30. FACTFULLNESS ハンス・ロスリング <データの時代にデータを正しく見る>

 正しく判断するためにデータを集める。バイアス、思い込みを持たずにデータを見る。状況を正しく理解するために適切にデータを分析する。データの活用がビジネスの勝敗を分ける時代、この大事で、難しいことを、大変わかりやすく教えてくれる本です。オバマ元大統領やビル・ゲイツが絶賛したのもうなずけます。

 本書の最初に紹介されたチャートの引っ掛けは、人が本能的に思い込みに囚われやすいことを実感として気づかせてくれます。「「発展途上国」では母親が生む子供の数は多く、子供が乳幼児期に死ぬ確率は高い」。わかりやすく構図を説明した下記バブルチャートは、いたって常識的で、私もあっさり引っ掛かってしまいました。

 実は上図は1965年のもので、2017年には下図のように全く構図が変わっているのです。中国とインドという二大人口大国を表している2つの大きな円だけでなく、ほとんどの円が「先進国」と括った枠に入っているんです。

 自分が小学生の頃の知識のままで「発展途上国」は今でも出産数が多く、幼児の死亡率が高いと思い込んでいました。これは、「世界は分断されている」、自分たちと「あの人たち」は違う、そのように思い込みがちな「分断本能」を人が持っているからだそうです。この本はそのような10の思い込みの存在を教え、そこから自由になる手助けをしてくれます。さらに、代わりにより良く状況を理解するためのデータの見方も教えてくれます。例えば、先進国と発展途上国、という分断、もしくは分類がもはやほとんど意味を持たないとすれば、どうすればいいのか。

 まず、世界を2つに分けることをやめよう。もはやそうする意味はない。世界を正しく理解するのにも、ビジネスチャンスを見つけるのにも、支援すべき最も貧しい人々を見つけるのにも役に立たない。

 しかし、世界を理解するためには何らかの分類方法が欠かせない。古い呼び名と決別するのなら、代わりの呼び名を用意すべきだ。では、どういう呼び名がふさわしいのだろう。

 著者は世界を所得レベルに応じた4グループに分けます。呼び名は単純にレベル1、2、3、4。下記のように、ひとりあたりの1日あたりの所得、2ドル、8ドル、32ドル、3つの線で区切ると、世界人口70億人が下記のように分かれます。

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 「先進国」、「発展途上国」という分け方は文字通り国ごとの分類ですが、現実は、それぞれの国の中に複数の生活水準の人々が暮らしています。例えば中国とアメリカで生活水準が似通っている、と言われても違和感を覚えるでしょう。しかし、中国とアメリカのレベル4の人たちの寝室、移動手段を比べればほぼ同じようなものです。同じく、アフリカとアジアで遠く隔たっていても、レベル1の人たちの水の調達方法、調理方法なども似通っています。「Dollar Street」という、所得レベルごとに生活水準を写真で並べるツールによって、我々の理解を助けてくれます。

www.gapminder.org

 このように、本書は人が本能的に持ちやすい10の思い込みに気づかせて、状況を正しく理解するための適切なデータの見方を教えてくれます。会社でチームとビジネスを進めるうえでも、我が子に適切で広い視野を持ってもらうためにも、大変有益です。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

 

29. 凡人のための地域再生入門 木下斉 <示唆に富む素晴らしい教科書>

  私は生まれと育ちが都市部で現在サラリーマンをしているので、登場人物達と境遇は違います。しかしながら妻の地元が魅力ある地方部で、地域再生に興味を持って読みました。筆者が同士達に共有したい、成功するために欠かせないロジックと、苦難に負けないために必要なエモーション、その両輪を伝えるべく、小説形式で地方での事業のリアルが描かれています。

  とにかく面白い。筆者の実体験をベースにしたであろうストーリーは現実的で、気弱な主人公が全くヒロイックでないのも相まって、すごく身近に感じられます。地域再生、地域における事業成功のために必要なことを理解するには、ストーリーをたどっていただくのが一番いいと思いますので、是非ご一読ください。

  小説としてもちゃんと面白く、多くのコラムや注が差し込まれていて、そこに書かれている情報をフックにさらに調べると、多くの新発見が得られるのも楽しかったです。地域再生という主題を越えて、ビジネスマンとして大切なことに気づかされることもありました。

  人生100年時代、一つの会社でサラリーをもらうだけでなく、地元や家族が属する地域に関心を寄せることは新しい発見を与えてくれると思います。いくつか自分が気になった箇所をご紹介させていただきます。

 

 例えば下記で紹介されているオガールプロジェクト。岩手県の地方部に、民間資本でセンスのある店を集積してこれだけの成果を上げているとは。

 財政難で公共施設整備が困難だった岩手県紫波町が、民間資金で様々な施設開発を行って成果をあげたオガールプロジェクト。しかし、当初はパブリックプライベートパートナーシップ、通称PPPと呼ばれるその開発手法そのものがよくわからないと、地元紙に「黒船来襲」と書かれるほどの猛バッシングを受けます。しかし開発が成果をあげ、年間のべ約100万人の集客、周辺住民の増加、4年連続の地価上昇、税収の増加といった結果を見て、当時の反対者も「もっと早くできればよかった」と口を揃えました。

 上記は筆者が事例を注釈で紹介している箇所なのですが、この事例が小説の中でで下記のような一節にも活かされています。サラリーマンでも、本社と現場、営業と他部署といった立場の違いから、自分の企画に「NO」と言われる、注文をつけられることはよくあります。一見自分にとって障害なんですが、ものの見方を変えて、すなわちそれをアドバイスに変えて対応すると、企画がより良くなる事ってあります。そのような捉え方をして自分に活かせるかは訓練だなと。

「そういえば勉強会のとき、岩手で産直施設をつくった人が、同じように産直だけだと変動の幅が大きすぎて、安定収入がないから融資を受けるのが難しかったと言ってたよね。そのときは、産直施設に地元の有力な肉屋と魚屋をテナントとして入れて安定して家賃収入が入るようにして、いい条件で融資を引き出したんだって。僕らも、何かそれをヒントにして考えたほうがいいかもしれない」

「金融審査を経て事業が強くなり、地域の力となることもあるのだ。」

 例えば下記注釈にある都市公園法改正。興味を持って活用事例をググってみてもあまり見つかりません。それをツイッターでつぶやいたら、この仕組みを活かすには、大阪城公園の例など、ある程度の規模が必要、というアドバイスをいただきました。公園という相乗効果が期待出来る価値があっても、その地域の中で人々に行きたい、体験したいと思わせるだけのエッジがないと当然人は集まりませんよね。そういう考え方はこの本の中でも繰り返されていたのですが再認識させてもらいました。

