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『凡人のための地域再生入門』地域活性化したくなっちゃう小説 ②

  地域再生を促進したい筆者が同志に共有したい、成功に必須なロジックと、苦難に打ち克つためのエモーション、その両輪を伝えるべく、小説形式で地方での事業のリアルが描かれています。

  シンプルに面白い。筆者の実体験がベースとやるストーリーは現実的、気弱な主人公が全くヒーローでないのですごく身近。地域再生、地域における事業成功に必要なことを理解するには、ストーリーをたどるのが一番いいと思いますので、是非ご一読ください。

  多くのコラムや注が差し込まれていて、その情報をフックにググると多くの新発見が得られるのも楽しいです。地域再生という主題を越えて、働く人として大切なことに気づかされることもありました。人生100年時代、一つの会社でサラリーをもらうだけでなく、自分や家族の地元、地域に関心を寄せることは新発見を与えてくれます。いくつか気になった箇所を具体的にご紹介。

 

 下記のオガールプロジェクト。岩手県の地方部に、民間でセンスのある店を集めてこれだけの成果を上げているとは。

 財政難で公共施設整備が困難だった岩手県紫波町が、民間資金で様々な施設開発を行って成果をあげたオガールプロジェクト。しかし、当初はパブリックプライベートパートナーシップ、通称PPPと呼ばれるその開発手法そのものがよくわからないと、地元紙に「黒船来襲」と書かれるほどの猛バッシングを受けます。しかし開発が成果をあげ、年間のべ約100万人の集客、周辺住民の増加、4年連続の地価上昇、税収の増加といった結果を見て、当時の反対者も「もっと早くできればよかった」と口を揃えました。

 上記は注釈パートなのですが、この事例は下記のように小説パートでも活かされています。サラリーマンでも、本社と現場、営業と他部署といった立場の違いから、自分の企画に「NO」と言われる、注文をつけられることはよくあります。一見障害なんですが、見方を変えて、すなわちアドバイスに変えて、キチンと対応すると、企画が良くなる事ってあります。そのように捉え直して活かせるかは訓練ですね。

「そういえば勉強会のとき、岩手で産直施設をつくった人が、同じように産直だけだと変動の幅が大きすぎて、安定収入がないから融資を受けるのが難しかったと言ってたよね。そのときは、産直施設に地元の有力な肉屋と魚屋をテナントとして入れて安定して家賃収入が入るようにして、いい条件で融資を引き出したんだって。僕らも、何かそれをヒントにして考えたほうがいいかもしれない」

「金融審査を経て事業が強くなり、地域の力となることもあるのだ。」

 下記注釈にある都市公園法改正。活用事例をググってみてもあまり見つかりません。それをツイッターでつぶやいたら、「この仕組みを活かすには、大阪城公園の例などある程度の規模が必要」というアドバイス。公園✖️店舗という相乗効果が期待できても、人々が行きたい、体験したいと思わせるだけの魅力がなければ、当然人は集まりませんよね。そういう考え方はこの本の中でも繰り返されていて再認識させてもらいました。

日本では戦後、公園は禁止事項ばかりで何もできない場所となってしまったが、明治時代には公園で事業が営まれるのは当たり前だった(日比谷公園にも松本楼というレストランが開園当初からある)。ニューヨークでは公園の一部での営業権を売却することで財源を確保し、中でもマディソン・スクエア・パークに出店したシェイクシャックという小さなハンバーガー店はいまや上場し、日本を含め世界各地に展開する企業へと成長するなど、新産業の拠点にさえなっている。しかし、日本では公園予算は削られるばかりだ。日本でも都市公園法が大きく改正され、新たな時代に対応した公園の再編成が求められている。

 下記くだりでは、自分の失敗を思い出しまた。昔アメリカ出張の帰国後に本部長にどうだったかを聞かれて「すごく勉強になりました」と答えたところ、「お前に勉強させるために高い出張費出しとんちゃうで!」とツッコまれ…

勉強会は、あくまで事業化プロセスの一部にすぎない。自己目的化して「勉強になった」「いい話を聞いた」などと言っているようではまったく意味がない。具体的に事業化しようとしている内容をもとに、必要な情報を複数回に分解し、それぞれ最適な人を呼び、聞いた内容を具体的なアクションに反映させること。実践してようやく学んでいる内容がわかることも多々ある。

自分の財布からお金を出さなければ、「やってもやらなくても自分に損害はほとんどない」と考える人がたくさんいる。タダだからと軽い気持ちで受講し、ためにならないと思ったら途中でやめてしまう。ときにやる気のある人がきたとしても、まわりはほとんどやる気のない暇な人ばかり。そして本気の人から離脱する。何も、法外な金額を払わせようというわけではない。フェアな対価をみなが出し合って勉強会を行えば予算など必要ないし、その対価を支払った分、事業化して元をとろうとするからこそ、物事はカタチになるのだ。 

 経験を、いかに商売、売上につなげるか。大組織にいると一日中会議してたりもしますが、自分も他メンバーにもどれだけ意味のある時間にするか。手ぶらで帰らず、常に何かやる。肝に銘じます。

  すぐに地域再生に関わる予定ではないですが、時々読み返し、働く人としての力を、会社の中でも磨いていきます。

 

地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門

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