花も実もある楽しい読書

人生とテニスに役立つ本

『モバイルボヘミアン』 自由な人生を自分で設計しよう

6年前に出版された本田直之さんの「ノマドライフ」は場所に縛られずに仕事をしよう!というメッセージでしたが、四角大輔さんとの共著である本書ではさらに進んで、仕事と生活の垣根をなくして、融合させていくことを提案しています。

ノマドワーカーを「どこにいても仕事ができる人」とするならば、モバイルボヘミアンはそこに加えて、「仕事とプライベートの境がなくなってきている状態」を指す。旅するように生き、だれにも縛られずに自由に生きていける、究極の生き方と言えるだろう。詳しくは後述するが、どこにいても仕事ができる能力を身につけ、組織に依存せず、仕事とプライベートの垣根なく生きられるようになったことで、ぼくたちは「自分の時間」を取り戻すことができた。

 完全に会社組織に依存しない「独立」はハードルの高い変化。ただ、会社内にとどまるとしても、定例業務を回すのではなく、期間を区切って、求められた結果を出すことに集中する環境に挑むならば、疑似独立というか、フリーランスにも通じるのではないか。そう思うと、この本の読み方が変わると同時にワクワクしてきました。

モバイルボヘミアンの「モバイル」には複数の意味が込められているが、その一つは言うまでもなく、モバイルテクノロジーのことだ。 もしiPhoneやMacBook、インターネットがなければ、ぼくはニュージーランド在住のただの釣り好きだし、ナオさんはハワイに住んでいるただのサーファーだっただろう。そして、「ボヘミアン」の語源は、「(ジプシーや放浪者のような人たちを指して)自由奔放に生きている人」というもの。 さらに、ぼくはそこに「古い慣習に囚われすぎず、自由な発想ができ、クリエイティブな思考を持つ人」、「世の中に流されずに自分の心や信念に従って生きている人」という解釈を加えている。ここで繰り返し強調したい。モバイルボヘミアンという生き方は、要はシンプルに「自分らしくいられる時間をできるかぎり長く持つための方法」であり、「仕事、表現、生活のクオリティを極限まで引き上げるための考え方」なのだ。

 私の場合、東京での単身赴任を解消した1か月後に新辞令が出て、神戸と東京を頻繁に行き来することになりました。幸い単身赴任よりも家族と過ごす時間は増えたので、それぞれの場所で出来ることを活かし、思い切りメリハリをつけて暮らすことにしました。平日の朝から夜の早い時間までは東京、神戸で社内外の仕事仲間と集中して働く。家族といる時間はコミュニケーションやお互いのサポートを丁寧に行う。一人の時間は好きな西宮で好きなことをエンジョイする。その実践、実験をしようと。

重要なことは、過去10年で働き方がこれだけ変わったのだから、次の10年ではもっと変わる。そのときにあなたはどういう生き方をするのか?という問いを投げかけること。その答えを今、真剣に考えなければ、これだけの変化とチャンスがある中で、働き方や生き方を変えるタイミングを逃してしまうだろう。テクノロジーが進化したからといって、それを使いこなせなければなにも変わらないし、ライフスタイル自体を変化させなければ、テクノロジーは活かせない。

 過去4年間は大企業の営業企画部という仕事柄、社内で定例の会議、会議、会議。営業部であるにも関わらずかなり内向きに仕事をしていました。新業務では社内会議が激減する一方、必要な時に質の高いアウトプットが出来るかが重要に。世の中で働き方が大きく変わろうとしている中で、同じ会社の中で働き方を変える機会が得られたのはラッキーでした。

モバイルボヘミアン、それはiPhoneをはじめとするモバイルテクノロジーを駆使して、旅するように、だれにも縛られずに自由に生きていくライフスタイル。なぜ今、ぼくたちがこの生き方をあなたに伝えたいのか。その 理由を具体的に理解してもらうために、まずはぼくたちが生きている時代の変化からおさらいしていこう。キーワードは、モバイルテクノロジーがもたらす時間、場所、会社、収入源という4つの制約からの「解放」だ。

iPhone。このデバイスと付随するサービスの急速な発展のおかげで、ぼくたちの「働く場所」に対する認識が変わりはじめていることは、あなたも少しずつ実感しているだろう。これまで、ぼくたちの働く場所はオフィスに「固定」されていた。会社に勤めるにしろ、経営するにせよ、ぼくたちは働くためにはオフィスに行かなければならなかった。デスクトップパソコンのある会社に行って、机の前に座って、仕事をする。それが常識だった。しかし今は、iPhoneがあればどこでも仕事ができる。ノートパソコンと決定的に違うところは、歩きながらだって仕事ができるし、机すら必要としないことだ。つまり、何時から何時まで会社にいなければいけない、という場所の縛りも必要なくなった。こうしてまず、「場所」が解放された。

