25. 妻のトリセツ 黒川伊保子 <夫婦ゲンカを劇的に減らす説明書>

 本との出会いに遅すぎることはない。今週出会ったこの本は、これまでの僕の失敗があってこそ、こんなに心に響くんだろう。そうでも思わないと、もっと早く出会えれば、妻の怒りの地雷をこんなに踏み続けなかったのに、とぼやきたくなるぐらいに「あるある」に満ちてる。初めて読んで迎えたこの週末から、早速我が家の平和にも寄与しています。妻歴数十年のAI科学者によるアドバイスは、夫の左脳にもハートにも響くこと請け合い。

すでにケリがついたはずの過去の失敗を、まるで今日起きたことのように語り出し、なじる妻。これは、男の飲み会で妻の愚痴として出てくる定番のテーマだ。 「はじめに」でも触れたが、女性脳は、体験記憶に感情の見出しをつけて収納しているので、一つの出来事をトリガーにして、その見出しをフックに何十年分もの類似記憶を一気に展開する能力がある。つまり、夫が無神経な発言をしたら、「無神経」という見出しがついた過去の発言の数々が、生々しい臨場感を伴って脳裏に蘇ることになる。

 大喧嘩になったときに、突然10年前の新婚当初の苦情まで遡られるのはこういうことだったのかと。。そんな時に火に油を注がないためには、ひたすら謝ることらしい。

さて、ここまでを読んで、「取り返しのつかないひとこと」を思い返して遠い目をしている、過去にやらかしてしまった男性諸君。もし妻が、未だにそのときのことを恨んでいるのなら、そのネガティブトリガーを慰撫する方法もある(残念ながら完全ではなく、再び恨みが蘇ることもあるのだが)。  これは、妻が怒っている最中に行ってもあまり意味がない。とはいえ、「またその話か(ため息)」「何回謝れば気がすむんだ!(逆ギレ)」は、絶対にやめよう。年々重みを増すネガティブトリガーの芋づるを盛大に引っ張り出すことになるだけだ。  まず、知っていてほしいのは、「なじる人は傷ついている」ということだ。1週間前の出来事であろうと、30年前の出来事であろうと、なじっているのは、今、この瞬間も心が傷ついているからなのである。  解決方法は、真摯に謝る。それしかない。「もう何度も謝ったけど」と思うかもしれない。しかし、男性は謝っているつもりで、なんでそれを言ってしまったか、やってしまったかの理由や原因を言い募りがちだ。

 あなたはいつも言い訳ばかり!と、さらに怒られるのはこういうことだったのね。。

 男性脳は理由やネクストステップを確認したくなるものですが、女性脳はひたすらに「共感」が大切なようです。それを意識して行動できるかが、改善の第一歩のよう。

女性脳の、最も大きな特徴は、共感欲求が非常に高いことである。「わかる、わかる」と共感してもらえることで、過剰なストレス信号が沈静化するという機能があるからだ。

もう一つ、共感は女性脳にとって知的行為の核でもある。女性脳は、体験データ(記憶)に感情の見出しがついているので、ある感情が起こったとき、その感情の見出しをフックにして、類似の体験データの数々が、芋づる式に一瞬で引き出される。面白いのは、他人の体験であっても、共感して感情の見出しがつけば、自分の体験と同じように扱える点だ。他人の体験談を「とっさの知恵」に変えるのが、共感という行為なのである。つまり、女友達が、「階段でつまずいて、転びそうになった怖さ」に共感すれば、自分が同じようなつま先の細いパンプスを履いて駅の階段を下りるときには、無意識のうちに手すりのわきを行くことになる。オチのない話が、明日の自分を救うのだ。

女性は、共感されるとストレスが解消される脳の持ち主なので、共感こそが、相手の脳への最大のプレゼントなのである。つまり、女の会話とは、「日常のささやかな体験」を相手にプレゼントし、受けたほうは共感で返して、「しばしの癒し」をプレゼントする、いわば共感のプレゼント大会なのだ。 

女が、男との会話を不毛に感じるのは、男たちが「自分の身に起こった、ささやかなこと」をプレゼントしてくれないからだ。「今日会社で、こんなことがあってさ」みたいな話。オチがなくていいのである。「お茶を入れようと思ったら、お湯がなかった。昼一番なのにポットが空って、そりゃないよな」みたいな話で十分だ。小さな愚痴ほど価値がある。