日本では戦後、公園は禁止事項ばかりで何もできない場所となってしまったが、明治時代には公園で事業が営まれるのは当たり前だった(日比谷公園にも松本楼というレストランが開園当初からある)。ニューヨークでは公園の一部での営業権を売却することで財源を確保し、中でもマディソン・スクエア・パークに出店したシェイクシャックという小さなハンバーガー店はいまや上場し、日本を含め世界各地に展開する企業へと成長するなど、新産業の拠点にさえなっている。しかし、日本では公園予算は削られるばかりだ。日本でも都市公園法が大きく改正され、新たな時代に対応した公園の再編成が求められている。

 下記のくだりでは、自分の恥ずかしい経験を思い出しまた。昔アメリカ出張からの帰国後に本部長にどうだったかを聞かれて「すごく勉強になりました」と答えたところ、「お前に勉強させるために高い出張費出しとんちゃうで!」とツッコまれ…

勉強会は、あくまで事業化プロセスの一部にすぎない。自己目的化して「勉強になった」「いい話を聞いた」などと言っているようではまったく意味がない。具体的に事業化しようとしている内容をもとに、必要な情報を複数回に分解し、それぞれ最適な人を呼び、聞いた内容を具体的なアクションに反映させること。実践してようやく学んでいる内容がわかることも多々ある。

自分の財布からお金を出さなければ、「やってもやらなくても自分に損害はほとんどない」と考える人がたくさんいる。タダだからと軽い気持ちで受講し、ためにならないと思ったら途中でやめてしまう。ときにやる気のある人がきたとしても、まわりはほとんどやる気のない暇な人ばかり。そして本気の人から離脱する。何も、法外な金額を払わせようというわけではない。フェアな対価をみなが出し合って勉強会を行えば予算など必要ないし、その対価を支払った分、事業化して元をとろうとするからこそ、物事はカタチになるのだ。 

 仕事における経験を、いかに商売、売上につなげるか。大きな組織にいると一日中会議に追われたりしますが、自分も他のメンバーもどれだけ本気で意味のある時間にするか。手ぶらで帰ることなく、常に何かやる。肝に銘じたいと思います。

  すぐに地域再生に関わるつもりではないのですが、時々読み返し、自分の商売人としての力を会社の中でも磨いていきます。

 

地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門

地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門

 

 

 

28. プラチナタウン・和僑 楡周平 <人生100年時代に己は何をする>

 人生100年時代、日本の社会構造が変わる中で、地方の政治、経済が成り立っていくためには、やり方を大きく変えなければならない。元エリートサラリーマンが、町長として宮城県の田舎町で奮闘する、すごく面白い小説です。同時に、自分がサラリーマンとして20年以上働いてきて、これからどうするか。将来に想いを巡らせるきっかけにもなる、素敵な小説です。

  自分は都会育ちですが妻の実家が日本海側の小都市にあります。海と山に囲まれた素敵なところで、たまたま学生時代の友人がそこで仕事をしていることもあり、活性化して欲しいなと、考えちゃいますね。

 

プラチナタウンより

「だいたいこの町になんか売りもんになるもんってねえのかよ」 「大したものはねえなあ……」クマケンは思案を巡らすように天井を見上げた。「んでもね、一つ一つはその道にハマってる人には大受けするものがあんだよ」

  地域の人には当たり前でもすごい産物って色々ある気がします。精米したての新米の美味しさは都会育ちには衝撃。地魚の干物はうちの子供の好物。

真の公共事業とは、一時のカンフル剤であってはならない。恒久的に利益を生み、雇用を確保するものでなければならない。

  急場をしのぐ必要が生じることは、公共事業に限らずビジネスでは頻繁におきます。その場限り対応を繰り返して疲弊するか。対策を考える時に「長期的視野」の複眼を持って考えるか。後者が自分達を大いに助けるはず。

「う~ん。そう言われりゃそうかも知れんな。お前の言うように今の日本じゃ、すべての業種で派遣が大流行だ。俺も最近知ってびっくりしたんだが、ゴルフ場のキャディだって派遣だもんな。日によって業務量が違う職種や、単純労働、お天気商売なんて、皆派遣になっちまうだろうな」 「って、ことはだ。同じ広さ、同じクオリティの物件に住むなら、安いに越したことはねえ。そう考える人間が圧倒的多数を占める時代が来ると思わねえか」

  「プラチナタウン」が発行されたのが2008年。私のような団塊ジュニア世代が主人公達と同じ55才になるのが2028年ごろ。その頃には自動運転バスやリニアも営業開始して、距離の壁はさらに縮まるはず。一部の地方部に、新しい人口集積地が出来てもおかしくありません。

「場所がなあ……。やっぱ、都市部から地方っていうと、都落ちって感じが否めないっていうんだな」 「どうして都会で暮らしている人間は、揃いも揃って考えることが同じなのかな。この画一的思考回路、右へ倣えの行動様式が都市部への人口集中を生んで老後の暮らしを厳しいものにしてるってことに気がつかないのかね」

  距離の壁が縮まったとして、人が来るかどうかは魅力的な体験が出来るかどうか。一概に都市か地方かだけではないでしょうが、地域の特性や個々人のアイディアを活用して、資金的にも持続性のあるコンテンツを用意すること。その上で選んでもらえるに認知を高める、意識を変えるようにしていくことですね。

「私たちは組織の大きさに甘えて、多くのビジネスチャンスを逃してきたんじゃないかとね。時代の寵児となって莫大な富を築いた人間が続出したIT産業やブライダルビジネス。彼らが築いたビジネスモデルは、四井の資本力を以てすれば、もっと早く、かつ確実な方法でものにできたはずじゃありませんか。だけど実際は誰もそんな分野に目を向けなかった。もちろんアイデアとして考えた人間もいたかもしれない。しかし、組織に身を置く人間の性で、結局は失敗を恐れるか、あるいは小さな流れを本流に押し上げるには多大な労力と、時間がかかるといった理由で誰も手をつけなかった……そうじゃありませんか?」

  サラリーマンをしていると、上司や組織の期待に応えようと考えることが多く、自分が本当にやりたいことが何かを突き詰めて考えてこなかった気がします。やりたいことをシャープにして、とんがらせ、そこに労力を集中するとサラリーマンでも自分のやりたいことでビジネスチャンスをモノにできるのではないか。この一年、挑戦してみます。

「この地がいかに老後の生活を送る上で魅力に満ちあふれているのか、どんなパンフレットを作って、美辞麗句を並べ立てるより、体験に優るものはありませんからね」

  モノよりコトと言われて久しい。それではコトをどうやったら売れるか。小説では施設周辺の食やレジャーを体験する宿泊ツアーを企画。体験と顧客を結びつける仕組みを作ることが大事。

ツアーだけだとしても魅力的だし、実際に住もうという町を事前に体験できれば、移住への不安はかなりの部分解消できるだろうし、実感も湧くだろう。たとえ町が気に入らなかったとしても、ちょっとした旅行に出たと思えば、納得いくだろう

