11. 未来の年表 河合雅司 <20年後の働き方を考える>

 インバウンドの取り込み方などでGDPの推移は変動するにしても、人口動態は大きくぶれないはずなので、著者の語る将来の日本の「人口減少カレンダー」は基本的に非常に正しいと思われる。

いくつか個人的なターニングポイントとなりそうな年をあげると、

2025 東京都の人口が1398万人とピークを迎える

2030 団塊世代の高齢化で東京郊外にもゴーストタウンが広がる

2033 空き家が2167万戸を数え、3戸に1戸は人が住まなくなる

2040 全国の自治体の半数近くが「消滅」の危機に晒される

2050 世界人口が97億3千万人となり、日本も世界的な食料争奪戦に巻き込まれる

 人生100年時代のこれから、75歳ぐらいまでは現役で仕事をすると考えると、30年先までの的確な見通しは将来を考える上で役に立つ。日本の全国規模、10-20年の時間軸で考えると、土地の値段は必ず下落する。東京も、2022年から生産緑地が固定資産税優遇制度終了で大量に不動産マーケットに登場、さらに人口もピークを迎えるとあっては下落することになりそう。20年後、まだまだバリバリ働いているころに、不動産市場は大きく様変わりしていそうだから、フレキシビリティはもっておかなければ。

 この本の建設的なところは人口激減社会に対峙するための処方箋も提案していること。楡周平の「プラチナタウン」「和僑」という連作小説の、地方の良さ、日本の良さを適材適所で商品化し、海外とつないで持続的なビジネスにする、というストーリーと合致して面白かった。4つの処方箋のうち【少子化対策】は個人とはあまり関係ないので、それ以外の3つを、いくつかのアイディアと絡めてご紹介。

【① 戦略的に縮む】

・低家賃の高齢者住宅:まずは空き物件活用。シェアテクノロジーの発達とあいまって日本中でニーズが高まるはず。そして新幹線沿線の地方への移住。毎日の通勤ならハイコストだが、ワークフロムホームの勤労世代がたまに東京に出る、引退世代が孫が遊びに来やすく家族とつながりを保てる範囲で暮らすには圧倒的にローコスト。都市部と地方部が飛び地合併して行政サービスや人的交流がつながればより利便性が増す。

・便利すぎる社会→不便を楽しむ社会:24時間営業のスーパーや当日配送のECは確かに便利だが、情報発信やマッチングがローコストになった今、不便そうに見えて楽しいことのニーズはある。街で若い主人が営む、新鮮で安くてちょっとこじゃれた八百屋とか、山奥だけど日本情緒にあふれて外国人SNSに多く投稿される宿屋とか。

・非居住エリア明確化:限界集落とまではいかずとも、インフラ維持が困難な地方都市は多い。いくつかの拠点、行政施設、高齢者住宅、ショッピングセンターなどの核施設を、コストの安い公共交通機関、近い将来なら自動運転の乗り合いタクシーなどで結ぶ。各拠点には人と商業がより集まる仕組みを作るとともに、徐々に周辺部のインフラサポートを手仕舞いしていく。

・国際分業の徹底:国のレベルで得意、不得意を考える。不得意、すなわち生産性が上がらなかったりニーズがなくなりつつある分野に限られた人的リソースは割かない。それよりも、得意とする分野、高品質で輸出可能な食材であったり、外国人に人気の観光資源を活かす事にマンパワーを集中する。これまで宝の持ち腐れだった地方空港も、インバウンドや輸出に活かす。

【豊かさを維持する】

・少量生産、少量販売:イタリアのように独自のデザイン力、技術力で、限られた市場であっても世界のナンバーワンを目指す。地方に生きる「匠の技」と、最先端技術、デザイン、海外市場のニーズなどと組み合わせることで競争力を確保し、地方にもそのようなビジネスに必要な人材の雇用を確保する。

【脱・東京一極集中】

・中高年の地方移住推進:リタイア前後の元気な50、60代を「キャンパス」に呼ぶ。50歳にもなると、サラリーマンなら出世レースの先が見える。同時に次のチャンスに挑むギリギリのタイミングでもある。田舎で土いじり、は1年もたたず飽きてしまっても、改めて勉強、起業、転職、指導、といった環境があれば、気持ちも若返るだろう。

・セカンド市民制度:上記の人の家族や、帰省先を持たない都会住民のための第2の居住地として登録してもらう。ゲストハウスや直行バスなどのサービスを整える。また特定の研究分野のためのインフラを整えて集積する。人口激減時代に定住人口を取り合うのではなく、人々の活発な交流、動きを促進して「ファン人口」を増やすことだ。