 「場所」からの解放として、最近行っているのは、会議と移動の時間と重ねてしまうこと。新幹線の中からしばしばiPhone で会議に参加しています。Air Podsだと充電切れや騒音で難しかったのですが、SONYのノイズキャンセリングフォンだと、音声は会議室での電話会議と遜色ないレベルに。EX早得だとグリーン席でも指定席と同じ値段の列車もあり、隣や前後も空いているので、小声であれば迷惑もかけませんし、がっつり発言するときはデッキに出ればいい。9時東京着で会議に出ようとすれば6時過ぎには新幹線に乗っていなくてはなりません。電話会議が可能な会社であれば、8時過ぎに新大阪で新幹線に乗って、30分考えをまとめた後に9時からの会議に参加できる。家族との時間もとりやすいですし、体もすごく楽になります。

場所が解放されて、次に解放されたのは「時間」だ。「労働時間は9時から17時まで」、「月に40時間働く」、「何時から何時までは会社にいる必要がある」。これが今までの常識だった。仕事にはかたまりの時間が必要で、最低でも数時間は会社にいて、パソコンの前に座って、ミーティングの時間をとって、といった具合に。しかし今はiPhoneがあるおかげで、かたまりの時間をとらずとも細切れの時間でどこでも仕事ができるようになった。

今はまだ、iPhoneのみで仕事をしている、なんていう人は少数派かもしれないが、考えてみてほしい。15年前まではノートパソコンを使っている人が少数派で、そこからたった5年ほどでそれが多数派になり、今では仕事に欠かせないものになっていることを。

iPhoneが登場したのは2007年。しかし、当時のスペックだとまだまだ仕事に使えるというレベルではなかった。そのあとアップグレードを続け、2010年以降にデバイスもインターネット環境も急速に進化してきたからこそ、どこでも仕事ができるという状態が当たり前になったのだ。 新しい価値観は、ひとたび「こちらの方が便利だ」、「こちらの方が効率いい」と理解された途端、古い常識や習慣を洪水のように押し流す。

会議が多いと、どうしてもオフィスに縛られます。しかし関西勤務、東京勤務、といった制限を持たずに、各自が一番伸び伸びと働ける場所に住みながら活躍できるよう、モバイルの進化を活用することは会社にとってもメリットが大きいはずです。これだけ変化の大きな今の時期だからこそ、会社のルールに出来るだけチャレンジし、提案してみる。これは長期的に考えて会社への貢献になるはずです。そして自分自身が新しい価値観に対して柔軟に対応できるようになることは、今後すごく役に立つはずです。

固定された場所がない、ということは、固定されたチームもなくなっていく、ということ。会社というあり方そのものが「固定的」から「流動的」になっていき、プロジェクトごとに集まって仕事をして、終わったら解散。そんなプロジェクト型の仕事も増えていくだろう。

向こう一年間の仕事を、プロジェクトとしてきっちり成功させる。その結果があれば、会社も私たちに価値を感じてくれるし、ホームロケーションや仕事の進め方、果てはやりたい仕事の内容まで、「自由」が広がっていく。社内にとどまる、社外で新しいチャレンジをする。それもより自由に考えられるようになるでしょう。

場所、時間、会社からの解放が進むことで、最後にぼくたちにもたらされるものは、「収入源」の解放だ。働く人たちの多くが、目の前の「忙しすぎる生活」に不満や違和感を抱きながらもそこから抜け出せない、そのもっとも本質的な原因は、「収入源」を1つに依存していることにある。もしあなたが一度に1つの会社にしか所属できないのであれば、もちろん収入源はその会社からもらえる給料1つだ。だが、働く人が会社からも解放されるとすれば、「1つの会社で、1つの固定した仕事をして、1つの収入源で生きる」という生き方自体が見直されていくだろう。

複数の収入源を持つ準備もしていきます。ただ短絡的に副業にいそしむのではなく、現在の会社で自分が強みとしているコアスキルを磨き、社内での価値を高めて裁量権、自由を拡大する。それを活かして次のステップやもう一つの収入源確立につなげる。いきなりワープはできないので、段階を踏んで推進力を高めていきたいと思います。