  地域の活性化は現在多くの人にとって関心事。サービスの認知を高めるためにも、サービスに必要なリソースを確保するためにも、メディアを上手く活用できれば。

「やはりこちらも入居者と同じように、メディアの力に頼るしかないでしょうね」  渡部は言った。 「メディアって……そんたに力があるもんだべが」 「以前にも申し上げましたが、今回の事業は社会の高齢化が急速に進む日本では、相当インパクトのあるものだと思います。永住型老人居住施設、町興しのモデルケースにもなるでしょうし、何よりも老後の過ごし方の概念を一変させることにもなると思います。もちろん、田舎に移れば都会に住むよりも生活コストは安いというのは誰もが知っていることです。ですが生活の質を落とさず、いや、むしろ向上させる。しかも民間と自治体が共同でこうした事業を行うというのは、たぶん初のケースだと思います。テレビ、新聞、雑誌。これから、あらゆるメディアが大きく取り上げることは間違いありません。そこで、同時に従業員の募集も行う―」

    ベストセラーとなった「未来の年表」でも人口減少ステージで持続的な社会を作るために、脱東京一極集中、中高年の地方都市移住を掲げています。都市部の大企業でスキルを身につけた中高年が柔軟な形で就労することは、ノウハウの欲しい地方の企業と双方にとってWin-Winとなる仕組みになると思います。

そこに週に二回程度、おいでいただいて働いていただければ、生え抜きの社員も大企業のノウハウを学ぶことができるでしょう。審査や法務に関する事柄は、最終決裁者である私にレポートが上がる前に、目を通していただき、問題点を本社の担当にフィードバックして貰う。こちらは書面でのやりとり、いわば添削ですから、メールや電話で業務をこなしていただく。重要案件であれば、本社から担当者をこちらに出向かせますから負担は小さいと思います。もっとも決算期には東京本社に出張してもらうことになるでしょうけど……。とにかく、私の目からしますと、ここはまさに宝の山なんです」 「なるほどねえ」 「もちろん、しかるべき報酬はお支払いしますよ。フルタイムというわけではありませんから、現役の頃の給料に比べれば、安いものでしょうけど、それでもちょっとした小遣いにはなると思いますがね」  悪い話ではないと思った。なるほど大企業の持っている仕事上のノウハウは、中小企業からすれば高坂の言うように、喉から手が出るほど欲しいものには違いない。それは高坂の会社だけではなく、近隣市町村に数多ある会社にも言えることだ。そして何よりも、移住してくる人間の人的リソースを再活用できるとなれば、会社経営については最高レベルにある知識を地場産業が労せずして手に入れるチャンスである。うまく人材斡旋の仕組みを造り上げることができたなら、地方産業の活性化、レベルアップにも繫がるだろう。

  年齢に応じた役割、楽しみ方を用意して効果を最大化する。示唆と夢に富み、今後挑戦していきたいと思います。

町は急速に活気を取り戻しつつあった。ここには都会の老人施設にありがちな、沈滞した空気はない。年寄りを集め、年齢に応じた生活の楽しみ方を提示すれば、絶大なるパワーを発揮するのだ。

 

プラチナタウン (祥伝社文庫)

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和僑 (祥伝社文庫)

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27. サピエンス全史 ユヴァル・ノア・ハラリ <人類はどのように文明を発展させ幸福に至るか>

 人類、ホモ・サピエンスが他の類人猿を圧倒して生き残ったのは「認知革命」があったから。その後にこれだけの文明を築き上げたのは、「農業革命」と「科学革命」があったから。そして人類の今後と幸福のためには何が必要なのか。

 スケールの大きなことを考えるきっかけになります。人類が発展した契機が認知革命、膨大な数の見知らぬ同士を共通の思いによって協働させる事だったとしたら、新しい科学、テクノロジーを使えば、また違った形で見知らぬ人同士を結びつけ、動かし、発展することが可能でしょう。また、農業革命が貨幣、信用経済を生み出したように、最先端の科学が新たな信用を生み出して、既に始まっているシェアエコノミーしかり、フォロワー数などに連動した信用供与などが、大きなビジネスとなるであろうことも想像されます。

 

<認知革命>

 7万年前、突然変異によって人類は抽象的な概念を共有できる能力を身につけた。膨大な数の見知らぬ同士でも、虚構、共通の神話を信じることによって、首尾よく協力できるようになった。単体の動物としての能力を大きく超えた共同作業が可能に。

 あらゆる人を納得させ、誰からも信じてもらえる物語を語ること。困難だが、成功すれば大規模な協力が可能に。そして、別の物語を語ること、信じることで、振る舞いを改めることが可能に。文化の進化が遺伝進化を迂回可能に。

<農業革命>

 単位面積あたりでより多くの人を生かしておく能力こそが農業革命の真髄。多くの人にとって、生活水準を上げるものではない。

 贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる。いったん慣れれば、当たり前と思い、頼り始め、なしでは生きられなくなる。古代農耕民は、貧しくとも増えた所有物を失いたくないので狩猟民には戻れず、将来の不安に備えるべく厳しい労働に勤しんだ。

 私たちが特定の秩序を信じるのは、正しいから、ではなく、それを信じれば効果的に協力して、より良い社会を作れるから。

 これまで考案された中で貨幣は最も普遍的で、最も効率的な「相互信頼」の制度。宗教は特定のものを信じるよう求めるが、貨幣は他の人々が特定のものを信じていることを信じるように求める。

<科学革命>

 1620年、フランシス・ベーコンは「新機関」の中で「知は力なり」と語った。知識の真価は、それが正しいかどうかではなく、私たちに力を与えてくれるかどうか。

 政治と経済が、科学の研究を支援し、科学は援助へのお返しとして、新しい力、資源の獲得を促す。そしてまた再投資が行われる。ヨーロッパの帝国主義者は、新たな領土とともに新たな知識を獲得することを望み、遠く離れた土地を目指して乗り出した。

 近代経済が信奉する「成長」とは、人間の驚くべき想像力の賜物。経済全体が、生き残り、繁栄できるのは、私たちが将来を「信頼」しているから。「信頼」が世界に流通する貨幣を支えている。「信用 Credit」に基づく経済活動によって、私たちは将来のお金で現在を築くことができるようになった。成長イコール正義、自由、安定であり、幸福は資本主義によってもたらされると。

<幸福とは>

 ニーチェは語った。あなたに生きる理由があるのならば、どのような生き方にもたいてい耐えられる。有意義な人生は、困難のただ中にあってさえもきわめて満足のいくものであるのに対して、無意味な人生は、どれだけ快適な環境に囲まれていても厳しい試練にほかならない。

 

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

 

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

 

 

26. 20歳の自分に受けさせたい文章講義 古賀史健 <文章で人を動かす>

 何のために文章を書くのか。それは動いて欲しいから。相手の心を動かしたい。社内の人と合意したい。未来の自分を変えたい。だから著者は、いい文章とは下記のことだとしています。

