22. 夫に死んでほしい妻たち 小林美希 <妻視点の不満の理解からよりよい夫婦へ>

 過激なタイトルに夫としては一瞬動揺しますが、真面目な面白い本です。著者は女性の就業継続等に精通した、団塊ジュニア世代の女性ジャーナリスト。いったい何が、妻たちをそう願うまでに追い詰めているのか。その原因を紐解いていけば、社会に共通の問題が見えてくるのではないか。インタビューに登場する多く取材対象者の妻たちのダメ夫に対する不満が、シリアスだけどしめっぽくならないあたり、著者の文章力も高く、読みやすい本です。

 読んでみて、「離婚したい」ではなく、「死んでほしい」と思う妻たちの気持ちの方が理解できる気がしました。ちょっと怖いけど。人並みに稼ぎ、浮気も浪費もせず、週末は家事を手伝い、子供と仲の良い夫。でもすごくイヤ。経済力や子供のことや世間体など、いろんな理由があって、離婚は望まない。でも、「死んでほしい」(もちろん倫理観があるので殺しはしないし、めったなことでは言わない)。本書の例を読んでいると、結構ありそうだな、と納得してしまいました。

 キャバクラで収入を使い果たして耐乏生活を強いるとか、子宮摘出した妻に「女として終わったな」と言い放つとか、老後に過去の浮気の思い出話をするとか、そりゃ「死んでほしい」と思われるでしょ、そんなこと普通やらないよっていうエピソードもあります。でも、自分もやった、言った、そんな心当たりのあるエピソードも複数あって。それはつまり、同じことが世の中でたくさん起きてる、多くの女性が被っている不合理がこの社会にある、それが彼女たちの尊厳、プライドをいたく傷つけているんだなと。そして女性という生き物は共通して、過去の恨みは忘れないんだと。

 夫のキャリアと同じぐらいには妻のキャリアを重要視してない。夜泣きする赤ちゃんの世話を、明日の仕事に差し障るからとすべて妻に任せる。無収入であることに引け目を感じている妻に、プライドを傷つけるような発言をする。食べ物の恨みは恐ろしいのに、妻が食べる食事をちゃんと手配しない。送りから迎え、料理から片付け、面倒なところを完結していないのに家事をした気になっている、などなど。だからといって、夫の収入は欲しいし、子供の父親も大事だし、世の中生きづらくなるしで、離婚はしたくないけど、死んでくれたら、保険も入るし、すっきりする、って思うことがある妻は多いんでしょうね。本気ではないにしても(と願う)。

 離婚や死別前提の夫婦関係を望むより、「対等である関係を築いた方が前向きではないか」という著者の最後の意見はもっともです。出来ることを対等にやるべく頑張ろう、と思う夫でした。

夫に死んでほしい妻たち (朝日新書)

夫に死んでほしい妻たち (朝日新書)