名刺や組織力に依存する形ではなく、会社員が「個人」でコツコツと積み上げてきた経験や能力、社会的信頼を武器に仕事をしていく機会は間違いなく増えていく。だからこそ、たとえ会社員であってもフリーランスのような覚悟を持って仕事をすること、独力で生きるために必要な、どこでも通用するスキルを身につけようと意識しながら働くことが重要になってくるのだ。

「得意」でも「好き」でもないことを自分でやってみるとよくわかるだろう。要領を得ないからムダに手間も時間もかかってしまううえに、極端に疲れてしまう。多くの人がそういった「苦手な作業」に、一日の、いや人生の大半の時間を費やしてしまっている。「そんな人生はもったいない。すべての時間を好きなことに費やして『アーティスト』のように生きてみない?」と、ぼくは問いかけたいのだ。もちろん、ぼくやナオさんも20代のころは、そういった苦手な作業を「社会で生きるために必要なトレーニング」と捉え、必死にやった。たしかにその経験は、ぼくたちの土台をつくった。しかし、それを何十年もやり続ける必要はない。その「トレーニング期間」を経たあとは、自分の時間をできるかぎり「得意なこと」に投資すべきなのだ。

「得意なこと」。私の場合、人々の話を聞いて状況を理解、整理して、進みたい方向に向かって自分でも手を動かし、個々のチームメンバーが積極的に役割を果たせるように導くこと。でしょうか。強烈なリーダーシップを発揮したり、ブレイクスルーなアイディアをゼロから生み出したり、そういったことはあまり得意ではありません。意義があると信じることに手を動かすのは好きですが、納得していない命令に従って資料を作成するのは嫌です。自分が得意なことを明確にすれば、その方法を念頭においたプロジェクトの進め方が考えられるようになる。そうして自分が得意なことに時間を投資できるようになる。これを心がけていきます。

モバイルボヘミアンの特徴は、大きく分けると左記の3つだ。

・ワークスタイルではなく、ライフスタイルを基準に住む場所を選ぶ。

・旅するように生きる。

・仕事とプライベートの垣根をなくす。

「30歳までに心の故郷を見つけられた人はしあわせだ」。これは、ぼくが尊敬する、ある作家の言葉だ。心の故郷とは、自分が生きるうえで拠りどころになる場所のこと。自分の生まれ育った土地や、実際の故郷でもないし、働くためだけに住んでいる街でもない。 自分自身を取り戻すことができ、もっとも安心して暮らせる場所のこと。ぼくはそういった場所(=心の故郷)を「ホームプレイス」と呼んでいる。

自分の場合、出身地の東京で働き始め、転勤で東京、神戸、西宮、東京、名古屋、西宮と住まいを変えてきました。実家も、学生時代含め一番長く過ごした場所も、東京です。ですが、西宮が大変気に入っています。子供達が育ち、家族みんなが友人に恵まれ、香櫨園浜や甲山、質の高いショッピングセンターもすぐ近く。いいテニススクールがあってスポーツ施設は豊富。神戸への通勤は空いていて、生活コストは東京より安い。そして家のそばを流れる夙川が美しい。ここをホームプレイスとしながら、仕事も遊びも家族の生活も充実させていきたいと考えています。

住む場所を決める基準はなにか?と聞かれれば、ほとんどの人が「仕事」と即答するだろう。「暮らすところ=職場に通いやすい場所」というのが常識だったから。もっと言うと、人類は、狩猟から農耕生活へ移行して以来ずっと、「暮らすところ=食うために便利な土地=人生の大半を過ごすところ」という基準で住む場所を選んできた。逆にこれまで、職場に縛られずに暮らすことができる人は、本物の遊牧民やジプシー、もしくは引退した富豪や、小説家や芸術家といった天才たちだけだった。しかし、今はモバイルテクノロジーを使いこなすことさえできれば、都会、地方いずれにいても、さらには移動しながらでも仕事ができるようになった。であれば、住む場所を決める基準はもはや「仕事」ではない、ということになる。住む場所を仕事中心ではなく、「自分のやりたいことを中心」に決めることができれば、必然的にすべての時間を、そして人生を、「自分のもの」にしていくことができる。