 「いい文章」とは、「読者の心を動かし、その行動までも動かすような文章」のことである。

 そのための文章を書くための要点を4つ、教えてくれます。ただしその前に、人を動かすために、前提として必要なものに、この本を読んで考えて気づきました。それは己の「主張」。自分が伝えたい主張がない、それは自分が何処に行きたいかわかってないということ。次に自分の伝えたい主張がはっきりしてなければ、相手が動きようがない。様々なコミュニケーションにおいて、自分は主張が曖昧だったことに大いに反省しました。

   本書では主張をうまく伝えて動いてもらうために「論理構成」が大切だと教えてくれます。必ず、「主張、理由、事実」の3層構造を守ること。これは、2018年のベストセラーである「1分で話せ (著者 伊藤羊一)」の、「結論、根拠、たとえば」で相手の右脳と左脳を動かそう、いうキーメッセージと同じ。ちなみに「相手を動かす」という掲げるゴールも同じ。思いを伝える、人を動かすために、本当に大切な要点だと思います。

   以下に本書が教えてくれる4つの要点をまとめます。

 

第1講  文章は「リズム」で決まる

リズムの悪い文章とは、端的に言えば「読みにくい文章」のこと。

文と文の「つなげ方」や「展開の仕方」がおかしいとき、その主張は支離滅裂になり、リズムよく読めなくなるのだ。

文章のリズムは「論理展開」によって決まる。

心を動かす文章。そのために一番大事なのはレトリックではなく、読みやすいこと。文と文が正しくつながり、論理の展開がわかりやすいこと。

美文よりも正文を目指しましょう。なぜなら文章本来の目的が「伝える」ことだから。「情感豊かに吹くことと、正しい技術で吹くことは、違う作業じゃない」というセリフが佐藤多香子さんの音楽小説にあるのですが、書くことも全く同じで、スムーズに頭に入ってくることで、情感も流れ込んでくるのでしょう。

 

第2講 構成は「眼」で考える

 読ませる。そして伝える。そのために、文章の構成は二つの三段構成に気をつけて。

まずは全体構成。文章には常に「読者」がいます。それが日記であっても「未来の自分」という読者がいます。そしてブログでも書類でも、読者は常に「読まない」という選択肢を持っています。彼らに読んでもらうために、映画の構成を参考にしましょう。

導入、本編、結末。導入は「映画の予告編」のつもりで

文章を読んでもらうために、まず導入部分では映画の予告編のように、興味を持ってもらうことが大切。インパクトのあるキーワードや結論を提示、核心部分を気になるところで寸止め、骨子・サマリーを最初に紹介、といった3つの方法で、読み手の立場にたって、興味が持てるように客観的に伝えましょう。

本編で伝えるのは、上記に対する自分の意見、仮説。ここは思い切りズームインして主観、主張を伝える必要があります。

結末では、再び客観的な視点からまとめなおす。自説を「風景の一部=動かしがたい事実」として描くわけです。

次に論理構成。論理とは、「論」が「理」にかなっていること。論=主張がなければ文章を書く意味がない。理=理由がなければ、立派な主張も中身が空っぽ。当然主観的である主張は、客観的な「事実」に裏打ちされることで、意見の正当性が増すわけです。

主張、理由、事実。マトリョーシカのような3層構造が守られているのが、論理的文章なのである。

 

第3講 読者の「椅子」に座る

  コミュニケーションを通じて相手に動いてもらう。そのためには相手の立場に立って考えること、とはよく言われることです。筆者は、読者の隣に「立つ」だけでなく、読者と同じ椅子に「座ること」、同じ目線で景色を見て、読者に伝わる言葉で書くことが必要だと言います。そのためのコツを教えてくれます。

 まず、全ての読者と同じ経験が出来るわけはなく、我々が本当の意味でその椅子に座れる読者は二人だけ。「あのときの自分」と「特定のあの人」。

 自分が伝えたい主張を、それを知らなかった昔の自分に伝えたい。あのときの自分が何に悩み、だからこそ今の自分が伝えたい情報がどう役に立つのか、どう伝えれば納得するのか、自分には手に取るようにわかるはず。その思いを乗せて書かれた文章は熱量が違う。言葉の強度が違うのです。

 10人読者がいれば10通りの読み方があります。だからといって、「多数派」を想定して、主張を抑えて、表現をぼやかしてしまっては、エッジのない面白くない文章になってしまう。「特定のあの人」を想定、設定する。その方が、言葉のベクトルがはっきりするため、「その他の人々」にも伝わりやすくなります。

 専門性に溺れた文章は、読者の予備知識に甘え、説明すべきところを説明しようとしていません。読者に甘え、本来やるべき説明を怠っているから、読みづらい。少しでも理解のパーセンテージをあげていくよう、ブラッシュアップする努力を怠ってはなりません。

 読者を「説得」ではなく「納得」させる。押し切るのではなく、読者に歩み寄ってもらう。人は他人事では動きません。こちらの主張を読者の関心と関連づけることが必要。実務の文章であっても、読者に一方的に「知識の球拾い」を強いるのではなく、読者に「仮説」を投げかけ、一緒に「検証」してもらうことでプレーヤーになってもらいましょう。

 自分が己の主張が正しいと思いいたるまでには試行錯誤があったはず。それをすっとばした「寄り道」のない一本道の主張は、読者には「納得」しがたいものがあります。文章の中で、自分にツッコミを入れる。流れとしては、主張、理由、反論、再反論、事実、結論、というように。読者の疑問にしっかり答え、キャッチボールを楽しみましょう。

 大きな主張、それは主観的な問題でありウソであってもまかり通るかもしれない。しかし、細部は客観的なものであって、そこにウソがあっては読者は決して納得しません。さらには、自分で理解していること以外は、ウソになるから書いても伝わらない。最大限自分で理解する努力をしたうえで、細部は正しく書きましょう。

 

第4講 原稿に「ハサミ」を入れる

 文章の入り口には、「元ネタの編集」という作業があります。

まずは頭の中の「ぐるぐる」を紙に書きだす。偏らないように、最初に出てきた傾向を持つキーワードと、それ以外のキーワードを出し尽くす。そこから、「何を書かないか」を決める。

 文章を書き終えてからは、「推敲」という編集作業になります。

推敲とは「過去の自分との対話」である。自分の文章にツッコミを入れ、時にほめながら読み進めていく。その際に「もったいない」は禁物。読者は書く時の悩んだ量ではなく、文章に評価を下す。各文が矢印でつながる図になりうるぐらい、論理的であるかをチェックする。

 

「いい文章」とは、「読者の心を動かし、その行動までも動かすような文章」のことであり、正しい技術で書いた文章は、情感も含めて流れ込んでくる文章になる。伝わる文章を書く力を身につけて、自分の思いを実現していきましょう。

 

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

 

 

