールやビッグバンって何なんだ、知りたいなと思ったことがある人も多いはず。 著者の多田将氏は素粒子研究の専門家。宇宙の専門家ではなくて、教えるのが飛びきり上手な科学者。宇宙を題材に科…

『ドラえもん ひみつ道具大辞典』あの道具の精神は2020年時点でここまで実現しています

40年前、私が子供のころから版を重ね続ける『ドラえもんのひみつ道具大辞典』。 成毛眞氏が『アフターコロナの生存戦略』で、成長事業を見定めた投資判断をしたかったらSFを読め、『ドラえもん』の世界も実現しつつあるものは少なくない、と書かれていて思い…

『アフターコロナの生存戦略』これからの働き方、生き残り方、楽しみ方

「生きる時代を楽しめ!」成毛眞氏からの一貫したメッセージを感じる本です。 アフターコロナをできるだけ前向きに捉えたいと思っている。 実際、何もかもが一度に変わったわけではなく、それまで水面下で始まっていた変化が顕在化した面もあるだろうし、ワ…

『ライフスパン』寿命じゃなくて健康寿命だから伸ばすことに意義がある!

デービッド・A・シンクレア氏はタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたハーバード医学大学院教授。 文章もすごくわかりやすく面白いのですが、小気味良いのは、健康な状態なしに「寿命」だけを引き延ばすのは罪、同じくらい「健康寿命」を長く…

『そして、バトンは渡された』暖かい気持ちになる素敵な小説

母親が二人、父親が三人。親の死別や離婚が繰り返され、高校生の今は二十歳しか離れていない"父"と暮らす優子。悲しいこと、切ないことはたくさんあった。でも、周りからよく同情されるけれど「困った。全然不幸ではないのだ。」と思える彼女。 彼女との出会…

『ジャック・ライアンシリーズ』トム・クランシーによる最高のテクノスリラー小説

冷戦期に作家デビューしたトム・クランシー。軍事や諜報活動を扱うテクノスリラーとして、政府関係者にも評価されるほどリアリティがあるのですが、それだけにとどまりません。ハリソン・フォード主演で映画化されるほど魅力的な登場人物たち。そして何より…

『運転者』自分の機嫌は自分でとろう。小説として面白い自己啓発書

無料で読めるAmazon prime readingの小説の中でも評価が高く、七十代の方が「いくつで読んでも胸に響く」とコメントされていたのが印象的でした。 不運を嘆くばかりの四十路の営業マンが、不思議なタクシーとの出会いから変わっていくファンタジーです。 胸…

『日本史サイエンス』神風や天才だけが理由じゃない。文系x理系的アプローチで「歴史の謎」を解明する。

日本史、世界史の「歴史の謎」。真実を知るにはタイムマシンが必要? 史料を最大限活かした合理的な条件設定と、基礎的な物理の法則に基づく証明。2つを組み合わせることで生まれた説得力のある仮説を、大いに楽しみました。 著者の播田安弘氏は船舶設計の…

『父滅の刃』父親として、父性すなわち規範と方向性を示そう

やるべきことやってなかったな。本書を読んで自分は少し反省しました。 精神科医で作家の樺沢紫苑氏が父性をテーマに出した作品を、大ブームとなった『鬼滅の刃』にインスパイアされて加筆、改題して2020年に再版した本書。 中身を表しながらもキャッチ―なタ…

『最後の医者は桜を見上げて君を想う』生を全うしよう、と背中を押してくれる小説

人の死を描いて、こんなにも生への希望を感じさせる小説はすごいです。 あなたの余命は半年です―ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。だが、副院長・福原は奇跡を信…

『下町ロケットシリーズ』明日から頑張ろう。すべての働く人への応援歌

ドラマ化されている池井戸潤氏の人気シリーズのひとつ。『半沢直樹シリーズ』同様、必ず最後に正義は勝つw ただし、半沢シリーズが「ヒーローもの」だとすれば、こちらは「人情もの」の良さがあります。 かたや、超絶優秀な銀行員、半沢直樹による、とてつも…