サラリーマンであってもフリーランスの心意気でを仕事をする。具体的には、まず自分の役割を明確に定義する。フリーランスならば、支払いの前提として、契約書で役割が明記されます。サラリーマンでも、役割を明確にして上司と合意し、それを達成すれば、会社が価値を正しく評価できる。ちゃんと評価されれば、仕事の進め方、住まう場所、業務内容などの裁量権、サラリーマンとしての「自由」が拡大します。そして、どこでも通用する=外向きなスキルが身につく役割を取りに行く。社内プロセスを上手に回すだけでは社外で通用しませんし、徐々に仕組み化されて社内価値も減っていくはずです。仕事の成功方法には複数のルートがあるでしょうが、社外の人たちを納得させ、仲間にし、力を発揮させる。そういった方法を取っていきたいと思います。

こうして旅するように生きることで得られる利点は大きく3つ。

・「思考のモビリティ(柔軟性)」を得られる。

・「第3の拠点」をいくつも持つことができる。

・「〆切のある生活」が優先順位を明解にする。

これまで再三、その重要性を伝えてきた「自分を移動させられる力(モビリティ)」というのは、「身体を物理的に移動させる能力」だけの話ではない。「思考のモビリティ=頭の柔らかさ」こそ、実はもっとも重要なポイントなのだ。旅するように生きていると、毎日が「非日常」となり、強烈な刺激と劇的な気分転換に、繰り返し遭遇する生活が「日常」となる。こうした生活を続けていると、思考は自然に柔軟になっていく。そうやって得た思考の柔軟性は、あなたのクリエイティビティを拡張してくれる。

「ひらめき・思いつき・発想」や、なにかを改善したり、問題を解決する際に必要な「創意工夫」といった、ぼくたちの日々の生活や仕事で当たり前のように使っている、ベーシックな能力のことだ。そのクリエイティビティを高めるために土台として必要なものが、「思考のモビリティ」だ。型にはまった思い込みに縛られないこと、古くて機能していない常識をちゃんと疑えること、新たな流れや価値観を受け入れられること、といった頭の柔軟性のことを指す。つまり、思考のモビリティとは、「変化し続ける姿勢」のことでもあるのだ。

ぼくたちにとって仕事とは、すべて生き方に通ずるもの。一般的に言うような「仕事」はない。だから、週末も夏休みもないし、勤務時間もない。「疲れたから休みがほしい」といった気持ちもない。極論を言えば、24時間遊びまくっているのかもしれないし、24時間仕事しまくっているとも言える。一般的な仕事は、遊びとは別だ。仕事はつらくて大変なものだし、笑いながら仕事をしていたら「真剣にやれよ」と怒られる。だから、トレードオフとして、休み(プライベート)という概念が必要になってくるし、働く時間も制限しようという発想になる。しかし、ぼくの場合は、大好きなことを突き詰めていたら結果的にビジネスになった。もともと楽しいことしかやらなくて、それを突き詰めてやっているがゆえに、おもしろい仕事ばかりが来る。これは、モバイルボヘミアンの生き方を実践していなかったころには考えられなかったことだ。ただ、よく言われる「趣味を仕事にしよう」とか「好きなことを仕事にしたい」とは少し違う。そうではなく、「垣根をなくす」という考え方が重要なのだ。

本田氏や四角氏と同じやり方が自分にできるとは思いません。人様と同じやり方である必要はないのだとも思います。しかし「意思あるところに道は通ず」と言うとおり、どんな生き方をしたいか、仕事をどのようにやりたいか、それらを出来るだけ明確にして、意思を持って進める。そうすれば、プライベートとビジネスの間の垣根が自然と下がり、クオリティオブライフが向上すると思うのです。ストレスのある仕事と、休みとしてのプライベートでバランスをとる「ワークライフバランス」ではなく、仕事は仕事で楽しみもストレスもありながらそれ自体で調和し、だからこそプライベートでも仕事につながる学びや成長を自然と行いたくなる、「ワークアズライフ」の方向で。

組織に依存せず、個人として生きるために最初に必要なことは「お金から自由になること」だ。そのためには、本気になってお金と対峙しないといけない。「生活収支の計算」や「お金の勉強」から逃げていると、「お金の呪縛」から永遠に逃れられず、勇気を持って行動を起こしたり、日々挑戦することができなくなる。社会人になり、給料が上がるとつい生活レベルを上げてしまい、全体的な出費が増えて行く。一度それに慣れてしまうと、収入の増減に振り回されるようになり、その暮らしを失うことがおそろしくなる。