25. 妻のトリセツ 黒川伊保子 <夫婦ゲンカを9割減らす>

 本書を熟読し、トリセツに沿った言動を実践すれば、毎週繰り広げられる夫婦喧嘩は9割方減るのでは。女性AI科学者で結婚歴数十年の著者が語る考察は、オットである自分にとって非常に説得力がありした。あるあるだらけです。とはいえ自分の言動を改める、それを徹底するのはすごく大変です。相変わらず失敗もします。それでも。私はこの本を読了した後に、娘が中学受験前の年末年始を迎えました。旅行にも行かず時間と余裕がたっぷりあったのと、大切な時期で夫婦ゲンカしてる場合じゃなかったので、この期間、そして受験が終わるまでの約1ヶ月、かなり意識して言動に注意しました。その期間、実感値として9割減です。世の中の夫の皆様に本書をオススメいたします。

すでにケリがついたはずの過去の失敗を、まるで今日起きたことのように語り出し、なじる妻。これは、男の飲み会で妻の愚痴として出てくる定番のテーマだ。 女性脳は、体験記憶に感情の見出しをつけて収納しているので、一つの出来事をトリガーにして、その見出しをフックに何十年分もの類似記憶を一気に展開する能力がある。つまり、夫が無神経な発言をしたら、「無神経」という見出しがついた過去の発言の数々が、生々しい臨場感を伴って脳裏に蘇ることになる。

 大喧嘩になったときに、突然10年前の新婚当初の苦情まで遡られるのはこういうことだったのですね。そんな時に火に油を注がないためには、ひたすら謝るしかない。つい言い訳したり(自分としては正当に理由を述べているつもりなんですが)、ふてくされたりしてしまいますが、とにかく争わないに限ります。

ここまでを読んで、「取り返しのつかないひとこと」を思い返して遠い目をしている、過去にやらかしてしまった男性諸君。もし妻が、未だにそのときのことを恨んでいるのなら、そのネガティブトリガーを慰撫する方法もある(残念ながら完全ではなく、再び恨みが蘇ることもあるのだが)。 これは、妻が怒っている最中に行ってもあまり意味がない。とはいえ、「またその話か(ため息)」「何回謝れば気がすむんだ!(逆ギレ)」は、絶対にやめよう。年々重みを増すネガティブトリガーの芋づるを盛大に引っ張り出すことになるだけだ。まず、知っていてほしいのは、「なじる人は傷ついている」ということだ。1週間前の出来事であろうと、30年前の出来事であろうと、なじっているのは、今、この瞬間も心が傷ついているからなのである。解決方法は、真摯に謝る。それしかない。「もう何度も謝ったけど」と思うかもしれない。しかし、男性は謝っているつもりで、なんでそれを言ってしまったか、やってしまったかの理由や原因を言い募りがちだ。

 冷静に対抗しようとしても、「あなたはいつも言い訳ばかり!」とさらに怒られるのは、私だけではなかったのです。このパターンが起きると、こちらもついつい頭に血が上りがちですが、男性のいいところは、ロジックで説明されると納得できるところ。このことを思い出して、事態を収拾しましょう。

 男性脳は理由やネクストステップを確認したくなるものですが、女性脳はひたすらに「共感」が大切なようです。それを意識して行動できるかが、改善の第一歩です。

女性脳の、最も大きな特徴は、共感欲求が非常に高いことである。「わかる、わかる」と共感してもらえることで、過剰なストレス信号が沈静化するという機能があるからだ。

もう一つ、共感は女性脳にとって知的行為の核でもある。女性脳は、体験データ(記憶)に感情の見出しがついているので、ある感情が起こったとき、その感情の見出しをフックにして、類似の体験データの数々が、芋づる式に一瞬で引き出される。面白いのは、他人の体験であっても、共感して感情の見出しがつけば、自分の体験と同じように扱える点だ。他人の体験談を「とっさの知恵」に変えるのが、共感という行為なのである。つまり、女友達が、「階段でつまずいて、転びそうになった怖さ」に共感すれば、自分が同じようなつま先の細いパンプスを履いて駅の階段を下りるときには、無意識のうちに手すりのわきを行くことになる。オチのない話が、明日の自分を救うのだ。

女性は、共感されるとストレスが解消される脳の持ち主なので、共感こそが、相手の脳への最大のプレゼントなのである。つまり、女の会話とは、「日常のささやかな体験」を相手にプレゼントし、受けたほうは共感で返して、「しばしの癒し」をプレゼントする、いわば共感のプレゼント大会なのだ。 

女が、男との会話を不毛に感じるのは、男たちが「自分の身に起こった、ささやかなこと」をプレゼントしてくれないからだ。「今日会社で、こんなことがあってさ」みたいな話。オチがなくていいのである。「お茶を入れようと思ったら、お湯がなかった。昼一番なのにポットが空って、そりゃないよな」みたいな話で十分だ。小さな愚痴ほど価値がある。

ついでに、「当番の新人さんに何かあったんじゃないの?」なんて、女性らしい妻の気づきに、「あー、そう言えば、そうだった」なんて夫が溜飲を下げたりして、なんらかの役に立ったと思えれば、妻としては「夫の人生に参加している」感を得られて、結婚満足度が上がる。  解決策がなくても、女性は必ず「あー、それはがっかりね。今どきの若い子はダメね」なんて、愚痴への共感で落としてくる。女性は、共感されるとストレスが解消される脳の持ち主なので、共感こそが、相手の脳への最大のプレゼントなのである。つまり、女の会話とは、「日常のささやかな体験」を相手にプレゼントし、受けたほうは共感で返して、「しばしの癒し」をプレゼントする、いわば共感のプレゼント大会なのだ。なのに、男は、どちらのプレゼントも出しおしみする。……というか、子育てに疲れている妻に、会社のつまらない話なんて到底聞かせられない、という男心で、封印してしまう。さらに、男性脳にとっては、共感よりも問題解決こそがプレゼントなので、共感を端折って、「○○すればいいんじゃない?」「やらなくていいよ、そんなもん」と、いきなり問題解決してしまうのだ。  かくして、女たちは、「思いやりがない」「私の話を聞いてくれない」「いきなり、私を否定してくる」となじってくるのである。

 私が妻のネガティブトリガーを引きがちなのが、意見の合わないことに対し、考えなしに、いや、理屈的には考えているのですが、共感することを忘れ、反射的に否定してしまうこと。必ず一呼吸おいて、まず共感の意を示すことが大事なのですね。

どのように対応すれば妻のネガティブトリガーを引かずに、問題解決ができるのかを考えてみよう。まず、多くの夫が気づかずにやってしまうのが、いきなり否定形を使うこと。たとえば、妻は長男に私立小学校を受験させたいが、自分は公立の小学校に入れたい場合。妻に「私立を受験させたい」と相談されて、いきなり「受験の必要なんてない」「うちにそんな余裕はないでしょ」「親同士の付き合いだって大変だ」とやってしまう。妻は自分の主張のメリットしか言わず、夫は相手の主張のデメリットしか言わない。これでは、いくら話し合っても折り合いがつかないはずだ。  そんなときこそ、男性が得意な「ビジネスプレゼン」のメソッドを思い出してほしい。簡単に手順を説明すると以下のようになる。 ①双方の提案に対して、互いにメリットとデメリットを挙げる。 ②実際に調べて検証する。 ③デメリットを回避する消極的なメリットではなく、互いのゲイン(手に入れられるもの)も示す。 ④以上を踏まえて、結論を出す。