ついでに、「当番の新人さんに何かあったんじゃないの?」なんて、女性らしい妻の気づきに、「あー、そう言えば、そうだった」なんて夫が溜飲を下げたりして、なんらかの役に立ったと思えれば、妻としては「夫の人生に参加している」感を得られて、結婚満足度が上がる。  解決策がなくても、女性は必ず「あー、それはがっかりね。今どきの若い子はダメね」なんて、愚痴への共感で落としてくる。女性は、共感されるとストレスが解消される脳の持ち主なので、共感こそが、相手の脳への最大のプレゼントなのである。つまり、女の会話とは、「日常のささやかな体験」を相手にプレゼントし、受けたほうは共感で返して、「しばしの癒し」をプレゼントする、いわば共感のプレゼント大会なのだ。なのに、男は、どちらのプレゼントも出しおしみする。……というか、子育てに疲れている妻に、会社のつまらない話なんて到底聞かせられない、という男心で、封印してしまう。さらに、男性脳にとっては、共感よりも問題解決こそがプレゼントなので、共感を端折って、「○○すればいいんじゃない?」「やらなくていいよ、そんなもん」と、いきなり問題解決してしまうのだ。  かくして、女たちは、「思いやりがない」「私の話を聞いてくれない」「いきなり、私を否定してくる」となじってくるのである。

 私が妻のネガティブトリガーを引きがちなのが、意見の合わないことに対して否定してしまうこと。

どのように対応すれば妻のネガティブトリガーを引かずに、問題解決ができるのかを考えてみよう。まず、多くの夫が気づかずにやってしまうのが、いきなり否定形を使うこと。たとえば、妻は長男に私立小学校を受験させたいが、自分は公立の小学校に入れたい場合。妻に「私立を受験させたい」と相談されて、いきなり「受験の必要なんてない」「うちにそんな余裕はないでしょ」「親同士の付き合いだって大変だ」とやってしまう。妻は自分の主張のメリットしか言わず、夫は相手の主張のデメリットしか言わない。これでは、いくら話し合っても折り合いがつかないはずだ。  そんなときこそ、男性が得意な「ビジネスプレゼン」のメソッドを思い出してほしい。簡単に手順を説明すると以下のようになる。 ①双方の提案に対して、互いにメリットとデメリットを挙げる。 ②実際に調べて検証する。 ③デメリットを回避する消極的なメリットではなく、互いのゲイン(手に入れられるもの)も示す。 ④以上を踏まえて、結論を出す。

女性脳は、「心の通信線」と「事実の通信線」の2本を使って、会話をする。たとえば、友達の「事実」を否定しなければならないとき、女性は、まず「心」を肯定する。「あなたの気持ち、よくわかる。私だって、きっと、同じ立場なら、同じことをしたと思う。でも、それは間違ってるよ」というように。  男性脳は基本的に「事実の通信線」のみである。「それ、違ってる」といきなり結論を出す。悪気はないのだろうけれど、「心の通信線」を〝わざと〟断たれた、と女性は感じるのである。

まず、女性脳では会話の感じ方が4パターンある。 ①心は肯定─事実も肯定 ②心は肯定─事実は否定 ③心は否定─事実は肯定 ④心は否定─事実も否定  女性脳同士の会話では、基本③と④は使わない。つまり、事実を肯定しようが否定しようが問題ないのだが、共感のために会話をする女性脳は、心=気持ちを否定したら会話が成り立たないだけでなく、人間関係が成り立たないのだ。

事実を肯定するときも否定するときも、その前に、妻の心根は肯定してやる。これこそ、夫が知っておくべき「黄金のルール」である。

 心さえ肯定しておけば、事実は、どっちに転んでも大丈夫。逆に言えば、無責任に「そうそう、そうだよな」と言っていいのである。この黄金ルールを覚えておけば、いらぬ地雷を踏まずに、自分の意見を通せるので絶対に楽になる。

女性脳との会話の黄金ルール」その2、魔法の言葉「君の気持ちはわかる」を使うこと。

 また、女性脳はプロセスを非常に大切にするのに対し、男性脳は結果を重視する。だから記念日は、1ヶ月前から妻が楽しみなことを約束しておくと、それまでの過程をエンジョイして大いに気分が上がるらしい。逆に、プロセスがないと逆効果になることもあると。これで自分がちょいちょい失敗してきたのが、サプライズプレゼント。

念のために伝えておきたいのは、だからこそ、どんなに夫が準備に手間暇かけたとしても、サプライズを喜ぶ妻はほとんどいないということだ。  誕生日にデートしようと誘われて出かけると、予告もなしに連れて行かれたのが高級フレンチレストラン。食事が終わり、キャンドルの炎が揺れるバースデーケーキが運ばれてくる。と、同時に、楽団がバースデーソングを演奏し始め、あらかじめ預けておいたバラの花束を渡されて……と、こんなロマンチックな演出をされても、あまり嬉しくない。どころか、その場に合わない(と男性は気づいていないが)服装や、完璧でないヘアやメイクの姿のまま注目を浴びることが恥ずかしいし、惨めに感じていたりする。何よりもその日を思い描きながらドレスを選んだり、美容院に行ったりする、そういう楽しみを全部奪われてしまったことが悲しいのだ。妻の気持ちを考えないサプライズは、時として、特大ネガティブトリガーを作り出す。これもぜひ覚えておこう。

 

妻のトリセツ (講談社+α新書)

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