だれもが陥る、この「お金の魔力」がもたらす「負のスパイラル」に落ちてしまわないためにぼくが実践したのは、自分の「ミニマム・ライフコスト」を把握することだ。ミニマム・ライフコストとは、ぼくがつくった概念で「自分や家族が健康的に生活するために必要な最低限のお金」のこと。これさえわかれば、「これ以上は無理して稼ぐ必要はない」ということに気づくのと同時に、ムダな出費こそがもっともハイリスクな行為、という「お金の本質」を知ることもできる。自分の生活はいくら稼げば成り立つのか。完成した収支表(家計簿)は、あなたの「人生のムダ」の映し鏡となる。それを把握した状態で生きることが、お金への焦りや、お金を失う恐怖からの解放につながる「自由への近道」なのである。

ミニマム・ライフコスト+自分の好きなこと。私の場合は読書、テニス、旅行、ハイテクツール。好きなことを、単に消費するだけではなくて、そこから何かを生み出そうとすると、すごく濃い時間が費やされるようになり、意外とお金がいらない。例えば、本を読むにも、いい本だったらちゃんとアウトプットにつなげたり、テニスをやるなら、レッスンを漫然と受けるだけでなく、上達するために工夫を考えたり。高い旅行や高いハイテクツールにキリはないですが、本当に欲しいものを丁寧に選び、それを徹底的に味えば、満足度、経験値という観点から、浪費ではなく大切な消費となるのではないでしょうか。

日々の生活でも、モノを厳選する「ミニマム思考」を持って過ごさないと、身動きがとれなくなる。結果、それはあなたの行動力を低下させ、自由の喪失につながってしまう。モノを増やさないコツは、「あればいいかも」ではなく「なくてもいいかも」に焦点を当てること。つまり、足し算ではなく「引き算思考」。なにかを両手に持っている安心よりも、手ぶらで生きる感動的なまでの自由さを、ぜひ体感してみてもらいたい

少しずつ持ち物を減らしていってます。通勤時にカバンもリュックも持たず、ボディバッグだけに。身軽というのは快適なものです。クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんも昔から勧めている手ぶら通勤も試してみました。通勤の移動も、手ぶらだと散歩のような気分になれます。これまでコストだった通勤時間が、クリエイティビティを高めるリラックスタイム、体を鍛えるパワーウォーキングタイムにも化けるかもしれません。

「クレイジーになって突き詰めてきたこと」を具体的な言葉で表現すると、「人生でもっとも多くの情熱、時間、そしてお金を投資してきたこと」になる。 

モバイルボヘミアンとして生きるには、「自分が本当にやりたいこと(大切にしたいこと)」を明確に持ち、表現し続けていることが絶対条件となる。そもそも、「なにを中心に生きたい?」と聞かれたとき、あなたは即答できるだろうか。ぼくの場合はそれが「フライフィッシング」や「冒険」であり、「湖畔で暮らすこと」であり、「ニュージーランド」だった。ナオさんの場合は「サーフィン」や「飲食」であり、「海辺で暮らすこと」であり、「ハワイ」だった。

私は即答できないので、本当のモバイルボヘミアンにはなれないかもしれません。「転職の思考法」で北野唯我さんが、人間は次の二つに分けられ、大多数は後者だと言っています。「to do に重きをおく、すなわち、何をするのか、明確な夢や目標を持っている人間」と、「being に重きをおく、どんな人、どんな状態でありたいかを重視する人間」。そしてそれでいいんだと。こんなサラリーマン、父、夫でありたい。そうあるために、モバイルボヘミアンの生き方の、自分に必要な部分をしっかり取り入れる。それもありだと思います。

「1つの宗教だけしか知らない者は、どの宗教も理解していない」という欧米のことわざがある。これは、「比較対象がなければ、ずっと信じてきたものが正しいかは決してわからない」という意味だが、「日本の常識しか知らない=1つだけの常識を盲信して生きる」ことの危険性を、ぼくは指摘したいのだ。年に1回でいい。今あなたが暮らす環境とはまったく違う、新しい国、新しい街、新しい土地に行ってみてほしい。いつもいる場所でなんとなく植えつけられてしまった、「固定化された常識や当たり前という呪縛」から少しでも距離を置くことができれば、その旅は成功だ。

年に1回、新しい街に行ってみる。その旅で、自分の固定観念、常識とは違う新しい気付きを1つ見つける。新しい土地に行く度に自分にとって新しいことを1つ発見する。それを心がけて次の一年を過ごしてみます。

どうなるかはわからないけれどチャンスもあるし、テクノロジーの後押しもあるから、どんどん実験してみよう」と思える人は、このチャレンジを楽しめるはずだ。「人生は壮大な実験」だ。先駆者がいないからこそ、自分が実験台となって、望むままに行動する。答えがないからこそ、実験自体を楽しむことができる。自由でチャレンジングな思考を持てるかどうかが、モバイルボヘミアンとして生きるうえで重要なことだ。