女性脳は、「心の通信線」と「事実の通信線」の2本を使って、会話をする。たとえば、友達の「事実」を否定しなければならないとき、女性は、まず「心」を肯定する。「あなたの気持ち、よくわかる。私だって、きっと、同じ立場なら、同じことをしたと思う。でも、それは間違ってるよ」というように。  男性脳は基本的に「事実の通信線」のみである。「それ、違ってる」といきなり結論を出す。悪気はないのだろうけれど、「心の通信線」を〝わざと〟断たれた、と女性は感じるのである。

女性脳では会話の感じ方が4パターンある。 ①心は肯定─事実も肯定 ②心は肯定─事実は否定 ③心は否定─事実は肯定 ④心は否定─事実も否定  女性脳同士の会話では、基本③と④は使わない。つまり、事実を肯定しようが否定しようが問題ないのだが、共感のために会話をする女性脳は、心=気持ちを否定したら会話が成り立たないだけでなく、人間関係が成り立たないのだ。

事実を肯定するときも否定するときも、その前に、妻の心根は肯定してやる。これこそ、夫が知っておくべき「黄金のルール」である。

 心さえ肯定しておけば、事実は、どっちに転んでも大丈夫。逆に言えば、無責任に「そうそう、そうだよな」と言っていいのである。この黄金ルールを覚えておけば、いらぬ地雷を踏まずに、自分の意見を通せるので絶対に楽になる。

女性脳との会話の黄金ルール」その2、魔法の言葉「君の気持ちはわかる」を使うこと。

 女性脳はプロセスを非常に大切にするのに対し、男性脳は結果を重視する。だから記念日は、1ヶ月前から妻が楽しみなことを約束しておくと、それまでの過程をエンジョイして大いに気分が上がるらしいのです。逆に、プロセスがないと逆効果になることもあると。これで自分がちょいちょい失敗してきたのが、「サプライズプレゼント」でした。

念のために伝えておきたいのは、だからこそ、どんなに夫が準備に手間暇かけたとしても、サプライズを喜ぶ妻はほとんどいないということだ。誕生日にデートしようと誘われて出かけると、予告もなしに連れて行かれたのが高級フレンチレストラン。食事が終わり、キャンドルの炎が揺れるバースデーケーキが運ばれてくる。と、同時に、楽団がバースデーソングを演奏し始め、あらかじめ預けておいたバラの花束を渡されて……と、こんなロマンチックな演出をされても、あまり嬉しくない。どころか、その場に合わない(と男性は気づいていないが)服装や、完璧でないヘアやメイクの姿のまま注目を浴びることが恥ずかしいし、惨めに感じていたりする。何よりもその日を思い描きながらドレスを選んだり、美容院に行ったりする、そういう楽しみを全部奪われてしまったことが悲しいのだ。妻の気持ちを考えないサプライズは、時として、特大ネガティブトリガーを作り出す。これもぜひ覚えておこう。

  本当に勉強になりました。ただし、男性脳は痛い目にあったことをすぐ忘れるので、時々復習が必要です!

妻のトリセツ (講談社+α新書)

妻のトリセツ (講談社+α新書)

 

 

24. SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術 <一番良く眠れるようになる本>

 良い睡眠をとること。40代にもなると、心身の健康のために本当に大事。そのために気をつけるべき点が、科学的裏付けと共に、実行しやすい形で説明されています。この本通りにした日、しなかった日で、眠りの深さが違います。

 体の健康のために睡眠が大切なのはもちろんですが、悩める40代が元気を取り戻すには、睡眠を通じた脳のクリーンナップも重要だと。

 目覚めているときの脳は、学習や成長に勤しみ、脳の持ち主が活躍できるよう協力している。ずっと動きっぱなしなので、たくさんの老廃物が絶えずたまっていくが、そのほとんどは、睡眠がもつ修復の力で除去される。 自宅のゴミを捨てるシステムがとどこおれば、家はあっというまに悲惨なことになる。それと同じで、十分な睡眠をとらず、グリンパティック系が働かなかったら、脳内が大変なことになる。もっと具体的なことを言うと、有害な老廃物を除去する能力が脳にないことが、アルツハイマー病を発症する根本的な原因の一つだと言われている。

  このように脳が健康に働くために睡眠が欠かせず、さらには悩み事も寝ている間に整理され忘却機能にも一部助けられ、幸福感も増すと。やけ酒はそこそこに、寝るしかありません。

セロトニンは一般に、幸福感や満足感をもたらす一助となる物質として知られる。気分や認識力に著しい影響を及ぼすので、抗鬱剤の多くがセロトニンのそうした機能を中心に構成されている。また、体内時計の調節にもセロトニンは欠かせない。

体内時計がもっとも敏感に反応するのは、早朝午前6時から午前8時30分の太陽光だ。それより遅い時間に日光を浴びても効果はあるが、まったく同じメリットは得られない。もちろん、時間帯は時季によって変わるが、6時〜8時30分のあいだに太陽光を浴びる習慣をつけるとよい。

 よく眠るために大事なホルモンは、寝る前のコンピュータ画面で阻害されます。このブログも、寝る2時間前にはホントは書くのをやめなくてはいけません。。

寝る前にコンピュータの画面に2時間向かうだけで、夜間に分泌されるメラトニンの量が著しく抑制されることを実証した。メラトニンの分泌が乱れれば、通常の睡眠サイクルも当然乱れる。

私たちは本当に、電子機器に依存している。そうなるように、人間の身体ができているのだ。 といっても、電子機器自体に依存するようできているわけではない。絶えず何かを探求するようにできているのだ。

ネットを使えば、誰もが必ずそういう経験をする。ネットは、探し求めることをしたい脳やドーパミンにとって理想の存在だ。そこには、「見つけた!」と実感できる情報が無限にある。 探求に夢中になるのはなぜか。それは、オピオイドが快楽の感情を与えてくれるからだ。ネットで何かを調べるという行為には、必ずオピオイドがついてくる。そして、文字どおり瞬時に満足感をもたらしてくれる。新しいフォロワーができる、記事に「いいね!」がつく、インスタグラムに誰かの新しい写真がアップされるというように、何か新しい発見があるたびに、脳内に少量のオピオイド分泌される。そうすると、また新たな発見がしたくなり、ドーパミンがさらに分泌されるというわけだ。