まず、なによりも大切なことは、自分の働き方や生き方に対して、常識に縛られない自由で柔軟な発想を持つこと。つまり、クリエイティブに考える習慣を持つ、ということだ。長い通勤時間がわずらわしいのなら、週1回オフィスに行かなくても仕事ができるやり方をゼロベースで考え、会社に交渉してみる。営業は得意だが事務作業が苦手なら、アウトソースできるウェブサービスはないかを調べて、実際に試してみる。1つひとつは小さなことかもしれないが、既存の常識や違和感を鵜呑みにしたり、あきらめたりするのではなく、「どうやったらできるのか?」、「今までとは違うやり方はないか?」と考え続けることが、クリエイティブに生きるということ。

音声認識の「Siri」を使いこなすことだってそうだ。ちょっとしたことだが、旅するように生きるには「楽をするための努力」が不可欠だ。

プロの個人として生きるためには、心と体のメンテナンスがとても大切だ。精神と肉体は、お互い大きな影響を与え合っているのはご存じのとおり。年齢に関係なく、この2つのメンテナンスの成否が、すべてのパフォーマンスに直結する。

集中力がもっとも高くなる午前中をクリエイティブワークの時間にあてる。内容は日によって執筆だったり、デザインプロデュースの仕事だったりとさまざまだ。午後は、人間の集中力は下がる傾向にあるため、創造性を要する仕事ではなく、メールや雑務処理を行ったり、「Skype」ミーティングを入れる。

プロジェクトチームは会社のルーティンプロセスが必ずしも適用されていません。時間の使い方も自分から提案していくことでコントロールできるので、午前中に考える時間を確保する。考え続けるのって結構根気がいります。一通り仕事が終わった後に、と考えていても難しいので、午前中に時間をブロックしておく。そうしてまとめた考えをもとにミーティングをするのが効率的です。

午後になると街に出る。だいたい1日10キロから20キロは歩き、あるいはレンタルサイクルで20キロから30キロと走る。これは、街を見ること、インスピレーションを受け取ることが目的だが、旅先でなまりがちな体を鍛えるトレーニングも兼ねている。

ちなみに、東京でのメインの移動手段はクロスバイク(自転車)だ。旅のときと同様に、1日に数十キロ走りまわる。自転車は、都内においてもっとも移動効率がいいことに加え、いいトレーニングになるというメリットがある。

都内は本当に自転車移動が向いています。都心で赤い電動自転車を見かけることが増えました。主要駅や大きなビルの近くにポートが増えていて、30分150円と電車並みのシェアサイクル。変化の多い東京の風景を見ながら街を走るのは朝の満員電車より心地も良いです。帰りは朝ほど混んでいないし電車で帰ろう、なんてフレキシブルに動けるのもシェアサイクルの良さですね。現状だと、夜は充電切れの自転車が多いという難点もありますので。

「移動し続ける生活」と聞くと、すごく楽しそうな響きがあるかもしれないが、ある意味、安定とは逆の生活であるため、肉体的には過酷であることは言うまでもない。体と脳のパフォーマンスをつねに高く維持するために、体調とメンタルを安定させる必要がある。そのために、睡眠、トレーニング、食事といった「ライフスタイルインフラ」を整えることに、徹底的に気を使っているのである。

新幹線の移動を快適、有効に過ごし、リラックスして帰宅したつもりでも、やはり1日働いて、東京-大阪間を移動した後の体は疲れています。必要な睡眠の時間を優先的に確保する。隙間時間に筋トレ等を楽しくやる。計画的にスポーツをする。美味しいものをしっかり食べる。深酒や夜更かしを減らすべく飲み会は楽しく早く切り上げる。こういった積み重ねが大事ですね。

超フレキシブルで自由度が高い生き方だからこそ、体はもちろん、特に心の調子とライフスタイルを安定させるために、逆に「ルーティンを決める」、「習慣を決める」ことがとても重要になってくる。

フロイトが、Most of people do not really want freedom, because freedom involves responsibility, and most of people are frightened of responsibility. 多くの人は本当には自由を望まない、なぜなら自由には責任が伴い、多くの人は責任に尻込みするから。と言ったそうです。自由を選びとるため、自分に責任を持ち、自分の人生をしっかりコントロールしていきましょう!

モバイルボヘミアン 旅するように働き、生きるには

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