ここで大切になるのが「意識」だ。フェイスブックを見ているときに脳内で何が起きるかを意識する。これが悪い習慣から抜けだす第一歩だ。脳内で何が起きるかを意識すると、探し求める行為をしている自分に気づくようになる。インターネットというブラックホールに吸い込まれそうになっている自分に気づいたら、すぐさまネットから離れよう。脳はパターンづくりが大好きだ。気づいたらネットから離れるという行動を繰り返せば、その行動はしだいに定着する。 立ちあがってもいい。水を取りに行ってもいい。愛する人をハグしに行ってもいい。子どもと一緒に遊んでもいい。ストレッチをしてもいい。誰かに電話をかけてもいいし、好きな音楽を流してもいい。電子機器に依存せずにすむ方法はいくらでもある。寝る前に少しでも電子機器を使いたくなれば、寝不足になりかねない。この悪循環を断ち切るための何かをすることが大切なのだ。

 オフィスのフリーコーヒーなどはつい飲みすぎますが、飲む量と飲む時間帯は重要。

カフェインを身体に入れる「門限」を決めよう。寝るときは、体内からカフェインがほぼなくなった状態でないといけない。お勧めの時間は午後2時。

  寝るときの温度調節は、思っているよりも低めがいいよう。私は寝る前のお風呂で読書をすることが多かったですが、これだと体深部の体温が上昇したまま寝ることになり、寝つきが良くなかったようです。最近はお風呂はゆっくりつかってリラックスしたら、長湯しすぎずに風呂上りに読書するようにしています。

 部屋の温度が高すぎると、ゆっくりと眠れる理想の状態に身体を整えることが少々難しくなる。 調査によると、睡眠に最適な室温は15・5度〜20度とかなり涼しい。これより高すぎたり低すぎたりすると、睡眠を阻害する可能性がある。これでちょうどいいと思う人もいる一方で、寒く感じる人もいるかもしれない。でも、ここは私(と科学)を信じてほしい。少し肌寒いくらいのほうが絶対によく眠れる。

 寝つきが悪い人は、ベッドに入る1時間半〜2時間前に温かいお風呂に浸かるとよい。これまでの話と矛盾すると思うかもしれない。確かに、お風呂に浸かれば体深部の体温は上昇するが、しだいに下がっていき、寝る頃にはお風呂に入る前より少し低い体温に落ち着く。

 睡眠効果を最大化するには、時間帯も大切となります。

 ホルモンの分泌や疲労の回復は、午後10時から午前2時のあいだに睡眠をとることによって最大限に高まると言われている。この時間帯が、いわば睡眠にとっての「投資タイム」だ。投資タイムを使って何ができるかではなく、その時間に眠ることで何が得られるかを考えてみてほしい。遅くまで起きてしていることの大半は、優先順位を考えてしっかりとした計画を立てれば日中にできることばかりだ。一日が24時間なのは誰にとっても同じ。それをどう使うかによって、すべてが変わる。ほとんどの人にとっては、一年を通じて午後9時〜午後11時が就寝時間となる。それを守れば、ホルモンバランスは確実に安定する。睡眠サイクルをリセットしたい、疲れを実感している状態で最適な就寝時間にベッドに入りたいという人は、朝起きたらすぐに日光を浴びる習慣をつけよう。そうすれば、コルチゾールが増えて体内の機能が完全に覚醒する。

  空気の入れ替えは禅や風水でも大切とされていますが、科学的にも睡眠および健康に重要なようです。

きれいな空気はとても大切だ。いつも呼吸している空気にはイオンが含まれている。実は、イオンには鮮度があり、鮮度が落ちると活性する力も落ちるということをご存じだろうか? 呼吸を通じて空気から細胞に取り込んでいるのは酸素だけではない。健康に欠かせないさまざまなイオン性物質も取り込んでいる。室内の空気がよどむと、空気中からマイナスイオンが失われていく。それを何とかしたいなら、空気を動かせばいい。窓を開ける、ファンを回すといったことをするだけで、寝室の空気は活性化する。イオン発生器は、寝室に限らず家全体にプラスの効果をもたらす。 冬は寒くて窓やファンで換気できない人は、加湿器だけでも使ってみてほしい。空気がきれいになって眠りやすくなるうえ、粘膜の乾燥を防いでくれるので、ウイルスなどに感染しにくくなる。

  老化を防ぐ。科学的に言えば染色体を長持ちさせるためには、寝不足は大敵。

人の寿命を知るうえで、もっとも正確な指標になると言われているのが「テロメア」だ。テロメアは、いわば靴紐のほつれを防ぐために末端をとめてある、プラスチックのパイプのようなものだ。靴紐ではなく染色体の末端に位置し、染色体の破損やほつれを防いでいる。 年齢を重ねるにつれてテロメアはすり減っていき、最終的には消えてなくなる。そうすると、細胞の分裂が止まる。わかりやすい言い方をすれば、それが老化だ。細胞の老化は毎日起こるが、長い年月をかけてゆっくりと起こる大きな問題が一つある。テロメアの長さを縮めるスピードは、ある行動によって左右されるのだ。カリフォルニア大学の研究チームが実施した調査により、テロメアを縮めるスピードを加速させる最大の要因は寝不足であることが明らかになった。

  安眠ホルモンを増やしたければウェイトトレーニングが必要。

ホルモンの働きを最大限に高めたいなら、ウエイトトレーニンが必要だ。重いウエイトを持ちあげると、アナボリックホルモンが分泌され、気分は上向きになり、見た目は若返り、よく眠れるようになる。

不眠症と診断されたクライアントのために、私は週に1回30分のウエイトトレーニングだけするようにと指示した。その結果、彼の身体から余分な脂肪は消え、健康のバロメーターとなる数値は改善した。そして、彼が何よりも必要としていた睡眠をとれるようになった。

バスケットボールのレブロン・ジェームズ、テニスのロジャー・フェデラー、ゴルフのミシェル・ウィーは、毎晩必ず10時間は寝る。テニスのヴィーナス・ウィリアムズアルペンスキーのリンゼイ・ボン、陸上のウサイン・ボルトは、睡眠が8時間を切る日はほとんどない。

しっかり運動する時間を午前、午後のどちらに設けるにしても、午前中に必ず何かしらの運動をしよう。わざわざジムに行かなくても、ホルモンの自然な分泌を促して夜にぐっすり眠れるようになる運動はできる。筋力トレーニングの日を2日設けたら(これは絶対に必要な運動で、すでに行っている人も多いと思う)、自分の好きな運動をする日を数日設けるとよい。最低でも週に2日はウエイトトレーニングをしよう。やる価値がいちばん高いと思えるトレーニングだけ集中して行えばよい。 ウエイトトレーニングといっても難しく考えることはない。寝不足や不眠に悩まされたことのある人は、「続けて2カ所」のトレーニングを30分だけ行うとよい。2種類の運動を組み合わせることで、競合しない部位2カ所を同時に鍛えるのだ。

  寝る前の食事や、飲酒のコントロールは安眠に直結します。一番わかりやすいのは、寝る前にビールを飲んで、寝ている間にトイレに行きたくなってしまうこと。それ以外でも様々な影響があるので、寝る前のお酒の量と、何時までに飲み終えるかを自分に合ったところでコントロールすると、よく眠れるようになってます。

ぐっすりと眠りたいなら、寝る間際にものを食べるのはとても危険だ。コルチゾールが増えることを思えば、太りすぎの人はとくに気をつける必要がある。ベッドに入るのは、食後から最低でも90分たってからにしよう。

眠っているあいだ、人は実際に賢くなっているということをご存じだろうか? 睡眠には貴重な役割がたくさんあるが、「記憶の整理」と呼ばれる働きの凄さにスポットがあてられることはあまりない。これは、時間の経過とともに忘れてしまう「短期記憶」や経験を、一度入ったら消えることのない長期記憶に変える働きを意味する。 記憶の整理は、睡眠中に複数回訪れるレム睡眠の影響を強く受けるレム睡眠を十分にとれていればいいが、そこに邪魔が入ると、記憶と健康が被害を被ることになる。 アルコールを夜に飲むと寝つきが早くなることは、研究で実証されている。これはいい話だが、残念ながら、アルコールはレム睡眠大きく阻害することも明らかになっている。レム睡眠の段階に入り込むことも、レム睡眠の周期が安定して訪れることもなくなるので、脳と身体の完全な回復は見込めない。だから、アルコールが残った状態で眠った翌朝は、目覚めても気分がすっきりしない。

 寝る前にお酒を飲めば、排尿衝動が生じる。当然、これも睡眠を阻害する。膀胱を開放したくなって起きあがれば、睡眠のリズムは乱れる。おしっこをすれば、どうしたって目が覚めてしまう。 アルコールが残った状態で眠り、途中で目が覚めると、身体の回復に必要な睡眠の段階になかなか戻れない。寝る間際にお酒を飲むなら、ベッドに入る前にトイレに行く時間をたっぷりとることを忘れないでほしい。

 お酒を飲むときは水をたくさん飲むとよい。アルコールがあっというまに血液中に吸収されるのは、アルコールが液体だからでもある。アルコールの影響を早めに消したいなら、水をたくさん飲んでアルコールの代謝で生じた老廃物の残りを洗い流せばいい。

 アルコールの脱水症状からできるだけ早く回復するにはどうすればいいか。ワインの専門家であるアンソニー・ジリオは、お酒を1杯飲むたびに230cc程度の水を飲むとよいと言っている。

  呼吸、瞑想も深い眠りによく効きます。

 呼吸は自分でコントロールできるので、それを通じて正常な状態に戻すことは可能だ。酸素が不可欠であることは言うまでもないが、人が深い呼吸を必要とするのは、体内の解毒や老廃物の排除のためでもある。とりわけ、二酸化炭素の排除は重要だ。

 思考は凧で、呼吸は凧糸だとよく言われる。呼吸が向かう先に思考がついていくのだ。短く浅い呼吸は、ストレスや不安につながる。一方、深くリズミカルな呼吸は、リラックスとコントロールにつながる。

 明日の朝からさっそく瞑想を始めよう(なんならいますぐ始めてもいい!)。習慣というと不健康なものばかり話題になるが、これは間違いなく健康の増進につながる。生活のさまざまな面がよい方向に変わる。5〜10分の瞑想から一日を始めれば、エネルギーや集中力はもちろん、ぐっすり眠れるようになる力もどんどん高まっていく。

  マッサージ、ツボ押しは特におすすめ。

マッサージの気持ちよさは誰もが知っている。しかし、睡眠の質を高める効果を過小評価している人は多い。マッサージは、交感神経系(闘争・逃走反応をつかさどる)の高ぶりを鎮め、副交感神経系(休息や消化をつかさどる)の働きを活発にする秘密兵器だと言える。リラックス効果が実証されているセロトニンやオキシトシンが増え、コルチゾールが減るのだから、マッサージが夢の世界へ滑り込みやすくしてくれても何の不思議もない

ツボ押しは、2000年以上前から存在している治療法の一つである。専門家の話によると、私たちの身体には、刺激を与えると神経を通じてさまざまな器官や腺に信号を送る部位があり、それを「ツボ」と呼ぶ。針や手などを使ってツボを押すことで、症状の緩和や機能の調整を促すのだという。決して過激なことではない。体内の細胞はすべて、脳という統治機関によって管理されている。細胞、組織、器官の一つひとつが、体中を駆け巡って情報をやりとりできる。 サン・ジェラルド病院の調査で実施されたのは、神門と呼ばれるツボのツボ押しだ。神門は、手首のつけ根の内側にある(図を参照)。神門の効果については、不眠症患者を対象にした二重盲検プラセボ比較実験も行われたことがある。その実験では、神門を押す期間が長くなるにつれ、尿に含まれるメラトニン代謝物の量が正常なレベルに増えていった。

今週中に必ずマッサージの予約を入れよう。マッサージをしたのはつい最近だという人は、本当に素晴らしい。アメリカでは人口の約10パーセントが定期的にマッサージを受けていて、その数は急速に増えている。個人的に知っているマッサージ師がいないという人は、全国展開しているマッサージ店に予約を入れるといい。大きく展開している店は、新規の顧客に慣れている。そして、できれば月会員になってほしい。そうすれば、最低でも月に一度はマッサージを受けることになるし、タイプの違うマッサージや違う施術者のマッサージを試すこともできるので、自分にいちばん合うマッサージを見つけることができる。 また、自分で自分をマッサージするのに使える道具はたくさんある。たとえば、フォームローラー、テニスボール、ラクロスボール、ツボ押し用の機器など。もちろん、自分の手だって立派なマッサージツールだし、機嫌を損ねないようにお願いすれば、パートナーの手もマッサージツールになってくれる。数分でいいので、毎晩寝る前のマッサージを習慣にするとよい。マッサージで一日のストレスを解消しよう。

  最後の秘訣、自分にとって一番快適なパジャマで寝ましょう。ユニクロのウルトラストレッチルームウェアは、その点おすすめです。ベッドに入るときは、動きを一切制限しない、低刺激の素材でできた服を着るのがいちばんだそうなので。

 睡眠は人生の隠し味だ。人間の身体は非常によくできていて、睡眠を利用してありとあらゆる機能を向上させる。コンセントから充電しなくても、身体をいたわって身体が必要とする睡眠をとれば、再び元気になる。 眠りの世界を迂回しては、成功へと通じる道には決してたどり着かない。最高の自分になるためには睡眠が必要だ。どんな薬を飲んでも、どんな策を 使っても、この事実は絶対に変わらない。

 何かを自分の得意にするためには、そのことについて勉強しないといけない。この本を選んでもらえたことを、私は光栄に思っている。この先何十年にもわたって健康と幸せをもたらしてくれるものについて勉強しようと思ってくれて、本当に嬉しい。

 

 

SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術

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